冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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エリーは探偵として推理する

61・丹下教授

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 丹下教授は日本における犯罪学の第一人者で、数多くの著作がある帝央大学でも有名人であった。ただ、テレビなどに登場することは稀で、実際に会うなら主催する探偵小説愛好会に入会するか、授業を選択して受講するしかないといわれていた。そのため、一説には人づきあいが苦手ではないかという誹謗中傷があるという。

 しかし、丹下教授の風貌はごく普通の平凡な高齢者で、人混みにいたら誰にも気づかれそうになかった。後で真由美から聞いた話では、あえてテレビや動画に出ない事で想像力を膨らませてもらった方が神秘的だから、という理由とのことだった。

 愛莉も一通りの帝央大学所属の教授陣が紹介されたパンフレットを入学前に見たが、顔写真が丹下教授だけなかった。だから、ガイノイドとしてここに来るまで丹下教授の顔を知らなかった。そんな丹下教授が近づいて来た。彼は面長の中肉中背の175㎝ある75歳で、髪は真っ白で老眼鏡をかけていた。着ているスーツは安物で印象も残らず顔は平凡だった。もうすぐ定年なので研究所にある犯罪学の書籍も資料も全て寄贈することになっていた。だから丹下犯罪学研究所が閉鎖されると資料が散逸するわけだ。

 「えーと、エリーよな! 予定通りに進行しているよな? まあ、アルバイトや業者を頼むよりはましなようだな」

 収納ボックスに移された資料をパラパラ見ていた。その表情は満足げであった。整理出来ないように見えても、実際はどこに何があるのか把握しているようだった。それはエリーに与えられた指示プログラムで明らかであった。教授なりに覚えているようであった。

 「ありがとうございます、教授。今日の予定に変更はございませんか?」

 エリーは自動応答した。愛莉の意志に関わりない事だ。全身拘束刑受刑者に課せられた機械奴隷としての懲役活動なのだから。本来は働かされる事で罪の重さを自覚させるのが目的なのだから当たり前であった。まあ愛莉は嵌められた冤罪だから理不尽だった。

 「そうだよ! そうそう今日は安養寺君の理工学部への見学に引率してくれたまえ。予定では午後三時からだから、それまでに予定を終わらせて頂戴! ああ、配送業者は予定通りに午後1時半に来てもらうように予約しているからな」

 そういいながら教授はエリーのボディをジロジロ見ていた。エリーのボディは女性型戦闘ロボの外骨格を流用したもので、胸部と背中が大きく膨れていた。その膨らみは巨乳の女性がロボットに見えるようなフォルムをしていた。胸部はドーム状の膨らみは左右にあるが、後ろから見ればまるでバックを背負っているようにも見えていた。胸のふくらみには液体呼吸システムが、背中には吸気システムと熱交換システムがあり、背中に接続するチューブでメンテナンスを行うようになっていた。

 「わかりました。そのようにいたします」

 エリーはそう応答したが、愛莉はこれってセクハラではないかと思った。もし生身であったら不快感を表明したかった、でも今は機械、機械は人間に反抗などできない。

 「よし、それでは頑張りたまえ、アイリさん。君を応援しているからな! 本当は最後までやってもらいたいが早くここが終わるのを祈っているぞ」

 その時、エリーは反応しなかった。エリーに関係ない事だから。でも愛莉は戦慄した。なぜ丹下教授が知っているのよ、エリーの内臓に全身拘束刑受刑者がいるのを! それにしてもどこまで知っているの?
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