130 / 171
第三章
ごめん③
しおりを挟む
「えぇー! すごい!」
「…………優のおかげだな」
ありがとうと、先輩が柔らかく微笑んだ。
…………うすうすわかっていたけど、先輩って表現がストレートだよね。
そんな風に言われると、頬が熱くなってしまう。
「そんなことないです。先輩の絵がそれだけ素敵だってことですよ」
「いや、俺だけではこんなこと到底思いつかなかったし、思いついてもこのスピードで実現するなんて無理だ」
スピードに関しては笑うしかない。
たしかにすごい早さでここまで来たよね。
結構、先輩を振り回したかも。
ちらりと先輩を見るけど、柔らかい表情のままで、言葉の通りにしか思っていないようだった。
「叔父さんのアイディアなんです」
「叔父さん? あぁ、画廊をやっていると言ってた……」
「はい、大好きな叔父さんなんです。遥斗先輩の絵もそのうち叔父さんのギャラリーに置いてもらいましょうよ」
「それはちょっと憧れるな」
先輩がそんなことをつぶやくから、「本当ですか! じゃあ、叔父さんに言わなきゃ!」と意気込む。
この人のためになんでもやってあげたいと思ってしまう。
「いや、待て。それにふさわしい絵ができたらでいいから!」
急いで先輩が制止してくる。
「お前に任せると来週には実現してそうで怖い」と苦笑する。
「できますよ?」
からかうようにそう言うと、「やめてくれ」と本気で焦る先輩がおかしくて笑う。
そっかぁ、また暴走するところだった。気をつけないと。
ご飯が終わると私は昨日撮ったサッカー部の写真をプリントアウトして並べた。
「これが記事の写真か?」
先輩がそばに来て、一緒に眺める。
「そうです。どれがいいと思います? 記事な使えるのは2、3枚なんですが」
「そんなこと言われても、どんな記事にするのかわからないからな」
「そうですよねー。部活紹介と言われているんですけど、私も初めてだから、よくわからなくて」
まず写真を選んで、それに説明文をつけようと思うんだけど、どういう観点で選んでいいのかもわからない。
先輩もなぜか一緒に悩んでくれることにしたのか、じっくり写真を見つめている。
「写真の出来としてはこれとこれとかいいんじゃないか? 全体写真があって、こういう動きのある写真を組み合わせるとか」
「あ、たしかに。じゃあ、あと一枚はこれかなあ」
「いいんじゃないか? バランスがいい」
先輩に肯定してもらえると安心する。
「じゃあ、これに、決めます! あとは文を書くだけ」
「いつまでに必要なんだ?」
「月曜日に出さないといけないんです……」
「それはまた急だな」
お前の周りはそんなやつしかいないのかと呆れ顔だ。
「私だって困ってるんです!」
口を尖らせて抗議する。
「…………今日はバイトだが、明日なら手伝ってやってもいいぞ?」
ためらいがちに先輩がそう言うから、呆けた。
え………。
「明日も来ていいんですか!」
うれしくって飛び跳ねるようにして聞いてしまった。
先輩は視線を逸らせて、「来るも来ないもお前の自由だ。ここはお前の部室でもあるんだから」と言った。
「来ます! 絶対来ます!」
「なにも持ってこなくていいからな」
「そういうわけにはいきませんよ! 私の趣味ですから」
そう言うと、先輩は言わなきゃよかったというように額に手を当てた。
私の自由だって言ったんだから。もう遅いんだから。
にんまりと私は笑った。
先輩のバイトの時間が迫ってきたので、私は片づけをして、「また明日!」と元気よく手を振った。
「…………優のおかげだな」
ありがとうと、先輩が柔らかく微笑んだ。
…………うすうすわかっていたけど、先輩って表現がストレートだよね。
そんな風に言われると、頬が熱くなってしまう。
「そんなことないです。先輩の絵がそれだけ素敵だってことですよ」
「いや、俺だけではこんなこと到底思いつかなかったし、思いついてもこのスピードで実現するなんて無理だ」
スピードに関しては笑うしかない。
たしかにすごい早さでここまで来たよね。
結構、先輩を振り回したかも。
ちらりと先輩を見るけど、柔らかい表情のままで、言葉の通りにしか思っていないようだった。
「叔父さんのアイディアなんです」
「叔父さん? あぁ、画廊をやっていると言ってた……」
「はい、大好きな叔父さんなんです。遥斗先輩の絵もそのうち叔父さんのギャラリーに置いてもらいましょうよ」
「それはちょっと憧れるな」
先輩がそんなことをつぶやくから、「本当ですか! じゃあ、叔父さんに言わなきゃ!」と意気込む。
この人のためになんでもやってあげたいと思ってしまう。
「いや、待て。それにふさわしい絵ができたらでいいから!」
急いで先輩が制止してくる。
「お前に任せると来週には実現してそうで怖い」と苦笑する。
「できますよ?」
からかうようにそう言うと、「やめてくれ」と本気で焦る先輩がおかしくて笑う。
そっかぁ、また暴走するところだった。気をつけないと。
ご飯が終わると私は昨日撮ったサッカー部の写真をプリントアウトして並べた。
「これが記事の写真か?」
先輩がそばに来て、一緒に眺める。
「そうです。どれがいいと思います? 記事な使えるのは2、3枚なんですが」
「そんなこと言われても、どんな記事にするのかわからないからな」
「そうですよねー。部活紹介と言われているんですけど、私も初めてだから、よくわからなくて」
まず写真を選んで、それに説明文をつけようと思うんだけど、どういう観点で選んでいいのかもわからない。
先輩もなぜか一緒に悩んでくれることにしたのか、じっくり写真を見つめている。
「写真の出来としてはこれとこれとかいいんじゃないか? 全体写真があって、こういう動きのある写真を組み合わせるとか」
「あ、たしかに。じゃあ、あと一枚はこれかなあ」
「いいんじゃないか? バランスがいい」
先輩に肯定してもらえると安心する。
「じゃあ、これに、決めます! あとは文を書くだけ」
「いつまでに必要なんだ?」
「月曜日に出さないといけないんです……」
「それはまた急だな」
お前の周りはそんなやつしかいないのかと呆れ顔だ。
「私だって困ってるんです!」
口を尖らせて抗議する。
「…………今日はバイトだが、明日なら手伝ってやってもいいぞ?」
ためらいがちに先輩がそう言うから、呆けた。
え………。
「明日も来ていいんですか!」
うれしくって飛び跳ねるようにして聞いてしまった。
先輩は視線を逸らせて、「来るも来ないもお前の自由だ。ここはお前の部室でもあるんだから」と言った。
「来ます! 絶対来ます!」
「なにも持ってこなくていいからな」
「そういうわけにはいきませんよ! 私の趣味ですから」
そう言うと、先輩は言わなきゃよかったというように額に手を当てた。
私の自由だって言ったんだから。もう遅いんだから。
にんまりと私は笑った。
先輩のバイトの時間が迫ってきたので、私は片づけをして、「また明日!」と元気よく手を振った。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ランウェル博士の限界突破
YPNPC
青春
この物語はAIによるフィクションです。モデルはジョージ・A・シーハン博士。史実では博士は45歳でランニングを再開し、マイル5分切りには5年かかりました。限界を超える彼の精神に敬意を込めて創作しました。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる