最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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フレイム・ビースト編

死闘開戦

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夕暮れ近く。
あれほど降り続いた雪は止んでいた。

ガイとローゼルの2人はようやく北にある集落に辿り着く。
洞窟を出て少しだけ北に進むと、その場所は簡単に見つけられた。

セリーナとホロは戦闘不能により身動きがとれないようだったため、そのまま置き去りにしてここまで来たのだ。

集落はいくつかの円形状のコテージが等間隔に雪の上に建てられている。
一つだけ"真っ黒く四角い建物"があり、集落の中では明らかに異質で目立っていた。

周囲を警戒しつつ2人はコテージの間を進むが人の気配が全く無い。
コテージの数は10以上あるにも関わらず、人がいないということに異常性を感じていた。

「なんで誰もいないたんだよ。俺たちが来るって知ってたのか?」

「イザークがらした……いや、時間的にそれは不可能か」

「とにかくローラを探さないと」

「ええ」

2人はさらに集落の奥に進んだ。
すると、ちょうど中央に周りに建つものよりも一回りほど大きいコテージがあった。

「入ってみるか?」

「罠のような気もしますけどね」

ガイも一瞬だけ、その可能性を考えた。
しかし相手がイース・ガルダンの闘技場で会った赤髪の男だとするなら、わざわざ隠れて罠など仕掛けるだろうか?
あそこまでの武人であるなら真正面から現れる。
もし仲間がいたとしても、あの男が"共闘"を好むとも思えない。
それは赤髪の男の一対多数を想定したワイルド・スキルが物語っていた。

「入ろう」

その言葉にため息をつくローゼル。
ガイが歩き出すと彼女も続いた。

コテージの入り口はカーテンのような布で覆われていた。
それを捲ると狭い空間があり、正面にはコテージの中に入るための木造のドアがある。
寒さ対策なのだろう、南方ではまず見ることのない作りをしていた。

ドアを開けると、さらに奥に続く細い廊下があり前へ進む。
すると、そこには広い部屋があった。

中央には長いテーブルが縦に置かれ、左右には複数の椅子が規則正しく揃えてある。
そしてテーブルの上座には見覚えのある男がいた。

アップバングの赤髪を後ろにだけ長く伸ばして結っている。
漆黒のロングコートは細い赤い血管のような模様が這うようにして全体に伸びていた。
サングラスを掛けた赤髪の男はテーブルに足を乗せてくつろいでいるようだった。

「ゾルア・ガウス……」

ガイが静かに呟くと、ゾルアはニヤリと笑ってから口を開く。

「"死神"は一緒じゃないのか?」

「な、なんのことだよ」

「一緒には来ていないようだな。後ろにいるのは騎士様か?なんで冒険者と騎士団がつるんでるんだ」

ガイの後ろに立つローゼルは息を呑む。
今まで感じたことのない気配だったのだ。

「まぁいい。お前の命は助けてやる。今すぐここから出ていけ」

「なぜですか?」

「騎士に手を出したとなればグレイグの逆鱗に触れる。流石に今はヤツと戦いたくないからな」

ローゼルは首を傾げる。
なにせ"グレイグ"という人物を知らない。

「仲間を見捨てて背を見せて引くわけにはいかない」

「そうか、まぁ構わんさ。グレイグには借りがあるし、これでチャラにしてもらおう」

「何を言ってる……?」

「お前が知る必要はない」

「私以外にも騎士団の人間がここに向かっている。無益な争いは避けたい」

「無益じゃないさ。この件は俺にとっては死活問題だ。それに騎士なんて何百何千いようと俺の前では何も変わらん」

闘技場での戦闘を目の当たりにしているガイには、この発言の意味は痛いほどよくわかった。
六大英雄ゾルア・ガウスのワイルド・スキルは聴覚と視覚に関係しており、敵味方とわず無差別に攻撃する。
"聞くもの"、"見るもの"、全てを焼き払うという
対多人数用戦闘スキルだ。

「だがヤツはヤツなりに扱いづらい貴族を組織して死神を討とうとしているからな……なるべく邪魔はしたくはないが、この状況では仕方あるまい」

ため息混じりに呟くゾルアの凄まじい圧に2人は動けなくなる。
しかし、それでもガイにはどうしても気になることがあったため一歩前に出て言った。

「なんでローラをさらった!!」

「さぁ?勝手にレイが連れて来ただけだ。少し状況が変わったから仲間に始末させたが」

「な、なんだと……なんでそんな……」

「簡単な話しさ。だからだ」

その言葉が言い放たれた瞬間、ガイの瞳は赤く染まった。
テーブルに乗り、その上を一直線に疾走する。
狙いはゾルアの首元だった。

「無礼なガキだな」

あと数メートルというところでサングラス越しにゾルアの目が見開かれる。
するとズドン!という轟音と共に熱波が広がり、その熱はコテージごと吹き飛ばした。

粉々になったコテージ、周囲には雪埃が舞い上がる。
建物を覆っていた布や木材は破壊され、その場所はもはや室内とは呼べない。
ここは完全に屋外と化していた。

中央に立っていたゾルアは肩や足元の埃を手で払いながら言う。

「最近になって覚えた"手加減"ってやつさ。本気を出すより難しいものだな。これで死んだわけではあるまい?闘気が見えるワイルド・ナインなんて、この数百年でグレイグしか見たことがない。お前は間違いなく強者だ……少しは楽しみたいものだ」

ゾルアの言葉に反応するように雪煙の中に赤い閃光が走り、勢いよく飛び出す。
飛び跳ねたガイはダガーを逆手に持ち、ゾルア目掛けてそれを勢いよく振った。
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