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第三章 

好きだ②

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 明日はなにを作ろうかな?
 ぼーっと考える。
 ご飯を食べていても、お風呂に入っていても、顔がにやけるのを止められない。

「なにかいいことあったの?」

「あった……」

 お母さんにも聞かれてしまう。
 すごーくいいことがあったんだよ! 恥ずかしいからまだ言わないけど。

「そう、よかったわね」

 うすうす察していそうな笑顔でお母さんが言った。

 明日のメニューのヒントを求めて台所に行ってみる。
 
「あっ、ロールパン」

 一番最初に遥斗先輩と一緒に食べたのがロールパンだったよね。
 ロールパンに切れ目を入れて、ホットドッグ風にするのはどうかな?
 先輩の好きな卵焼きも作ろう。
 あと、ポテトサラダ。
 うん、いい感じ!

 メニューも決まって、私は幸せな眠りについた。




 翌朝、部室に行く。

「おはよーございます!」
「あぁ、おはよう」

 私が挨拶すると、遥斗先輩が絵を描いていた手を止めて、微笑んでくれた。

 微笑んでくれた……!

 あの無愛想な遥斗先輩が挨拶だけで微笑んでくれるなんて!
 そんなことで感動してしまう。
 だって、今朝起きたとき、やっぱり夢だったらどうしようと思ってしまったし。

 先輩に飛びついて、「おはよーございます!」ともう一度言った。
 私を受け止めつつ、「おいっ」と困惑する先輩。
 迷惑だった?と見上げると、「かわいすぎて困るから自重しろ」と言われた。

 そんなことを言われて、離れられるわけがない。
 私はもう一度抱きついた。

 気を取り直して、持ってきた朝食を机に並べた。
 向かい合わせがいいかな? 横並びがいいかな?
 机の配置に悩む。
 向かい合わせだと顔が見える。並びだと距離が近い。

 悩んでいる間に、さっさと先輩は向かいの椅子に座ってしまった。

 
 先輩と朝ごはん。
 何度も一緒に食べているけど、今日は格別な気分で、にこにことしてしまう。

「そんなに見られると食べにくい」

 とうとう先輩が文句を言った。

「ご、ごめんなさい……。どうしよう。私、テンションあがりまくりでとめられない……」

 うろたえる私に、先輩は溜め息をついて言った。

「大丈夫だ。俺もだから」
「えっ!」

 まったく平静な顔をしているのに?

「全然顔に出てませんよ!」
「それはよかった」

 でも、よく見ると耳が赤い。
 そわそわしてるかも?

 テンション高い先輩なんて想像がつかないけど、心の中ではにぎやかになっているのかな?

 先輩のバイトの時間まで、一緒に過ごして、一緒に学校を出た。

「また明日も来ますね」
「悪い。明日もバイトがある」
「大丈夫です。ちょっとでも会いたいだけだから」

 そういう私の頭をなでて、先輩はバイトに向かった。




 
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