色づく世界の端っこで

星夜るな

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第一章

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そう言うと碧は、涙を流した。
静かに…。


「どうして、碧が泣くの。…同情。」
碧がどうして泣いたのか。
わからなくて理由を聞いた。



「…いや、違う…んだよ。これはね…彩人兄が泣かないから…。苦しい、泣きたいって顔に書いてあるのに…。普通に振る舞って…。だからだよ。」


僕は、その意味がわからなかった。


「ごめん。よくわからない。」

碧は、仕方ないというように優しく笑った。


「今はね。わからなくていいと思う。でも、いつかは、この意味を知ってよね。」


「うん。」

しばらく、碧は、何を喋らなかった。
僕も喋らずにじっとそこに座っていた。

沈黙を破ったのは碧だった。


「彩人兄。それで、どうして、父親がいたの?」


「…。話さないとだめ。」

「うん。」


「……。」



「わかった。僕も困らせたくて言ってるんじゃないから、彩人兄が、仲野先生に事情を説明するときに聞くことにする。だから、それまでに言えるようになってて。…それ以上は待てない…ごめんね。」


「わかった。」


言うしかない。

碧にした家族の話を次は仲野先生に言わないといけない。


怖いな。


なんて言われるかな。



嫌われるかな。



怖いな…。




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