私を抱かないと新曲ができないって本当ですか? 〜イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い〜

入海月子

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31.対談②

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「お疲れさまでした」
「ありがとうございました」

 なんとか対談が終わって、挨拶をする。
 特に迷惑をかけたインタビュアーには深々とおじぎをする。
 佐々木さんがインタビュアーを捕まえて、なにか話をしていた。さっきの藤崎さんの発言を記事にしないようにと言ってるんだろうなぁ。

「それじゃあ、失礼します」

 予定の詰まっているTAKUYAとその場を辞そうとしたら、藤崎さんに引き留められた。

「希、待って。少し話がしたいんだ」

(藤崎さん……)

 相変わらず、苦しげに私を見る彼に、胸をつまされる。
 どうしよう?
 心が揺れていて、うまく答えられる気がしない。
 ためらう私を見て、TAKUYAがそれとなく間に入ってくれた。

「藤崎さん、すみません。今日は時間が押していて、また今度にしてもらえますか?」

 これでは、どちらがマネージャーかわからない。
 反省しつつ、私は藤崎さんに頭を下げた。

「そうなんです。ごめんなさい。また今度」

 藤崎さんは暗い目でTAKUYAをちらっと見て、私に視線を移した。
 渇望しているような瞳で見られて、胸がきゅうっとしめつけられる。

「また今度、ね……。わかった」

 ふいっと目を逸らすと、藤崎さんは行ってしまった。

 
  
 タクシーに乗って移動している間に、TAKUYAに謝った。
 
「ごめんね。せっかく楽しみにしてた対談だったのに、なんか変な雰囲気になっちゃって」
「そんなの、いいよ。でも、二人がなんでこじれてるのかわからないな。藤崎さんのミューズって希さんでしょ? あんなに求められてるのに、ミューズがイヤなの?」
「そういうことじゃないんだけど……」

 傍から見ると、そういうふうに見えるんだ。
 TAKUYAにはすっかり私の気持ちがバレてるらしい。
 黒目がちの目をぱちぱちさせて、小首を傾げるTAKUYAはかわいらしかった。でも、契約のことを話すわけにはいかなくて困った。
 でも、TAKUYAはなにげに鋭い。

(ミューズがイヤ?)

 確かに、私は藤崎さんにミューズとしてじゃなくて私を求めてほしいんだ。
 そんな大それた望みを持ってしまったから、つらいのね。
 バカね……。

「希さん、そんな顔をするくらいなら、藤崎さんとちゃんと話し合ってみたら?」
「違うの。藤崎さんとは住む世界が違うから、恐れ多くてそばにいるのはムリなの」
「今さら?」
「今さら」

 TAKUYAはなにかを考えるようにじっと私を見て、突然、私の頬に手を当てた。
  
「それなら、俺にしとく? 俺、優しいよ?」

 びっくりして、目を瞠る。
 ワンコの瞳がひたむきに私を見ている。
 
「なに言ってるのよ。冗談はやめて」
「結構本気なんだけど。前から希さんのこと、かわいいって思ってたし」
「え……」
 
 TAKUYAに真剣な目を向けられて戸惑う。
 髪を梳くようになでられ、ドキッとする。
 
「こんな大事な時期になに言ってるの!」
「バレなきゃいいよ。どう? 藤崎さんを忘れさせてあげるよ」
 
(藤崎さんを?)
 
 彼のことを考えるとつらい。胸が痛くなる。

(この痛みを忘れられる?)
 
 それは魅惑的な提案だった。
 ゆるく腰に手を回されて、TAKUYAの方に引き寄せられた。
 彼の顔が近づいてくる。
 目を見開いたまま、私は固まっていた。
 
 唇が触れそうになる瞬間──

「ダメ!」

 彼の唇を手で塞いだ。
 
 TAKUYAは彼の唇に触れてる手を握り、唇を滑らせた。
 手のひらから指先へ唇を這わしながら、チラッと私を見た。
 それは今まで見てきたTAKUYAと全然違う色っぽい男の顔だった。

「TAKUYA、ダメ!」
 
 手を引き抜き、慌てて距離を取る。
 ドクドクドクと鼓動が早い。

「ダメ?」

 TAKUYAが今度はワンコな顔で首を傾げた。
 自分の魅力をよくわかっている顔だ。

「ダメ!」
「ちぇーっ。チャンスだと思ったのになぁ」

 いつものTAKUYAに戻って、彼は口を尖らせたあと、あけっぴろげに笑った。
 その表情に私はほっとした。

 TAKUYAに触れられるのは嫌ではなかった。彼と付き合ったら、楽しく過ごせそうだった。
 でも、私が求めるのは藤崎さんだけだとわかってしまった。
 少なくとも、今はまだ藤崎さんのことしか考えられないと思ってしまった。

(重症だわ……)

 どうしようもないと、私は深い溜め息をついた。
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