最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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秩序の牢獄編

デュラン・リンバーグ

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町は雲一つ無く快晴で生暖かい風が吹いて心地いい。
朝も過ぎ、昼が近くなった頃だ。
ナイト・ガイのメンバーはカトレアの死亡時刻を調査するため再び時計塔へと向かっていた。

時計塔に到着間近にガイがふと思い出したことを口にした。

「そういえば領主って車椅子だよな。時計塔には登れないだろ」

「そうだね」

「じゃあ、なんで疑うんだ?」

「僕が疑ってるのは領主のサンドラとメイドのパメラの共謀さ。パメラという女性は聞くに相当な量の仕事をこなしている。身体能力は侮れないかもしれないと思ってね」

「確かに……あのメイドが時計塔からギルドマスターを落としたのかも……」

ガイは妙に納得していた。
パメラと呼ばれた女性の"闘気"を見るに一般人とは思えない量で、もしかすれば武の心得があるように思えた。
一方、領主のサンドラからはあまり放たれておらず、それどころか弱々しいものだった。
波動は使えるだろうが、車椅子ということもあって身体的には強くないだろう。

クロードは静かに頷いて"それもあるが"と前置きして言った。

「なによりカトレアがなぜ殺されなければならなかったのかが気になるね」

「私も気になってました。"町を汚くする"という漠然とした理由に当てはまる行動は多くあるとは思いますけど、具体的にはどんなことをしたんでしょうか……」

メイアが最も気になっていた部分だった。
自ら命を絶ったとなれば住民が言っていたようにギルドマスターとしての重圧に耐えかねての線が濃厚である。
しかしクロードの推理通り、誰かに殺害されたとなれば犯人の動機はなんだったのだろうか?

3人は様々な思考をする中、ようやく時計塔が見える。
今朝の人だかりは消え、カトレアの遺体もどこかへ運ばれていた。
石床にあった血も綺麗に拭き取られているようだった。

円を描くように模った階段を下り、中央の噴水付近まで歩く。
正面には時計塔が見えるが、そこから横に連なる店にガイが視線を送る。

「それで、どこに行くんだ?」

「どこでもいい。まぁ強いて言うなら冒険者が情報を得やすいとなれば武具屋だろうね」

そう言ったクロードを先頭に武具屋に向かう。
武具屋は時計塔が北とすると、ちょうど東に位置する場所に建っていた。
木材とレンガを合わせた頑丈そうな平屋だ。

3人が武具屋に入るためのドアに近づくと中から大きな声が聞こえる。
男と男の言い争いのようだった。

「頼むよ!!なんとかしてくれ!!」

「確か"棚を動かして欲しい"という依頼だったはずだが?」

「そんなのはどうだっていいだよ!なぁ頼むよ!俺の依頼を受けてくれ!金なら払うからさ!」

「そんな変な依頼、受けられるわけないだろう。それに"金"の問題じゃない。ギルドに依頼しても取り下げられたんだろ?」

「ああ、何度もな!」

「それだけ"変な依頼"だと理解した方がいい。私たちはこれで失礼するよ」

声の主はドアを開け、武具屋から出てきた。
それは若く痩せた冒険者。
ゴールドの花の模様が刻まれた黒の鎧、黒のマントを羽織った男だ。
髪の色はブラウンで肩まで伸びるロングヘア。
腰には細剣を差している。

ガイは眉を顰めて呟くようにして言った。

「あんた、確か昨日の……」

「デュランだ。"デュラン・リンバーグ"。君たちはナイト・ガイだったね。ここで何を?」

「少し調べ物をね」

デュランの問いに答えたのはクロードだ。
その答えに少し思考してから、デュランは笑みをこぼして口を開いた。

「もしかしてギルドにあった"猫探しの依頼"かな?あれは骨が折れるよ。私も一度だけ受けたことがあるが、探し出すのに3日は掛かった」

「いや、カトレアが死んだ件さ」

「なんだと」

デュランから笑みが消えた。
武具屋から出てきた他の冒険者たち数人も睨むようにしてクロードを見ている。

「カトレアの件は私も心を痛めているが、あれはギルドの依頼には無いはずだ。なぜ犯人を探す?別に調べたところで報酬なんて無いんだぞ」

「僕たちは報酬目当てに調べてるわけじゃない。そう言う君たちも"お金"目当てで依頼を受けているわけじゃないんだろ?」

「今の話を聞いていたのか?盗み聞きは感心しないな」

「ただ聞こえてきただけさ」

「まぁいい。確かに私たちは"お金"に執着はない。みんなの役に立てればそれでいいんだ。とにかく調べるのはいいが、あまり目立たないことだな」

そう言ってデュラン含めた冒険者たちは去っていった。
その背中に鋭い視線を向けたガイが言い放つ。

「なんだよあれ。感じ悪いな!」

「でも、みんなの役に立てればそれでいいなんて同じ冒険者として尊敬するわ」

メイアの言葉はもっともな話だ。
この町に来た時もギルドの依頼の低報酬に対してガイが言ったことにいさめるようなことを言っていた。

しかしクロードの考えは違った。

「あれは嘘だな」

「え?」

「"お金に執着が無い"のは本当。だが、みんなの役に立てればそれでいいのなら、なぜあんなに頼み込んでる武具屋の依頼を受けないんだ?」

「確かにそうですね……」

「恐らく彼らが欲しいのは金じゃない。別の何かだろう」

「何かってなんだよ」

「さぁ?それはわからない」

クロードは笑みを溢しつつ言うと武具屋へと入って行った。
ため息混じりにガイはその後を追いかけ、メイアもそれに続いた。
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