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第20話 ①
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ヴェルナーさんの妹であるフィーネちゃんが、私のお店で働きたいと言ってくれた。
だけどまだ七歳の、しかも貴族令嬢のフィーネちゃんを雇うことなんて出来るわけがなく、ヴェルナーさんに止めて貰おうと思ったのに、彼はまさかの賛成派だった。
「で、でも、貴族のご令嬢を働かせるわけにはいきませんし、何よりご両親が反対されるのでは?」
いくら家訓がアレだとしても、やっぱりこんな小さい子を働かせるのはちょっと……。倫理的に問題があるんじゃないかな、と思う。
「じゃあ、両親が賛成したらフィーネを雇って貰えるのかな? 俺としてはアンちゃんの邪魔になるんじゃないかって、そっちの方が心配なんだけど」
「お、お兄様!! わたくしアンさんのお役に立つよう頑張りますわ!! 決してご迷惑にならないようにいたします!!」
ヴェルナーさんは私の仕事に支障が出るようなら反対、というスタンスのようだ。
(フィーネちゃんは確かに見た目は幼いけれど、花の名前を覚えるのも早いし、仕事を教えたらすぐ即戦力になってくれそうだよね……)
正直、身分とか年齢に問題がなければ喜んで働いて貰っていたと思う。……だってフィーネちゃん可愛いし、癒やされるし。
「では、ご両親の許可を頂いたら働いて貰う、ということで良いですか? ちなみに条件とかはどうしましょう? あ、お給金は……」
こうして貴族のご令嬢を雇う場合、如何ほどのお給金が必要なのだろう。桁違いなら払えないかもしれない。
「給金なんて必要ないよ。こちらが無理言って頼んでるんだし」
「えっ! でも、そういう訳には……!」
「お兄様の仰るとおりですわ! 先程も申し上げましたが、わたくしお給金は頂きませんわ!」
フィーネちゃんも再びお給金はいらないと言うので、困惑してしまう。
「ええ……いや、でも……」
「じゃあ、こうしよう! お給金代わりにアンちゃんの手作りプレッツヒェンを貰うということで!」
「まあ! そうですわ! それが良いですわ! わたくし、もう一度プレッツヒェンが食べたかったのですわ!」
「え、いや、その……っ ええ~~~?」
息がピッタリの兄妹に私が敵うはずもなく、取り敢えずご両親の許可を得てきて貰うことになった。
「……あ、明日はお店がお休みなので、どうなったかは明後日以降教えて貰えますか?」
「そうか、水の日はお休みだったっけ。うん、わかった。じゃあ、決まり次第すぐ連絡するから、よろしくね」
「わたくし、必ず両親を説得してまいりますわ! 待っていてくださいまし!」
「ふふっ、私はいつまでも待つから、今回がダメでもガッカリしないでね」
「アンさん……っ!!」
きっとご両親もフィーネちゃんがまだ小さいからと反対するだろう。でも何も今すぐ働かなければならない訳じゃないだろうし、もう少し大きくなってからなら大丈夫だと思う。
「ヴェルナーさん、急用でお疲れのところすみませんが、ご両親にどうぞ宜しくお伝え下さい」
「うん。伝えておくよ。まあ、急用と言っても明日団長が休みらしくて、連絡事項があるからって呼び出されただけだけどね」
(団長が休み……そっか。明日はクラテールの鉢植えを作る約束だもんね。ちゃんと休みが取れたようで良かったよ)
でもジルさんが休むからという理由で、ヴェルナーさんが休日に呼び出されることになったのは申し訳ないと思う。
「……それは大変でしたね。お休みの日に呼び出すって、かなり重要なお話なんですか? ……あ、機密事項だったらすみません!」
思わず気軽に聞いてしまったのを慌ててお詫びする。
騎士団の内情とか、花屋の私に関係があるはず無いのについ聞いてしまった。
(ジルさん絡みかと思うと気になっちゃうんだよね……。また遠征にでも行くのかな……)
「ああ、大丈夫だよ。フロレンティーナ王女殿下とローエンシュタイン侯爵の婚約式の件だから」
ジルさんのことを考えていると、すっごく聞き慣れた名前が飛び出して「えっ?!」と声を出して驚いてしまう。
「フロレンティーナ王女殿下……と、え? 侯爵……?」
「そうだよ? ローエンシュタイン侯爵は魔術師団長も務めていらっしゃる方でね。うちの団長とも幼馴染でよく顔を出してくれるんだけど、とても気さくな方なんだ」
ヴェルナーさん曰く、騎士団と魔法師団はお互いをライバルとして見る傾向にあって、基本仲が悪くなる場合が多いらしい。
だけど団長が幼馴染同士で仲が良いので、今の騎士団と魔法師団の関係は良好なのだそうだ。
(まさかヘルムフリートさんが侯爵だったなんて……! そんな高位貴族だとは思わなかった!!)
よく考えたら魔術師団長で王女殿下の恋人なのだ。そんじょそこらの貴族とは比べ物にならないぐらいの大物のはず。本人が気さく過ぎてつい失念していた。
「……あの、そのジ……騎士団長さんも、もしかして侯爵様だったりします……?」
侯爵のヘルムフリートさんと幼馴染なのだったら、ジルさんもきっと高位のお貴族様なのかもしれない。
「ん? 団長は公爵だよ。結構有名人だと思っていたけど、アンちゃんは知らないんだ?」
「こっ公爵っ?!」
驚愕する私をヴェルナーさんが不思議そうに見るけれど、今の私はそれどころじゃなかった。ジルさんの身分があまりにも高位過ぎて頭の中が真っ白だ。
だけどまだ七歳の、しかも貴族令嬢のフィーネちゃんを雇うことなんて出来るわけがなく、ヴェルナーさんに止めて貰おうと思ったのに、彼はまさかの賛成派だった。
「で、でも、貴族のご令嬢を働かせるわけにはいきませんし、何よりご両親が反対されるのでは?」
いくら家訓がアレだとしても、やっぱりこんな小さい子を働かせるのはちょっと……。倫理的に問題があるんじゃないかな、と思う。
「じゃあ、両親が賛成したらフィーネを雇って貰えるのかな? 俺としてはアンちゃんの邪魔になるんじゃないかって、そっちの方が心配なんだけど」
「お、お兄様!! わたくしアンさんのお役に立つよう頑張りますわ!! 決してご迷惑にならないようにいたします!!」
ヴェルナーさんは私の仕事に支障が出るようなら反対、というスタンスのようだ。
(フィーネちゃんは確かに見た目は幼いけれど、花の名前を覚えるのも早いし、仕事を教えたらすぐ即戦力になってくれそうだよね……)
正直、身分とか年齢に問題がなければ喜んで働いて貰っていたと思う。……だってフィーネちゃん可愛いし、癒やされるし。
「では、ご両親の許可を頂いたら働いて貰う、ということで良いですか? ちなみに条件とかはどうしましょう? あ、お給金は……」
こうして貴族のご令嬢を雇う場合、如何ほどのお給金が必要なのだろう。桁違いなら払えないかもしれない。
「給金なんて必要ないよ。こちらが無理言って頼んでるんだし」
「えっ! でも、そういう訳には……!」
「お兄様の仰るとおりですわ! 先程も申し上げましたが、わたくしお給金は頂きませんわ!」
フィーネちゃんも再びお給金はいらないと言うので、困惑してしまう。
「ええ……いや、でも……」
「じゃあ、こうしよう! お給金代わりにアンちゃんの手作りプレッツヒェンを貰うということで!」
「まあ! そうですわ! それが良いですわ! わたくし、もう一度プレッツヒェンが食べたかったのですわ!」
「え、いや、その……っ ええ~~~?」
息がピッタリの兄妹に私が敵うはずもなく、取り敢えずご両親の許可を得てきて貰うことになった。
「……あ、明日はお店がお休みなので、どうなったかは明後日以降教えて貰えますか?」
「そうか、水の日はお休みだったっけ。うん、わかった。じゃあ、決まり次第すぐ連絡するから、よろしくね」
「わたくし、必ず両親を説得してまいりますわ! 待っていてくださいまし!」
「ふふっ、私はいつまでも待つから、今回がダメでもガッカリしないでね」
「アンさん……っ!!」
きっとご両親もフィーネちゃんがまだ小さいからと反対するだろう。でも何も今すぐ働かなければならない訳じゃないだろうし、もう少し大きくなってからなら大丈夫だと思う。
「ヴェルナーさん、急用でお疲れのところすみませんが、ご両親にどうぞ宜しくお伝え下さい」
「うん。伝えておくよ。まあ、急用と言っても明日団長が休みらしくて、連絡事項があるからって呼び出されただけだけどね」
(団長が休み……そっか。明日はクラテールの鉢植えを作る約束だもんね。ちゃんと休みが取れたようで良かったよ)
でもジルさんが休むからという理由で、ヴェルナーさんが休日に呼び出されることになったのは申し訳ないと思う。
「……それは大変でしたね。お休みの日に呼び出すって、かなり重要なお話なんですか? ……あ、機密事項だったらすみません!」
思わず気軽に聞いてしまったのを慌ててお詫びする。
騎士団の内情とか、花屋の私に関係があるはず無いのについ聞いてしまった。
(ジルさん絡みかと思うと気になっちゃうんだよね……。また遠征にでも行くのかな……)
「ああ、大丈夫だよ。フロレンティーナ王女殿下とローエンシュタイン侯爵の婚約式の件だから」
ジルさんのことを考えていると、すっごく聞き慣れた名前が飛び出して「えっ?!」と声を出して驚いてしまう。
「フロレンティーナ王女殿下……と、え? 侯爵……?」
「そうだよ? ローエンシュタイン侯爵は魔術師団長も務めていらっしゃる方でね。うちの団長とも幼馴染でよく顔を出してくれるんだけど、とても気さくな方なんだ」
ヴェルナーさん曰く、騎士団と魔法師団はお互いをライバルとして見る傾向にあって、基本仲が悪くなる場合が多いらしい。
だけど団長が幼馴染同士で仲が良いので、今の騎士団と魔法師団の関係は良好なのだそうだ。
(まさかヘルムフリートさんが侯爵だったなんて……! そんな高位貴族だとは思わなかった!!)
よく考えたら魔術師団長で王女殿下の恋人なのだ。そんじょそこらの貴族とは比べ物にならないぐらいの大物のはず。本人が気さく過ぎてつい失念していた。
「……あの、そのジ……騎士団長さんも、もしかして侯爵様だったりします……?」
侯爵のヘルムフリートさんと幼馴染なのだったら、ジルさんもきっと高位のお貴族様なのかもしれない。
「ん? 団長は公爵だよ。結構有名人だと思っていたけど、アンちゃんは知らないんだ?」
「こっ公爵っ?!」
驚愕する私をヴェルナーさんが不思議そうに見るけれど、今の私はそれどころじゃなかった。ジルさんの身分があまりにも高位過ぎて頭の中が真っ白だ。
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