徒然なるままに ”ゼンタイ・着(機)ぐるみのスゝメ?”

ジャン・幸田

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(1)ゼンタイとの出会い

全身タイツの男女

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 あれは世紀末の事であった。そういえばノストラダムスの大予言なんてものが盛んに宣伝され、世界が1999年に終わるといった内容の書籍が溢れていた。それに影響された人間は少なくないはずだ。

 それはともかく、ある日の晩のこと多分1997年か1998年の事だから二十年前だ。本屋に寄った時のことだ。当時はいわゆるブラック企業に勤めていて朝早くから夜遅くまで働かされ、おまけに残業代すらもらっていなかった時代だった、もう体も心もボロボロだった。そんな夜中まで、いや確か二十四時間営業だったかもしれないけど、もうその街に住んでいないけど、とにかく本棚をウロウロするのが日課だった。その時一冊の本に目がいってしまった。それが人生を狂わせることになった。

 その本はオークラ出版が出していた『世紀末フェティッシュ読本―あなたを変える、身体改造&変身読本』というムック本だった。表紙のラバースーツを着た女の子のイラストに目がいったのだ。まあ当時よくあった世紀末を関した本の一冊のようにとったが違っていた。

 タイトルから分かるようにフェチに関する本だった。この世の中にはこんなフェチがありますという紹介だった。内容はラバーフェチといったボンテージに関するモノが多かったように思う。その中で二つの写真に心動かされた。

 一つは着ぐるみの写真だった。当時初めて見て衝撃を受けた。その写真(白黒)はセーラームーンのキャラクターの人形らしきものがベットに横たわっていた。それの説明に人形そのものになるためにヌイグルミを着たのだという! その説明でなんとなくスイッチが入った。人間が人形になれるんだと!

 そしてもう一つはこれも白黒の写真であったが、全身タイツを着た男女が絡んでいる写真だった。その姿にも身体の中でスイッチが入ったようになった。顔が隠されているのになにか人間の内面がにじみ出ているのを感じた。それが何かは分からなかったが。

 その写真はビデオ「タイトフィットな午後」の一場面であったが、芝生の上で戯れているというのであった。身体のラインがはっきりしているのに全く顔が見えない事で人間としての存在が記号化されて無駄なものがなくなっているのが良いと感激したものだ。

 しかし、当時はインターネットがダイアルセットアップの時代で、パソコンも高価でそれ以上の情報を得られなかった。そもそも携帯電話も持っていなかったし。だから当時はそれ以上の事が分からなかった。そのためゼンタイについての情報を得られるようになったのは、二十一世紀になってからだった。
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