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エリーは探偵として推理する

54・エキゾチック・ブレイン(2)

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 二十一世紀も中盤になろうとしている現在では、かつて夢のまた夢の技術であった、核融合反応炉と量子コンピューターが実用化手前まできていた。特に後者は各国がしのぎを削る開発競争を繰り広げていた。

 ただ量子コンピュータには欠点も様々あり、計算速度がとてつもなく早くなっても解決できない事に、豊かな創造性の欠如があった。人間のようにAIは独創的かつ前衛的な発想が出来ず、どうしても最初は人間が指示を出す必要があった。もっとも、AIが独善的になったら不完全な人間なんかあっという間に淘汰され滅亡するだろうという危惧もあった。

 試作的な量子を用いたスーパーAIに多数の人間の脳漿を取り出して製造した超電脳群を接続したものがエキゾチック・ブレインと呼ばれる悪魔の発明品だった。多数の人間を犠牲にし、雑多な個性を何らかの方法で製作した超電脳群は何万人もの人間の経験と知恵から独創性のある計算を導いていた。それらの機能を解放されたのが、麗華民主共和国人民防衛隊が引き起こしたとされる世界同時多発サイバーテロ攻撃だった。

 その被害の特徴は、人的被害は中規模の戦争被害を出したが、経済的損失はかつての世界大戦レベルをはるかに超え大恐慌を引き起こした。そして、世界の世論は躊躇ちゅうちょない武力制裁を求めた。それには中国も隣国で友好国だった蔡国も同意せざるを得なかった。

 武力制裁そのものはエキゾチック・ブレインが設置されていると思われた首都中枢への空爆であったが、ネットワークに接続された軍事技術が使えなくなったため、はるか昔に退役したアナログ航空機で実施された。しかし、予想外の爆発が起きてしまった。理由はどうやらエキゾチック・ブレインが自爆したとされた。自ら首都へ核攻撃を指示したようだ。その結果、麗華人民共和国の政権中枢が消滅した。

 これらは、近代史のごく最近の歴史書みたいな話であった。でもエキゾチック・ブレインについては一般に「都市伝説」とされていたものだ。それを全ての国が故意に隠蔽していたようだ。

 「で、結局のところ、なんでいまごろエキゾチック・ブレインなのよ!」

 愛莉は、国防省の別のサーバーに残存していたエキゾチック・ブレインの推定構造図を確認していた。すると一点おかしなことがあった。量子計算エリアと超電脳群を連結している装置であった。それが帝央大に運び込まれたようであったが、その設計が怪しかった。そのユニットには全部で三体の電脳ユニットを装着するのであったが、その電脳の条件は、生身に時に知能指数180以上だった人間を素体にしたものとあった。それって、つまり自分ってことなの? そう愛莉は思った。
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