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「まあ、今は俺が瞳の魔物について知った経緯何てどうでもいいでしょ?」
 野心家のヴェルナーのことだ。深堀りされたくないことがあるのかもしれない。例えば犯罪めいたことをしていたとか。変に関わりあったら面倒になるかもしれないから、私は話を変えた。

「前に、ヴェルナー様がいってましたよね。瞳の魔物に遭ったことがあるって。その時のことを教えて欲しいです」
「あの日のことか。いいよ。でも、その前に聞きたいことがある」
「何でしょう」
「マテウスと禁断の園について、君はどれくらい知っている?」

 すごく答えにくい質問だ。
 私はゲームのプレイヤーとしてマテウスのことはそれなりに知っている。でも、この現実ではマテウスとはほとんど関わりがない。だから、下手に喋ったらボロがでそうだ。

「おいおい。ここで隠し事をするなんて、興ざめだよ」
 ヴェルナーは明るく言っているけど、目が笑っていない。
 まずい。このまま黙っていたらヴェルナーの機嫌を損ねてしまう。早く答えないと。

「マテウス様とはほとんど関わりがありませんから、一般的に知られていることくらいしか。・・・・・・あえて言うなら、禁断の園に私が誤って立ち入ったことに対してすごく怒っていました」
「誤って、ねえ?」
 ヴェルナーはあからさまに訝しんでいる。
 ・・・・・・いけない。禁断の園の前には"立入禁止"の看板があったことを忘れていた。あれを見落としてうっかり立ち入ったはおかしいと思われても仕方がない。

「正直に言うと、好奇心に駆られてしまったんです。学園の他の庭園はすごく手入れされているのに、あそこだけ不自然なくらいに荒れ果てていたので」
「まあ、確かにそうだね。俺も似たような理由であそこに立ち入ったから気持ちは分からなくもない」

 どうやら、あの言い訳には納得してくれたらしい。
「俺が禁断の園に入ったのは去年の秋だったかな。マテウスがあんな寂れた場所で何かをしたって聞いたから、俺は気になって立ち入った」
 ヴェルナーはマテウスの弱みを探るために禁断の園に入ったのだろう。
「そこで、瞳の魔物に出会ったんだ。真っ黒な目をしたそいつは、俺のことを睨みつけた。瞳の魔物のことを知った後だったから、俺は正直、かなりビビったんだけどね。瞳の魔物は俺のことを睨みつけるだけで何もしなかったんだ」
「何もしなかった?」
 ヴェルナーはこくりと頷いた。

「あんなに学園と王室に恐れられているのに、何もしなかったって拍子抜けだろ? だから、俺は改めて調べてみたんだ」
「それで、何が分かったんですか」
「瞳の魔物は2体いる」
 ヴェルナーはそう言うと私の顔をじっと見た。
「さあ、俺からの質問だ。君が見た瞳の魔物は、どっちなのかな?」
 そう言って笑うヴェルナーに、私は困惑するしかなかった。
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