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9. 警視庁での禁句
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自分の脳内に住み着いている天使と悪魔には幾度となく、「(検事の仕事に)戻りたい。」と嘆いてきたが、警視庁内ではいつも自慢の爽やか営業スマイルでやりくりしているので、一度もこのようなことは言ったことが無かった...。が、捜査本部のパイプ椅子に座りながらコーヒーを飲んでいるとふと自分の口から、「帰りてぇ...。」という3.5文字が溢れてしまった。それもそのはず、警視庁長官の槇村さんが連続殺人事件の被害者として先日遺体で見つかってしまったのだ。これはどう見ても警察への挑発にしか見えず、警視庁内でも大ニュースとなり、世間をも大いに騒がせた。警視庁への避難が高まる中、相変わらず(というのも俺ながら屈辱的なものではあるが)捜査は進展が無かった。逆に怖いくらい無いのだ。指紋も防犯カメラ映像も、目撃情報も。一度警視庁の内部班説が浮上したが、何度現場へと向かう班を変えても同じように情報が無い結果だったので、その説もあえなく却下された。最近は罪を償ってほしいなんて思いよりも、犯人死亡で書類送検にならないかな、なんて検事あるまじき思考に陥ってしまっている。
本日n回目の溜息と共に、凝り固まった体を上げて、ゆっくりと捜査本部を出た。
本日n回目の溜息と共に、凝り固まった体を上げて、ゆっくりと捜査本部を出た。
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