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第四章
第十六話 レース内で起きた出来事
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大和主流が事故当時に何が起きたのかを語るように促すと、ダイワメジャーはゆっくりと口を開く。
『俺はゲート入りをした後は、何事もなく落ち着いたままゲートが開くのを待っていた。だが、ゲートが開いた瞬間に尻尾を掴まれたんだ。驚いた俺は反射的に暴れてしまい、気がついたらお前を振り落としていることに気付かないで、そのまま走っていた』
ゲートが開いた瞬間に、尻尾を掴まれたのか。それは驚いても仕方がない。だけど。
「誰よそいつ! 悪質じゃない。これは完全なる妨害だわ!」
ダイワメジャーの言葉を聞いた大和鮮赤が、拳を握って声を上げた。彼女が憤慨する気持ちは痛い程分かる。レース開始直前に馬に触れるなんて、普通は考えられない。
『やっぱり、私が睨んだ通り、これは事故ではなく事件だった訳だね』
まだ探偵ごっこをしているのか、ハルウララはオモチャのパイポを咥えたまま事件だと結論づける。
「怪しいのは、ダイワメジャーを担当した整馬係だけど、他の担当にも可能性はあるわね。レースの映像を見ることができれば、誰が犯人なのか特定ができそうだけど。因みに兄さんのダイワメジャーを担当した整馬係ってどんな人だったの?」
大和鮮赤が訊ねると、大和主流は顎に手を置いて思案顔を作った。
「そうだな。今回は知り合いの整馬係が体調不良で来られなくって、代わりの人が担当してくれた。フードを深く被って、マスクを付けていたから、顔は分からない。でも、マスクをしていた理由は花粉症だ。くしゃみをしていたから、素性を隠すためにマスクをしていた訳ではないだろう」
いつも担当してくれていた整馬係が体調を崩して他の人が来た。その状況を考えると、怪しいのはヘルプだ。でも、いくら怪しいからと言って決めつけるのは良くない。大和主流の発言からマスクを付けていた理由も頷ける。
どっちにしろ、真相を知るには、レース開始直後の映像を調べる必要があるな。
頭の中で思案していると、大和鮮赤が扉の方へと歩き出す。
「妹よ、どこに行くんだ? トイレか?」
「帰るのよ。あのレースが事故ではなく事件だと知った以上、絶対に犯人を見つけてみせるわ。また明日の夜にでも顔を見せに来るから」
帰宅すると大和鮮赤が言ったので、俺も帰ろうとハルウララを抱き上げた。
「それでは、俺もこの辺で帰らせていただきます。お大事に」
「あ、東海帝王君。ちょっとだけ待ってくれないか。妹も、少しの間だけ、廊下で待っていてくれ」
軽く会釈をして病室から出ようとすると、大和主流から呼び止められた。
兄の言葉に大和鮮赤は無言で頷き、扉を開けて廊下に出て行く。
「東海帝王君、まだ君を呼び出した理由を語っていなかったね」
彼の言葉に思わずハッとする。
そう言えば、俺が呼び出された理由はまだ聞いていなかった。彼の落馬の話が衝撃的すぎて、そのことが頭から抜けていた。
「実は、妹が君の話を良くするんだ。君のことを話す時はいつも笑顔で話すんだ。妹を笑顔にさせる存在がどんな者なのか知りたくって、わざわざ呼び出したんだ」
大和鮮赤のやつ、お兄さんに俺のことを話していたのか。だから、俺の真名も知っていたのか……いや、内巣自然の件で知ったのかもしれないな。
「俺が側にいてやれない時は、妹を頼んだ。妹が落ち込んでいる時には、俺の代わりに支えてやってくれると誓ってほしい」
大和主流は本当に妹の大和鮮赤のことを大事にしているんだな。
「分かりました。お兄さんが側に居ない時は、俺が彼女を支えると誓いましょう」
「そうか。そうか。引き受けてくれるか。その言葉を聞いて安心した。今日から俺たちは義理の兄弟だ! これからは義理の兄と呼んでくれ! これからも妹のことを宜しく頼む。もし、妹を泣かせるようなことをしたら、俺は君を許さない。ダイワメジャーに蹴飛ばしてボコった上で、妹に謝らせるからな」
サラッと暴力を振るう宣言をされてしまったな。ちょっとシスコン要素のある人なのか? まぁ、友達として気を付けていれば、彼女を泣かせるようなことはないだろう。
それにしても、俺を弟分のようにして接してくれるとは、まるで三国志の劉備たちのようだ。
「さて、誓いを立ててもらったところで、これ以上妹を待たせる訳にもいかないだろう。さぁ、この後は2人の時間を楽しむが良い。夜はこれからだからな」
大和主流の言葉に小首を傾げる。
確かに夜はこれからだが、このまま学生寮に戻るだけなのに、いったい何を楽しめと? それに、彼女は既に病院から出て行っているかもしれないのに。
彼の言葉の意味が分からないまま、俺は扉を開けて廊下に出る。
「やっと終わったのね」
すると大和鮮赤が声をかけてきた。てっきり、先に帰っているものばかりだと思っていた。ちゃんと兄の指示を守っていたのか。
「ねぇ、兄さんと何を話していたの?」
「別にたいしたことは話していない。妹を宜しく頼むと言われただけだ。後、大和主流からお兄さんと呼ぶように言われたな」
支えてやる約束関連はなんだか言うのが憚れたため、それ以外のことを話す。すると、何故か大和鮮赤が挙動不審な行動に出る。
「そ、そう。兄さんが……へ、へぇー」
なんだか彼女の頬が赤くなっているようだが、風邪でも引き始めているのだろうか。
そんなことを思いながらも、俺たちは帰路に着く。
落馬事件に巻き込まれてしまったし、知らぬ存ぜぬではいられないだろうな。大和主流から彼女を支えるように頼まれて誓いを立てた以上、俺も個人的に調べてみるとするか。
『俺はゲート入りをした後は、何事もなく落ち着いたままゲートが開くのを待っていた。だが、ゲートが開いた瞬間に尻尾を掴まれたんだ。驚いた俺は反射的に暴れてしまい、気がついたらお前を振り落としていることに気付かないで、そのまま走っていた』
ゲートが開いた瞬間に、尻尾を掴まれたのか。それは驚いても仕方がない。だけど。
「誰よそいつ! 悪質じゃない。これは完全なる妨害だわ!」
ダイワメジャーの言葉を聞いた大和鮮赤が、拳を握って声を上げた。彼女が憤慨する気持ちは痛い程分かる。レース開始直前に馬に触れるなんて、普通は考えられない。
『やっぱり、私が睨んだ通り、これは事故ではなく事件だった訳だね』
まだ探偵ごっこをしているのか、ハルウララはオモチャのパイポを咥えたまま事件だと結論づける。
「怪しいのは、ダイワメジャーを担当した整馬係だけど、他の担当にも可能性はあるわね。レースの映像を見ることができれば、誰が犯人なのか特定ができそうだけど。因みに兄さんのダイワメジャーを担当した整馬係ってどんな人だったの?」
大和鮮赤が訊ねると、大和主流は顎に手を置いて思案顔を作った。
「そうだな。今回は知り合いの整馬係が体調不良で来られなくって、代わりの人が担当してくれた。フードを深く被って、マスクを付けていたから、顔は分からない。でも、マスクをしていた理由は花粉症だ。くしゃみをしていたから、素性を隠すためにマスクをしていた訳ではないだろう」
いつも担当してくれていた整馬係が体調を崩して他の人が来た。その状況を考えると、怪しいのはヘルプだ。でも、いくら怪しいからと言って決めつけるのは良くない。大和主流の発言からマスクを付けていた理由も頷ける。
どっちにしろ、真相を知るには、レース開始直後の映像を調べる必要があるな。
頭の中で思案していると、大和鮮赤が扉の方へと歩き出す。
「妹よ、どこに行くんだ? トイレか?」
「帰るのよ。あのレースが事故ではなく事件だと知った以上、絶対に犯人を見つけてみせるわ。また明日の夜にでも顔を見せに来るから」
帰宅すると大和鮮赤が言ったので、俺も帰ろうとハルウララを抱き上げた。
「それでは、俺もこの辺で帰らせていただきます。お大事に」
「あ、東海帝王君。ちょっとだけ待ってくれないか。妹も、少しの間だけ、廊下で待っていてくれ」
軽く会釈をして病室から出ようとすると、大和主流から呼び止められた。
兄の言葉に大和鮮赤は無言で頷き、扉を開けて廊下に出て行く。
「東海帝王君、まだ君を呼び出した理由を語っていなかったね」
彼の言葉に思わずハッとする。
そう言えば、俺が呼び出された理由はまだ聞いていなかった。彼の落馬の話が衝撃的すぎて、そのことが頭から抜けていた。
「実は、妹が君の話を良くするんだ。君のことを話す時はいつも笑顔で話すんだ。妹を笑顔にさせる存在がどんな者なのか知りたくって、わざわざ呼び出したんだ」
大和鮮赤のやつ、お兄さんに俺のことを話していたのか。だから、俺の真名も知っていたのか……いや、内巣自然の件で知ったのかもしれないな。
「俺が側にいてやれない時は、妹を頼んだ。妹が落ち込んでいる時には、俺の代わりに支えてやってくれると誓ってほしい」
大和主流は本当に妹の大和鮮赤のことを大事にしているんだな。
「分かりました。お兄さんが側に居ない時は、俺が彼女を支えると誓いましょう」
「そうか。そうか。引き受けてくれるか。その言葉を聞いて安心した。今日から俺たちは義理の兄弟だ! これからは義理の兄と呼んでくれ! これからも妹のことを宜しく頼む。もし、妹を泣かせるようなことをしたら、俺は君を許さない。ダイワメジャーに蹴飛ばしてボコった上で、妹に謝らせるからな」
サラッと暴力を振るう宣言をされてしまったな。ちょっとシスコン要素のある人なのか? まぁ、友達として気を付けていれば、彼女を泣かせるようなことはないだろう。
それにしても、俺を弟分のようにして接してくれるとは、まるで三国志の劉備たちのようだ。
「さて、誓いを立ててもらったところで、これ以上妹を待たせる訳にもいかないだろう。さぁ、この後は2人の時間を楽しむが良い。夜はこれからだからな」
大和主流の言葉に小首を傾げる。
確かに夜はこれからだが、このまま学生寮に戻るだけなのに、いったい何を楽しめと? それに、彼女は既に病院から出て行っているかもしれないのに。
彼の言葉の意味が分からないまま、俺は扉を開けて廊下に出る。
「やっと終わったのね」
すると大和鮮赤が声をかけてきた。てっきり、先に帰っているものばかりだと思っていた。ちゃんと兄の指示を守っていたのか。
「ねぇ、兄さんと何を話していたの?」
「別にたいしたことは話していない。妹を宜しく頼むと言われただけだ。後、大和主流からお兄さんと呼ぶように言われたな」
支えてやる約束関連はなんだか言うのが憚れたため、それ以外のことを話す。すると、何故か大和鮮赤が挙動不審な行動に出る。
「そ、そう。兄さんが……へ、へぇー」
なんだか彼女の頬が赤くなっているようだが、風邪でも引き始めているのだろうか。
そんなことを思いながらも、俺たちは帰路に着く。
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