パパLOVE

卯月青澄

文字の大きさ
上 下
74 / 161

74

しおりを挟む
「どうぞ、2人でゆっくり話をして下さい。私には関係ありませんから」

「関係ないとも言い切れないわよ。だって三枝先輩はあっ‥」

「白川さん、ちょっといいかな?」

三枝先輩は白川奈未の話を遮ると、腕を掴んで教室を出て行ってしまった。

一体何なんだ。

何でも良いけど私を巻き込まないで欲しい。

私はいざこざのない平和な学校生活を送りたいの。

舞香と詩美と楽しく過ごしたいの。

ホントに邪魔しないで欲しい。


パパが仕事で出張に行ってから、1週間が経った。

毎日何十通のメールを送り、何時間も電話で話をした。

パパを少しでも感じていたくて、誰もいないパパのマンションに行っては、パパの服や布団の匂いを嗅いだり、パパの私物を漁ったりした。

それでも私の心は満たされることはなく、不安と寂しさだけが虚しく募っていった。

会いたくて会いたくて仕方なかった。

寂しくて、悲しくて沢山泣いた。

それと同時に、怒りや憎しみの心が芽生えて育っていた。

何で私だけがこんなにツラい思い、悲しい思いをしなきゃいけないのか無性に腹がたった。

周りの人間が楽しそうに笑っている姿を見ていると殺してやりたくなった。

死んでしまえばいいと思った。

不幸になればいいと思った。

心が荒んで醜くなっていくのが自分でもわかった。

この感情を何かにぶつけなければ、この苛立ちを抑えられそうもなかった。

この怒りの矛先になってくれるものがあるなら何でもよかった。

受止めて欲しかった。

そんな私の気持ちを察してくれたのか、ママはいつも以上に私に寄り添ってくれた。

話をいっぱいしてくれたし、抱きしめてくれたし、毎晩一緒のベッドで眠ってくれた。

私がバイトの終わる時間に迎えに来てくれて、そのあと夕飯を一緒に食べた。

夜の公園に行って、遊具で一緒に遊んでくれた。

ママが一緒にいてくれると、不思議と嫌なことや不安や悲しみから開放された。

私の壊れた心が救われていくのがわかった。

今だけじゃない、ずっとそうだった。

パパがいなくなって寂しくて悲しくてどうしようもない時、学校で嫌なことがあった時、挫折した時、人生に迷った時もママがいてくれたから私は今日まで生きてこられた。

ママがそばにいていつも応援してくれて、支えてくれて、抱きしめてくれて、愛してくれたから私はこうして生きていられる。

大げさかもしれないけど、ママがいなかったら私は死んでしまっていただろう。
しおりを挟む

処理中です...