スノードロップの操り人形

洋海

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10. 強引な短編小説の終わり方のようで

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「はあああぁ?」
 捜査本部長の叫びが部屋を満たした。一瞬にして捜査本部が静まり返り、本部長へと視線が集まる。手元には一枚の紙が。

警視庁の皆様へ

拝啓
 梔子の香りが漂う季節となり、死体の腐敗が促進されてますます解決の糸口が見えなくなることと存じます。
 さて、近頃世間を賑わせている連続快楽殺人事件についての手がかりを提供したく思い、今回この手紙を送ることに致しました。添付されているDVDを見て頂きますと、そこには花屋「LYCORIS」の店長、奥原 和花が警視庁長官の殺害事件で利用されたスノードロップをトラックに運び込んでいる姿が写っているところを確認することが可能でしょう。家宅捜索に行く頃には証拠は全て処分されていると見込まれます。
 末筆ながら、無事犯人逮捕のほどお祈り申し上げます。
敬具 
  令和4年10月7日
警視庁の皆様

 本部長が落ち着きを取り戻したところで、上の手紙が前のプロジェクターに映し出された。正直突然過ぎて頭が追いついていないが、状況を説明しよう。
 事の発端は、実に突然訪れた。かれこれ数ヶ月続いているいつも通りの朝礼を行い、段々と声のハリが無くなってきた本部長の”激励”を聞いた後、各々作業を進めていたのだが、約二時間が経過した所で、急に一人の警察官が一枚の紙を持ちながら走り込んできた。瞳孔がガン開きだったのがちょっとコメディー感が出てしまっていたが、今はそんなことを言っている場合では無い。
 時間軸を今に戻して、本部長の指示を待つ。張り詰めた雰囲気の中、走ってきた男の息切れだけが聞こえていた。
「奥原 和花を任意同行しろ。」
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