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第一章 ― 優 ―

写真同好会①

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 翌日の月曜日、私は始業時間のだいぶ前に学校に来ていた。遥斗先輩にお弁当を渡したかったから。
 休み時間に渡しに行ってもいいんだけど、二年生の教室に行くのも恥ずかしいし、だいたい写真部の部室にいるって言ってたから、もしかしたらこの時間は部室にいるかなって思ったのだ。
 部室が連なる棟に行って、写真部を探す。
 入口から順に人気の運動部の部室があって、奥に行くほどマイナーな部活になっている気がした。
 そして、ようやく見つけた写真部は一番奥だった。
 なんか隅っこに追いやられてるわね……。
 扉をノックしてみたけど、応答はない。

「遥斗先輩?」

 呼びかけてみても反応がないから、ドアを開けてみる。

 うわぁ、すごい匂い……。
 そこは、キャンバス、いろんな画材、クロッキーブックなどが乱雑に積み重ねられていて、油絵の具の匂いがこもっていた。
 まるで画家のアトリエのよう。
 中央にはイーゼルに向かっている遥斗先輩がいた。

「なんだ。いるなら返事してくださいよ!」
「ん……」

 絵に集中しているみたいで、先輩は生返事だ。
 まだ時間があるから、私は手近なイスを引き寄せて、彼が絵を描くのを眺めた。
 真剣な横顔が麗しい。
 あ、そうだ、写真撮っちゃえ。
 昨日、絵を描いているところを撮ってもいいって言ってたから、いいよね?

 正面からはさすがに邪魔だろうから、横顔や後ろ姿を撮る。
 昨日も思ったけど、この人、立ち姿もなんて言うか様になるなぁ。
 カメラのモニターで撮った写真をチェックしていたら、いつの間にか、遥斗先輩に見られていた。

「あ、おはよーございます!」
「あぁ」

 自分からお昼を頼んだくせに、素っ気ない。
 苦労して作ったのに!とちょっとムッとして、私は巨大なお弁当を差し出す。

「約束したから持ってきました」

 私の態度にか、お弁当の巨大さにか、遥斗先輩は瞬いて、じっと見つめてきた。
 そんな綺麗な顔で見つめないでよ!
 ジワジワと頬が熱くなるのを感じて、私は慌ててお弁当を先輩に押しつけると、「放課後に取りに来ますから!」と言って、その場を逃げ出した。
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