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啓子が啓子を着る!

わすれられない感覚(3)

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 あの時、人形の啓子と同じ姿をしたとき、なぜか身体の中から別人格が現れてきたような気がした。なんて表現すればいいのかわからないけど、本物の伯爵夫人になったというしかなかった。

 「殿下、この姿になってなんか興奮するのですけど、おかしいのですか、わたしは?」

 そういうと人形の啓子はわたしの肩を抱いてくれた。そのときわたしの身体は人形服に覆われていたけど、ものすごい拘束感に包まれていたわたしは変な気分にさらになった。

 「おかしい? そんなことはないわよ。あなたはまだ男の人をしらないから、表現としてわかりつらいかもしれないけど、契りをして女になったのと同じように、人形になって人形になる歓びを知るのは同じ事なのよ。そう当然なのよ!」

 彼女の言いたい意味は分かるけど、わたしは結婚したことに法律上はなっていても処女ですよ! そんな契りだなんて小説でもさらっとしか触れていない事を言われても困るといいたかった。

 「そうなのですか・・・この人形ってどうして作られたのですか?」

 わたしは人形の啓子というか、相手に触られビクビクするほど感じていた。しかもドレスの上から胸の膨らみを触るではないのよ! それにしても、こんなに胸は大きくなかったはずなのに、人形にされた時に大きくなったようだ。

 「それはね、国家機密よ! なんてね!」

 真剣そうな声で答えたけど、相手は人形だから表情は微笑みを浮かべたままだった。まあ、わたしも一緒だけどね。
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