婚約者は想像と違います

いつき

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お空の景色

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「まてまて置いていくな!」

「遅いですよ。にーさまはしゅぱぱーぱーと、のぼるのです。シルもそうなるのです。」

「お前の兄は3才も年が上だろ。まだ5才の私達には無理だ。」

「やって見ないとわかりません。殿下はよそで勝手に遊んでください。」

 木のぼりと言うらしいが、なぜ私といるときに始める?
初めての婚約者の顔会わせで。普通親に私の機嫌を取るように言われるだろう?

「お母様の居ない今しかないのです。」

確かに公爵婦人は止めるだろう。
婚約じたいもなくさないかと母上に言っていた。
マナーも礼儀も他の同い年の令嬢に劣る。
噂ではゆうしゅうと聞いたのだが?

「お前!ゆうしゅうじゃないのか?」

「何ですかそれ?」

「大人の言う通りにする事だろう。」

「そんなの優秀じゃないですよ。」

「なんでだ、そうすると誉められる。しないと怒られる。完璧な人形にならないと。表情から感情も殺して。求められる役目をこなす人形だろう?」

「人形なんてなれませんよ!そんなの私は無理です。にーさまは演じるって言ってたました。」

「演じる?」

「はい、物語を自分の思うほうこうに進めるために、自分で自分を演じるそうです!シルは苦手で出来ません。でも、自分の物語を自分で作るなんてとてもかっこいいです。」

「かっこいい?」

「はい!シルは大好きな人が幸せになれる物語が大好きです。殿下はどんな物語が好きですか?」

「お父様とお母様と仲良くて。お父様のお仕事を手伝いたい。いっぱい誉めてもらいたい!」

「ふふっ素敵ですね。大人に言えない事があったらにーさまに聞くといいです。シルはいつもにーさまはに助けてもらってます。こんやくしゃ?になったら家族みたいな物らしいので、シルのにーさまはを特別に貸してあげますよ。」


あんなに高い所まで登ってる。
私も一緒に行くんだった。
どんな景色が見えるんだろう?

「高くてたのしーいですよ~来ますか~?」

行って見ようか、本当は怖いけど。

「怖いですか~?怖いならはっきりいった方がいいですよ~。」

 カッコ悪くないか?私は殿下で完璧じゃないと悪い…
でも…

「こ、怖い!」

「ですよね~。シルはのぼるのは、楽しかったのですが。降りるのは怖くて降りれません~助けてください~」

「……」

「お母様に見つからないよう助けていただけると嬉しいです~」

「ふっ。あははは~!登れない私もカッコ悪いが、お前もカッコ悪いな!」

「お前じゃないです。シルです。でも景色はみれました~殿下は見れてません。こっちがいいですよ~」

「でも、このままだと怒られるのだろう?」

「…そうだ!景色を教えてあげるから、ばれないように助けてください。」

それはいい手だ、だがどうしよう。

騎士は鎧で無理だろうし。こいつの兄を呼んでこよう。

「シル~やっちゃたか~お母様にさんざん言われたのに。」

「にーさまは助けて、お母様には言わないで。」

「今回は特別だよ。ほらおいで。」

…まさか飛び降りろと?おりるのがこわいのに?

「えい!」

降りるのか!?

「たのしーい!」

「シルよそでしないって約束だろう?」

無事にキャッチされて兄妹でイチャイチャし始めた。

…飛び降りる姿が天使みたいに可愛かった。
キャッチ出来なかった事が悔しい。

兄の方がこっちを見てにんまり笑う。

「僕の天使だからね。」

「私の婚約者になる…」

「話は流れそうだよ?」

なんだと?止めないと。

「シルまたな」

「はい、また遊びましょうね。」

気づいたら走ってた。
婚約者じゃないときっと会えなくなる。
また会いたいんだ。

「母上~」

「クロウどうしたの?走るなんて珍しい。」

しまった怒られる?嫌われる?

「申し訳ありません。」

「いいのよ。子供なのだからそのくらい元気が良くて。ずいぶん大人びてしまって母は寂しいのよ?わがままだってたまには言っていいのよ。」

……知らなかった。
家庭教師がご両親のために、両親に嫌われる、両親の願いっだって言うから、信じてきた。
そんな事ないじゃないか母上はわがまま言っていいといった走っても怒らなかった!

「母上。婚約者はシルがいいです、シルにしてください。」

「あら~だそうよ。ティアちゃん?」

「ちゃん付けはお止めください。ではせめて15才までは仮にしていただけませんか?シルがどう育つか心配で心配で。」

確かに、私も心配だ。

でも15才になったら。

私も今のシルの兄より大人になる。




そしたらきっと天使のようなシルを受け止めて見せる。



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