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第三章
不満があります!①
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月曜日、教室に入るなり、さやちゃんと菜摘ちゃんに笑われた。
「なーに?」
「遥斗先輩とうまくいったんだね」
「えっ、わかる?」
「わかるよ。顔が緩みすぎ!」
「まぁ、あの流れでうまくいかないわけないとは思ったけど」
やっぱりまだ顔が緩んでるか……。
頬を押さえながら、赤くなる。
「………おかげさまで付き合うことになりました」
「やったじゃん!」
「よかったねー」
「ありがと」
二人が口々に祝ってくれて、あとで詳細を聞かせてねと言ってくる。
どこまでしゃべろうかと思いながら、やっぱりにやけてしまった。
夏休みは、部室に入り浸った。
毎日朝ごはんを持ってこようとしたら、先輩に断られて、押し問答した末、食材を持ってきて一緒に作ることにした。
先輩のバイトがないときは、一日のんびり先輩が絵を描くのを眺めたり、モデルになったり、逆に私が先輩の写真を撮ったりした。
早々と私の部屋には二人で撮った写真が飾られて、同じものを無理やり先輩にプレゼントした。
先輩は寝室代わりの暗室に飾っているらしい。
たまに出かけることもした。
夕方、日が傾いてから、散歩したり、一度、植物園にも行った。
市立の植物園だから入場料も安いし、それくらいなら大丈夫だと先輩が言ったから。
本格的なデートだと浮かれ過ぎて、楽しいときを過ごした翌日、熱を出した。
ある日、出かけようとしたら、ランニング中の森さんに会った。
「よう、佐伯妹」
「こんにちは」
遥斗先輩がギュッと手を握ってきた。
ちらりとそれに目をやって、森さんはニヤリと笑った。
「こないだ言ったのは半年間は有効だから」
森さんの言葉を思い出して、赤くなる。
「必要ない」
先輩は私を引き寄せて、腕に閉じ込めた。
「だったら、泣かすなよ?」
「わかってる」
私の頭の上で交わされた視線にまた赤くなった。
「じゃーな」
森さんはあっさり言うと、走り去っていった。
森さんは本気だったのかな? 今の様子を見ると先輩に発破かけただけみたいだけど。
その姿を見送っていると、先輩がぽつりと言った。
「本当に俺でいいのか?」
「もう! いいに決まってます! 遥斗先輩がいいんです!」
腕にしがみつくと、安心したように先輩は微笑んだ。
「先輩、不満があります!」
9月になっても残暑のきつい太陽の下、部室にやってきた私は、汗を拭いながら、先輩に訴えた。
付き合い出してからちょうど2ヶ月が過ぎた日だった。
遥斗先輩は目を見張ったあと、暗い表情になるから、慌てて言い添える。
「ちょっと、先輩! 変なことを考えてません? たぶん、全然違いますよ?」
「なんだ?」
なだめるように抱きつくと、先輩はほっと肩の力を抜いた。
「なーに?」
「遥斗先輩とうまくいったんだね」
「えっ、わかる?」
「わかるよ。顔が緩みすぎ!」
「まぁ、あの流れでうまくいかないわけないとは思ったけど」
やっぱりまだ顔が緩んでるか……。
頬を押さえながら、赤くなる。
「………おかげさまで付き合うことになりました」
「やったじゃん!」
「よかったねー」
「ありがと」
二人が口々に祝ってくれて、あとで詳細を聞かせてねと言ってくる。
どこまでしゃべろうかと思いながら、やっぱりにやけてしまった。
夏休みは、部室に入り浸った。
毎日朝ごはんを持ってこようとしたら、先輩に断られて、押し問答した末、食材を持ってきて一緒に作ることにした。
先輩のバイトがないときは、一日のんびり先輩が絵を描くのを眺めたり、モデルになったり、逆に私が先輩の写真を撮ったりした。
早々と私の部屋には二人で撮った写真が飾られて、同じものを無理やり先輩にプレゼントした。
先輩は寝室代わりの暗室に飾っているらしい。
たまに出かけることもした。
夕方、日が傾いてから、散歩したり、一度、植物園にも行った。
市立の植物園だから入場料も安いし、それくらいなら大丈夫だと先輩が言ったから。
本格的なデートだと浮かれ過ぎて、楽しいときを過ごした翌日、熱を出した。
ある日、出かけようとしたら、ランニング中の森さんに会った。
「よう、佐伯妹」
「こんにちは」
遥斗先輩がギュッと手を握ってきた。
ちらりとそれに目をやって、森さんはニヤリと笑った。
「こないだ言ったのは半年間は有効だから」
森さんの言葉を思い出して、赤くなる。
「必要ない」
先輩は私を引き寄せて、腕に閉じ込めた。
「だったら、泣かすなよ?」
「わかってる」
私の頭の上で交わされた視線にまた赤くなった。
「じゃーな」
森さんはあっさり言うと、走り去っていった。
森さんは本気だったのかな? 今の様子を見ると先輩に発破かけただけみたいだけど。
その姿を見送っていると、先輩がぽつりと言った。
「本当に俺でいいのか?」
「もう! いいに決まってます! 遥斗先輩がいいんです!」
腕にしがみつくと、安心したように先輩は微笑んだ。
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「ちょっと、先輩! 変なことを考えてません? たぶん、全然違いますよ?」
「なんだ?」
なだめるように抱きつくと、先輩はほっと肩の力を抜いた。
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