最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

文字の大きさ
182 / 251
秩序の牢獄編

デュラン・リンバーグ

しおりを挟む

町は雲一つ無く快晴で生暖かい風が吹いて心地いい。
朝も過ぎ、昼が近くなった頃だ。
ナイト・ガイのメンバーはカトレアの死亡時刻を調査するため再び時計塔へと向かっていた。

時計塔に到着間近にガイがふと思い出したことを口にした。

「そういえば領主って車椅子だよな。時計塔には登れないだろ」

「そうだね」

「じゃあ、なんで疑うんだ?」

「僕が疑ってるのは領主のサンドラとメイドのパメラの共謀さ。パメラという女性は聞くに相当な量の仕事をこなしている。身体能力は侮れないかもしれないと思ってね」

「確かに……あのメイドが時計塔からギルドマスターを落としたのかも……」

ガイは妙に納得していた。
パメラと呼ばれた女性の"闘気"を見るに一般人とは思えない量で、もしかすれば武の心得があるように思えた。
一方、領主のサンドラからはあまり放たれておらず、それどころか弱々しいものだった。
波動は使えるだろうが、車椅子ということもあって身体的には強くないだろう。

クロードは静かに頷いて"それもあるが"と前置きして言った。

「なによりカトレアがなぜ殺されなければならなかったのかが気になるね」

「私も気になってました。"町を汚くする"という漠然とした理由に当てはまる行動は多くあるとは思いますけど、具体的にはどんなことをしたんでしょうか……」

メイアが最も気になっていた部分だった。
自ら命を絶ったとなれば住民が言っていたようにギルドマスターとしての重圧に耐えかねての線が濃厚である。
しかしクロードの推理通り、誰かに殺害されたとなれば犯人の動機はなんだったのだろうか?

3人は様々な思考をする中、ようやく時計塔が見える。
今朝の人だかりは消え、カトレアの遺体もどこかへ運ばれていた。
石床にあった血も綺麗に拭き取られているようだった。

円を描くように模った階段を下り、中央の噴水付近まで歩く。
正面には時計塔が見えるが、そこから横に連なる店にガイが視線を送る。

「それで、どこに行くんだ?」

「どこでもいい。まぁ強いて言うなら冒険者が情報を得やすいとなれば武具屋だろうね」

そう言ったクロードを先頭に武具屋に向かう。
武具屋は時計塔が北とすると、ちょうど東に位置する場所に建っていた。
木材とレンガを合わせた頑丈そうな平屋だ。

3人が武具屋に入るためのドアに近づくと中から大きな声が聞こえる。
男と男の言い争いのようだった。

「頼むよ!!なんとかしてくれ!!」

「確か"棚を動かして欲しい"という依頼だったはずだが?」

「そんなのはどうだっていいだよ!なぁ頼むよ!俺の依頼を受けてくれ!金なら払うからさ!」

「そんな変な依頼、受けられるわけないだろう。それに"金"の問題じゃない。ギルドに依頼しても取り下げられたんだろ?」

「ああ、何度もな!」

「それだけ"変な依頼"だと理解した方がいい。私たちはこれで失礼するよ」

声の主はドアを開け、武具屋から出てきた。
それは若く痩せた冒険者。
ゴールドの花の模様が刻まれた黒の鎧、黒のマントを羽織った男だ。
髪の色はブラウンで肩まで伸びるロングヘア。
腰には細剣を差している。

ガイは眉を顰めて呟くようにして言った。

「あんた、確か昨日の……」

「デュランだ。"デュラン・リンバーグ"。君たちはナイト・ガイだったね。ここで何を?」

「少し調べ物をね」

デュランの問いに答えたのはクロードだ。
その答えに少し思考してから、デュランは笑みをこぼして口を開いた。

「もしかしてギルドにあった"猫探しの依頼"かな?あれは骨が折れるよ。私も一度だけ受けたことがあるが、探し出すのに3日は掛かった」

「いや、カトレアが死んだ件さ」

「なんだと」

デュランから笑みが消えた。
武具屋から出てきた他の冒険者たち数人も睨むようにしてクロードを見ている。

「カトレアの件は私も心を痛めているが、あれはギルドの依頼には無いはずだ。なぜ犯人を探す?別に調べたところで報酬なんて無いんだぞ」

「僕たちは報酬目当てに調べてるわけじゃない。そう言う君たちも"お金"目当てで依頼を受けているわけじゃないんだろ?」

「今の話を聞いていたのか?盗み聞きは感心しないな」

「ただ聞こえてきただけさ」

「まぁいい。確かに私たちは"お金"に執着はない。みんなの役に立てればそれでいいんだ。とにかく調べるのはいいが、あまり目立たないことだな」

そう言ってデュラン含めた冒険者たちは去っていった。
その背中に鋭い視線を向けたガイが言い放つ。

「なんだよあれ。感じ悪いな!」

「でも、みんなの役に立てればそれでいいなんて同じ冒険者として尊敬するわ」

メイアの言葉はもっともな話だ。
この町に来た時もギルドの依頼の低報酬に対してガイが言ったことにいさめるようなことを言っていた。

しかしクロードの考えは違った。

「あれは嘘だな」

「え?」

「"お金に執着が無い"のは本当。だが、みんなの役に立てればそれでいいのなら、なぜあんなに頼み込んでる武具屋の依頼を受けないんだ?」

「確かにそうですね……」

「恐らく彼らが欲しいのは金じゃない。別の何かだろう」

「何かってなんだよ」

「さぁ?それはわからない」

クロードは笑みを溢しつつ言うと武具屋へと入って行った。
ため息混じりにガイはその後を追いかけ、メイアもそれに続いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...