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その20

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え、どういうことだ?
好き?
誰が誰を?
問い質したいのに、身体の向きは変えられないし、限界まで首を捻ってみたら、ぐーすかと寝ている先輩の姿と規則正しい呼吸だけが聞こえてくるだけだ。
これは起こして聞くべきなのか、それとも朝起きてから問い質すべきか悩むところだ。
有り難いことに明日は久しぶりの休みだし、明日は沢山時間があるからそのときに聞こう。

そう思って爆睡してしまった俺に言いたい。

何故そのとき無理やりにでも起こさなかったのかと。


「嘘だろ………」


寝ている間、ずっと背中に暖かみを感じていて朝も変わらずそれがあったから違和感なく目覚めたというのに、目を覚ましたら先輩はどこにも居らず、俺の後ろには俺が床で寝ていたときに使用していた布団が丸めて置いてあるだけだった。
いや、気付けよ俺。


「………先輩が前に言ってたものとは違うかもしれないけど」


出ていくなら声かけてから行けよ。
それもこんな不完全なまま去られるとか勘弁してくれ。
せめて何かメモ書きとかないかと思って部屋を探してみるも、サイドテーブルの上にスペアキーが置いてあるだけで何もない。
歯ブラシだとか髭剃りだとか先輩の私物はなくなっていることから、もうこの家には戻ってくる予定はないのだと分かる。
駐車場に置いてあった車もないし。
でも、冷蔵庫には食材が残っているし台所には先輩が持ってきた食器器具がそのままだ。
昨日先輩が干していた洗濯物はそのまま干してあるし、その他にも先輩がいた形跡がある。
スマホには昨日4人で飲んだときの写真が残っているから、現実なのだと思わせてくれた。
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