13 / 251
マーリン・バーベッチ
しおりを挟むリア・ケイブス
翌日の早朝、この日は強く雨が降っていた。
小ぢんまりとした宿のロビーで集まったガイとメイア、クロード。
この宿は"六部屋"埋まっていた。
「雨が強いな。この状況で湿地帯に行くのは危険だろう」
「これくらいなら、大丈夫じゃないか?」
「無理はしないほうがいい。まだ君たちは戦闘経験が浅いからね。万全の体勢で望んだほうがいい」
「確かにそうね……」
ガイとメイアは納得せざるを得なかった。
何せ戦闘は、たった一度しか経験しておらず、まだまだ2人の動きもぎこちない。
「今日は休もう。ここまで、ずっと休んでなかったんだ、今日くらいはいいだろう」
「なら部屋で寝てるか」
「ガイは勉強よ。本を貸すわ」
「え……」
ガイは言葉を失っていた。
体を動かすのなら慣れているが、"黙って字を読む"というのは苦手だった。
「メイアは本が好きなんだな」
「ええ」
「なるほど。勉強も大事だガイ。メイアが波動をスムーズに属性変換させれたのはイメージの力でもある」
「イメージの力?」
「本は単なる"文字"だ。読んだ人間がイメージするしかない。そのイメージの力を培うにはもってこいさ」
「あ、ああ、なら読んでみようかな……」
ガイは歯切れの悪い返事をした。
強くなれるというなら仕方ない、そんな思いだった。
「もしかしたらメイアは"セントラル・アカデミア"に入れるかもね」
「い、いえ、私なんか無理ですよ……ただの村娘ですから」
「なんだそれ?」
「まず、ガイは世界を勉強した方がいいな」
「……知らなくて悪かったな」
「いや、今、知ればいいことさ。セントラル・アカデミアは波動を研究している機関だ。通常は貴族階級の人間しか入れないが、貴族の推薦状があれば平民でも試験を受けられるようだ」
「へー」
「かなり昔からある学校で、噂では六大英雄が作ったんじゃないかって言われてるのよ」
そう言ってメイアはハッとした。
六大英雄と言えば、もしかすればクロードが知っているかもしれないと思ったのだ。
そのメイアの表情を見たクロードは笑みを溢しつつ口を開いた。
「いずれ、そこも通ることになる」
メイアの目が輝いた。
この会話で初めてガイは、メイアがここまでついて来た理由を知った。
恐らくメイアは、その"セントラル・アカデミア"に行きたかったのだろう。
「とにかく今日は二人とも休むといい」
「クロードはどうするだよ」
「僕は少し調べ物をしてくるよ」
そう言って、クロードは2人に手を振って宿を出て行った。
「じゃあ、私の本を貸すから、今日は勉強ね」
「へいへい。メイアも勉強か?」
「ええ。私は町を少し見てくるわ。いろんな町の建造物に興味があるから」
「変な興味だな」
「ガイも何かに興味を持った方がいいわよ。そこに人の成長の鍵があると、私は思うわ」
「へいへい」
やる気のないガイの返事を聞いたメイアは苦笑いしつつ、2人は一旦部屋へ戻った。
メイアはガイに本を貸すと、雨降りの中、町へ出て行くのだった。
_____________
メイアはフードを深く被り、ギルドの方へ向かうように歩いた。
早朝で、雨降りとあってか人通りは全くない。
メイアはボロボロの建造物ではあるが、その補修方法などを見て回りたかった。
家屋が立ち並ぶ町を1人歩くメイア。
雨が降ってなければスケッチもしたかった、と思いつつ、一回一回立ち止まり建物を見ていた。
すると突然、背後から男の声がした。
「いたぞ」
「ああ」
その声にメイアが振り向く前に、後ろから強い力で拘束された。
男の腕が、メイアの小さな体を巻き、さらに口まで塞がれてしまった。
悲鳴をあげようにも声を出せず、暴れても、男の力が強いので振り解けなかった。
「大人しくしろ!!」
「早く建物の影に行くぞ、誰かに見られたら大変だ」
「大丈夫だよ!こんな雨降りに歩いてるやつなんていない!」
そう言って2人の男はメイアを建物と建物の間へ連れ込んだ。
雨で天候が悪いせいもあってか、建物の間は暗がりで見えづらい。
メイアは暴れているが、男腕はびくともしなかった。
「こいつが人質でいいな」
「ああ。3万ゼクは大金だ。恐らく、あの"クロード"とかいう男が持ってるだろう」
メイアはこの会話で気づいた。
彼らはカレアの町から、自分たちを追ってきた冒険者で、ベオウルフ討伐で手に入れた報酬目当てだと。
「うううー!!」
「悪く思うなよ。運が悪かった、それだけだ」
暗がりでメイアには2人の男の容姿は分からない。
大きい男が、自分を取り押さえ、細身の男が笑みを溢しながら発言している。
それだけしか認識できなかった。
その時、街道の方で、女性の声がした。
「運が悪いのは、あなた達の方です」
「何!?」
その瞬間、"爆風"が巻き起こり、細身の男が宙に浮いた。
その高さは数十メートルにも及ぶ。
簡単に家屋の高さを超えた細身の男は、そのまま地面に落ちる。
倒れた細身の男は痛みで唸り声をあげていた。
「なんだ貴様は!?こいつがどうなってもいいの……」
メイアを押さえつけていた男が、そう言いかけた瞬間、ビュン!と"何か"が高速で飛び、それが男の額に当たる。
その"何か"が当たった瞬間、鈍い音がした。
それは跳ね返って、女性の手元に戻る。
男は激痛で額を押さえた。
「こっちへ」
「はい!」
メイアは弱まった男の手を振り解くと、すぐに建物の間から出るように街道の方へ走り、女性の後ろへとまわる。
その女性は目が虚でブロンドのショートカット、グレーのスーツに膝まであるスカートを履いていた。
雨具としてローブを羽織っており、首から下げた波動石が"緑色"に光る。
「クソ!!なんだ貴様は!!」
「この町でギルドの受付を務めさせて頂いております。マーリン・バーベッチと申します」
「受付だと!?受付の分際で、死にてぇのか!!」
メイアを取り押さえていた男が叫ぶ。
だが、細身の男が体を震わせながら立ち上がると、その男を止めた。
「やめろ!!マーリンって、"月の銀狼"のメンバーだ」
「なに!?あ、あのAランクパーティの……」
「行こう……殺される!!」
マーリンの目は虚だが、凄まじい殺気だった。
それを感じ取ったのか、冒険者2人は建物の間の暗がりの奥へ逃げて行った。
「あ、ありがとうございます」
「いえ。子供一人で出歩くのは危険ですよ。自分で身を守れないのであれば、なおさら」
「はい……」
「では、私はこれで」
マーリンが立ち去ろうと背を向けたと同時に、メイアは気づいたように声をかけた。
「あ、あの!」
「なんでしょう?」
「あの依頼、明日、私たち"ナイト・ガイ"が受けます」
「そうですか。手続き、お待ちしております」
そう言って、マーリンは再び背を向けてギルドの方へ歩き出した。
マーリンの手に握られていたのは拳ほどの大きさの"鉄球"だった。
メイアは、それが彼女の武具であることを悟った。
1
あなたにおすすめの小説
シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
花鳥見聞録
木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる