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その23
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ドアを開ければ部屋から廊下にかけて物が散乱しており、台所にも物が大量に置いてあった。
あちゃーと頭を抱えていると、後ろでも同様に頭を抱えた先輩の姿が視界に入り込んできた。
まさか過去最高に汚れているときに来られるとは思っていなかった。
そもそも会えるとも思っていなかったのだ。
今回こそあの『好き』が何の『好き』なのか聞かなければ。
でも、どのタイミングで聞けば良いのだ。
先輩の話が終わったタイミングが一番良いだろうか、内容的に。
話の最中に去られても困るし。
「派手にやったなぁ……」
呆れながらそう言った先輩は、床に落ちていたお菓子の缶を広い上げて蓋を開けた。
あれは確か昔に撮った写真を入れていた箱だったような。
「………さて、とりあえず座れるスペース作って話すか」
「はい、作ります」
先輩はその缶をサイドテーブルに置くと、その辺りのものをひとつにまとめて壁側に並べ始めたので、俺も慌ててその周辺を片付けた。
それからどれほど時間が経過したのだろう。
1時間程度だろうか。
やっと床にスペースが出来たので、そのスペースに二人向き合うように座れば、先輩はベッドに寄りかかった。
「疲れた………」
「お疲れ様です…」
本当はここでお茶とか出せれば良いのだろうけど、この家にお茶はないし、水も水道水しかない。
前に先輩がこの家に泊まりにきたとき、水道水は嫌だと言っていた記憶があるので、それは出せないしその他は何もない。
冷蔵庫の中とか先輩が去ったあの時からろくに開けていないから何が入っているのか知らない。
ナマモノとか入っていたら一発アウトだ。
「はぁ………お前、ホント俺が居ないとダメな」
「そう、ですね…」
生活も儘ならないもんな。
もうすぐ30だというのに恥ずかしいものだ。
自分のことも自分で出来ないのだから。
「まぁ、それでも良いけどな、俺としては」
「へ?」
何が良いのだと言うのだ。
社会人として己のこともろくに行えないとか恥でしかないのに。
「それより連絡くれてたのに悪かったな、返事できなくて。ちょっと厄介なことに巻き込まれて下手に連絡出来なかったんだよ」
「厄介なこと?」
何だそれは。
女の子たちが言っていた事務所問題と何か関わりでもあるのか?
「ちょっと俺のスマホ、データが読み取られてる疑惑が出てな…誰が何の目的でやったのか何となくは分かってるけどな。そんな状況で連絡したらその人物に俺と笠原のやり取りが見られるだろう」
「た、確かに。いや、そんな状況とは知らずに何回か送っちゃいましたけど」
「大丈夫、俺と連絡取れなくて同様なメール送ってきた人たちいっぱい居たから」
「それなら良いのか?いまいち分かりませんが…」
「良いんだよ。もうさっき全部解決したから」
「それは良かったです。でも、せめて家を出るときくらいメモとか置いてって欲しかったっす」
そう言えば、先輩に笑われた。
「やっと俺の気持ちが分かったか」
「……分かりましたけど」
俺が仕事に行くときに声かけないのと先輩が去る前に問題発言を言ってから去ったのじゃ状況が全然違うと思う。
そもそも先輩は言ったことを覚えているのだろうか。
先輩を見る限り覚えていなさそうだけど。
「別にやり返したくてやったわけじゃなかったが、結果的には良かったか。さて、本題に入らせて貰うが良いか?」
「はい」
姿勢を正して先輩に向き合えば、鋭い視線とぶつかった。
こんな眼差し高校の頃の部活以来で、緊張する。
「お前、転職する気ないか?ちなみにするって言ったらこの家も出て貰うことになるけど」
あちゃーと頭を抱えていると、後ろでも同様に頭を抱えた先輩の姿が視界に入り込んできた。
まさか過去最高に汚れているときに来られるとは思っていなかった。
そもそも会えるとも思っていなかったのだ。
今回こそあの『好き』が何の『好き』なのか聞かなければ。
でも、どのタイミングで聞けば良いのだ。
先輩の話が終わったタイミングが一番良いだろうか、内容的に。
話の最中に去られても困るし。
「派手にやったなぁ……」
呆れながらそう言った先輩は、床に落ちていたお菓子の缶を広い上げて蓋を開けた。
あれは確か昔に撮った写真を入れていた箱だったような。
「………さて、とりあえず座れるスペース作って話すか」
「はい、作ります」
先輩はその缶をサイドテーブルに置くと、その辺りのものをひとつにまとめて壁側に並べ始めたので、俺も慌ててその周辺を片付けた。
それからどれほど時間が経過したのだろう。
1時間程度だろうか。
やっと床にスペースが出来たので、そのスペースに二人向き合うように座れば、先輩はベッドに寄りかかった。
「疲れた………」
「お疲れ様です…」
本当はここでお茶とか出せれば良いのだろうけど、この家にお茶はないし、水も水道水しかない。
前に先輩がこの家に泊まりにきたとき、水道水は嫌だと言っていた記憶があるので、それは出せないしその他は何もない。
冷蔵庫の中とか先輩が去ったあの時からろくに開けていないから何が入っているのか知らない。
ナマモノとか入っていたら一発アウトだ。
「はぁ………お前、ホント俺が居ないとダメな」
「そう、ですね…」
生活も儘ならないもんな。
もうすぐ30だというのに恥ずかしいものだ。
自分のことも自分で出来ないのだから。
「まぁ、それでも良いけどな、俺としては」
「へ?」
何が良いのだと言うのだ。
社会人として己のこともろくに行えないとか恥でしかないのに。
「それより連絡くれてたのに悪かったな、返事できなくて。ちょっと厄介なことに巻き込まれて下手に連絡出来なかったんだよ」
「厄介なこと?」
何だそれは。
女の子たちが言っていた事務所問題と何か関わりでもあるのか?
「ちょっと俺のスマホ、データが読み取られてる疑惑が出てな…誰が何の目的でやったのか何となくは分かってるけどな。そんな状況で連絡したらその人物に俺と笠原のやり取りが見られるだろう」
「た、確かに。いや、そんな状況とは知らずに何回か送っちゃいましたけど」
「大丈夫、俺と連絡取れなくて同様なメール送ってきた人たちいっぱい居たから」
「それなら良いのか?いまいち分かりませんが…」
「良いんだよ。もうさっき全部解決したから」
「それは良かったです。でも、せめて家を出るときくらいメモとか置いてって欲しかったっす」
そう言えば、先輩に笑われた。
「やっと俺の気持ちが分かったか」
「……分かりましたけど」
俺が仕事に行くときに声かけないのと先輩が去る前に問題発言を言ってから去ったのじゃ状況が全然違うと思う。
そもそも先輩は言ったことを覚えているのだろうか。
先輩を見る限り覚えていなさそうだけど。
「別にやり返したくてやったわけじゃなかったが、結果的には良かったか。さて、本題に入らせて貰うが良いか?」
「はい」
姿勢を正して先輩に向き合えば、鋭い視線とぶつかった。
こんな眼差し高校の頃の部活以来で、緊張する。
「お前、転職する気ないか?ちなみにするって言ったらこの家も出て貰うことになるけど」
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