泣くなといい聞かせて

mahiro

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約束の時間

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俺は今まで付き合っていた男と今日別れようと思っている。
鞄の中には奴の家のスペアーキーが入っており、これを何処かのタイミングで鞄の中に忍び込ませ、奴のスマホから俺の連絡先を消し、別れを告げるつもりである。


「………よし」



肩に提げている鞄を握り締め、目の前にある大きな時計を見てみれば約束の時刻の2時間前。
ちょっと、いや、だいぶ前に到着し過ぎたようだな。
早く目が覚め、そのまま家の中でじっと出来ず待ち合わせ場所の時計台前に来てしまったが、これなら何処かで時間を潰してから来れば良かったか。
いや、時間を潰すにしてもまだ時間が早すぎてどこも店は開いていないし、またここに戻ってくるのも面倒だ。
何処か近くのベンチに腰でも掛け、今日の計画を練りながら時間を潰すにしようと思い、キョロキョロしていると近くにいた女性2人と何故か目が合ってしまった。


「お兄さんお1人ですか?」


綺麗目な方の女性が俺に声を掛けきたのだが、これは逆ナンか?



「いや、連れ待ちだ。ただ、待ち合わせ時間より早く着きすぎてな、君たちここの近くで座れる場所を知らんかね?」
  


ついでだから聞いてみると、その女性の後ろにいたおとなしめの女性が少し歩くが公園があると教えてくれた。
そうだな、時間までそこに行くとしよう。
そうと決まればと思った瞬間、頭上に衝撃を受けた。


「いだぁあ?!」


「なぁにやってんの?お前は」


背後から聞こえてきた声に、恐る恐る後ろを振り返れば、俺が待っていた男がペットボトル片手に立っていた。


「何で居るんだ?!」


「それはこっちの台詞なんですけど。どうせお前のことだから到着してないと思って通りすぎようとしたら居たからビビったわ」
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