冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

65・虎穴に入らずんば虎子を得ず

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 愛莉が前々から思っていたのは、淳司の魂胆はなにかであった。色々と協力してくれているけど、分からない事だらけだった。まあ、いちいち聞くのも面倒だし聞いても本当の事を言ってくれるとはかぎらないし。それにしても、ガイノイドに改造された女を探偵役に使うのか、囮にしては危険ではないかといえた。

 もしエキゾチック・ブレインを復旧させるのが相手の目的なら、カモがネギをしょってやってくる、というものではなかろうか? 一層の事、どこか遠くに愛莉を落ち延びさせてもよかったのかもしれないのにと、思ったが、それでは新たな犠牲者が出る危険もあるといえた。もしかすると畦地晴美が殺されたのも関係しているのかもしれなかった。

 「愛莉ちゃん、機嫌治った?」

 淳司からのメッセージがあった。この時、部屋にいる三人と一体は別々の行動を取っていて互いの視線に入ってこなかった。

 「機嫌? よくないわよ! こんなブリキの人形に身体を乗っ取られて良い分けないじゃないのよ!」

 愛莉は自分の身体を呪うかのような雰囲気で言った。今の愛莉の身体は国家の所有物であって自分のものでない囚人扱いなんだから。

 「しかたないさ! 事件が解決したらなんとかしてやるさ! それよりも君なりの推理はしてもらえた?」


 淳司の上から目線の質問は愛莉にとってしゃくに触った。ガイノイドにされた娘に事の真相に関するあんたの考えを先に語ってほしいといいたかったが、やめにした。

 「そうねえ、とりあえず理工学部の関係者と、そしてあなたかな?」

 「え、俺? まいったなあ、疑う気が君は?」

 「そうよ! わざわざいろんな手を尽くしているのが犯人かなと思ったわよ。あるじゃないの、事件を調べ推理している人物が真犯人だったなんて話が! その場合はあたしはあなたのマリオネットってことになるわね」

 愛莉は本気半分冗談半分でいった。さっき丹下教授が全身拘束刑を受けている愛莉が研究所にいる事を知っているかのような発言をしたので、淳司も丹下教授にも不信感を抱いていたからだ。

 「ま、まさか? そんなことするはずないじゃん! 」

 淳司は柔らかく言い返した。

 「そうねえ、簡単に見破れるような工作を私にするわけないよね。もし出来るのならこんな面倒な事はしないわよね淳司!」

 そういうと、いつのもように仮想現実にチェンジしていない事に気付いた。なぜだろうと思っていると淳司がこう伝えてきた。

 「それよりも”虎穴に入らずんば虎子を得ず”という言葉があるだろう? 君が理工学部に入れば何かが起きるはずさ。その時がチャンスなのさ!」

 その時、エリーの視認センサーに淳司の姿が大きく認知された。
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