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素直になって側にいたい
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城門前から乗り合い馬車が出ているとカインから聞き、それに乗って近くの集落へ向かうこととなった。
「俺も明日はそちらに向かおう」
「カインは仕事明けなんだからお家で休まないとだよ」
「俺はニーナといる方が」
カインは何かを言おうとしたが、乗り合い馬車の御者が出発の鐘を鳴らし始めたので途中で言葉を止めた。
「……もう馬車に乗らないとな」
「ん……そうだね。カイン君はちゃんと休むんだぞ!」
「ニーナこそ」
それからカインにくれぐれも宿に泊まるよう念押しされ、馬車に乗り込む所まで付き添われた。
(放っておくと野宿すると思われてるな。まあ、一人だったら野宿してたかもだけど……これからはカインに心配かけないようにちゃんとしないと……)
馬車が走り出してからもカインはずっとこちらを見守っていた。そんな意地らしい大型犬の姿を馬車の窓から見つめていると胸がポカポカと温かくなったが、馬車が進むにつれ段々とカインの姿は遠く小さくなっていった。
ニーナはほんの少し寂しさを感じ、目を伏せて他の乗客達が談笑する声を聞きながら過ごすことにした。
王都近くの集落は乗り合い馬車で三十分程の距離らしかったが、カインと王都に向かう時よりも長いように感じる。
(カインといるのが楽しかったから余計にそう思うんだろうな)
ニーナはカインの姿を思い浮かべるように、しばらくの間目を瞑った。
◇◇◇
集落には日の落ちる頃に到着した。乗客達はぞろぞろと馬車を降り、大半は迎えに来た家族達と共に家路に着くようだった。
久々に帰宅したであろう者を労うように肩を叩き合い、楽しそうに会話している。ニーナは馬車の停車場で旅行鞄を抱え、そんな光景を羨望の眼差しで見つめた。
(良いな。オレもああいう風な家族にカインとなりたい……)
頬を染め、旅行鞄をギュッと抱え直すと集落に向かって歩みを進めた。大通りに親切な主人の宿屋があるとカインから念入りに伝えられたので、目的地には迷うことなく辿り着けた。
宿屋はレンガ造の二階建てで中々風情のある建物だ。店先には洒落たランプが灯され夕暮れの通りを照らしている。
扉を開けて中に入ると受付に小柄な主人が座っていた。ニーナが一番安い部屋を数日借りたいと告げると料金の説明を受け、すんなりと寝床を確保することが出来た。
帳簿に名前を書くと、宿屋の主人から部屋の鍵を渡された。ニーナの部屋は二階の端にあり一番安い部屋なので食事は付いていない。
宿屋の主人はカインが言う通り親切な男だったので、朝夕は通りの屋台で食事すれば良いと教えてくれた。ニーナは礼を言って二階に上がり、隅の方にある部屋の扉を開けた。
部屋は王都が近いだけあって小綺麗だったがとても狭い。家具はベッドと小さな棚くらいしかなく、旅行鞄を棚に置くと他には何も置けなくなった。
(安い部屋だから狭いのは仕方ないか。それに野宿するのに比べたら天国だ。ああ……でも、今は、それよりも審査結果だな……)
ニーナはローブも脱がずに倒れるようにベッドに横たわった。ベッドはお世辞にもふかふかとは言い難い物だったが、床や椅子よりは遙かにマシだ。面談の緊張で張り詰めていたせいか気を失うように眠りに落ちた。
「俺も明日はそちらに向かおう」
「カインは仕事明けなんだからお家で休まないとだよ」
「俺はニーナといる方が」
カインは何かを言おうとしたが、乗り合い馬車の御者が出発の鐘を鳴らし始めたので途中で言葉を止めた。
「……もう馬車に乗らないとな」
「ん……そうだね。カイン君はちゃんと休むんだぞ!」
「ニーナこそ」
それからカインにくれぐれも宿に泊まるよう念押しされ、馬車に乗り込む所まで付き添われた。
(放っておくと野宿すると思われてるな。まあ、一人だったら野宿してたかもだけど……これからはカインに心配かけないようにちゃんとしないと……)
馬車が走り出してからもカインはずっとこちらを見守っていた。そんな意地らしい大型犬の姿を馬車の窓から見つめていると胸がポカポカと温かくなったが、馬車が進むにつれ段々とカインの姿は遠く小さくなっていった。
ニーナはほんの少し寂しさを感じ、目を伏せて他の乗客達が談笑する声を聞きながら過ごすことにした。
王都近くの集落は乗り合い馬車で三十分程の距離らしかったが、カインと王都に向かう時よりも長いように感じる。
(カインといるのが楽しかったから余計にそう思うんだろうな)
ニーナはカインの姿を思い浮かべるように、しばらくの間目を瞑った。
◇◇◇
集落には日の落ちる頃に到着した。乗客達はぞろぞろと馬車を降り、大半は迎えに来た家族達と共に家路に着くようだった。
久々に帰宅したであろう者を労うように肩を叩き合い、楽しそうに会話している。ニーナは馬車の停車場で旅行鞄を抱え、そんな光景を羨望の眼差しで見つめた。
(良いな。オレもああいう風な家族にカインとなりたい……)
頬を染め、旅行鞄をギュッと抱え直すと集落に向かって歩みを進めた。大通りに親切な主人の宿屋があるとカインから念入りに伝えられたので、目的地には迷うことなく辿り着けた。
宿屋はレンガ造の二階建てで中々風情のある建物だ。店先には洒落たランプが灯され夕暮れの通りを照らしている。
扉を開けて中に入ると受付に小柄な主人が座っていた。ニーナが一番安い部屋を数日借りたいと告げると料金の説明を受け、すんなりと寝床を確保することが出来た。
帳簿に名前を書くと、宿屋の主人から部屋の鍵を渡された。ニーナの部屋は二階の端にあり一番安い部屋なので食事は付いていない。
宿屋の主人はカインが言う通り親切な男だったので、朝夕は通りの屋台で食事すれば良いと教えてくれた。ニーナは礼を言って二階に上がり、隅の方にある部屋の扉を開けた。
部屋は王都が近いだけあって小綺麗だったがとても狭い。家具はベッドと小さな棚くらいしかなく、旅行鞄を棚に置くと他には何も置けなくなった。
(安い部屋だから狭いのは仕方ないか。それに野宿するのに比べたら天国だ。ああ……でも、今は、それよりも審査結果だな……)
ニーナはローブも脱がずに倒れるようにベッドに横たわった。ベッドはお世辞にもふかふかとは言い難い物だったが、床や椅子よりは遙かにマシだ。面談の緊張で張り詰めていたせいか気を失うように眠りに落ちた。
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