18 / 37
17 浄化石と魔力付与
しおりを挟む
「今回は相手が一枚上手でした。まさか宰相様がご一緒に戻ると思っていませんでしたし、あんなにスムーズに寝室に誘導してしまうなんて…」
新しい部屋で三人で最初にするのが反省会になってしまった。
部屋に入ってからのやり取りがどういう状況だったのかを、私にもわかるようにハイムくんが説明してくれた。
まず寝室は最もプライベートな場所なので、本人の了承なく入らないものらしい。
従者や護衛は業務上出入りはするけれど、さっきの状況は公爵が寝室に私を誘ったことにレヴァンテが気付いて威嚇したけど「求婚した私が口説いてて本人も嫌がってないんだから護衛のお前は黙ってろ」という事だったらしい。だからレヴァンテは中に入って来なかったのか。
「私にはどうすることも出来なかったので、レヴァンテ様を呼んでくれたのは良かったです。少しでも嫌だったり身の危険を感じた時は、迷わず護衛を呼んで下さい」
私が公爵に口説かれていることに気付いていないのはわかったけど、止める訳にもいかずハラハラしていたらしい。
「天蓋の布で見えなくなった時はかなり焦りました。でも呼んでくれたので踏み込むことが出来ました」
「あ~あれね…凄く自然に目隠しされて驚いたよ。慣れていてスマートだった。皆さん恋愛スキルが高すぎないか? 私には太刀打ちできそうもないよ」
「獣人は比較的晩婚が多いんです。若い時に恋愛を楽しんでからパートナー選びをするので、駆け引きに慣れている人が多いかもしれません。ですから、トモヒロ様を恋愛対象と見る人は求婚してきた人だけではないと思って下さい」
「ハイムくん、追い打ちをかけないで…。レヴァンテ、私の経験値じゃ確実に負けてしまう。助けてくれ」
打ちひしがれて助けを求めたら、嬉しそうに尻尾をぶんぶん振ってレヴァンテが近くに来て膝をついた。
「私が守ります! いつでも呼んでください」
「すっごく頼りにしている。 そうだ、ふたりとも手を出してくれる?」
そう言ったらハイムくんも並んで膝をついて、不思議そうな顔をしてふたり揃って両手を出してきた。私の従者と護衛は素直で可愛いな。そこに小ぶりの浄化石をひとつづつのせた。
ハイムくんは緑の宝石でレヴァンテは薄青の宝石にした。あまり高価ではないものだけど、どちらもそれぞれの瞳の色に近い物を選んだ。
「日頃の感謝の気持ちだよ。受け取って」
「まさか、宝石ですか? こんな高価な物…」
「宝石だけど、そこまで高価な物じゃないから、受け取って欲しいな」
恐縮するハイムくんの隣でレヴァンテは胸の前で握りしめて「一生大事にします」と言っている。もちろん尻尾はブンブンだ。その声を聞いて躊躇っていたハイムくんも嬉しそうにお礼を言って受け取ってくれた。
「その石、私が浄化の魔力を付与した浄化石って言うものなんだ。黒霧を寄せ付けないからなるべく身に着けていて欲しい」
「「 …はい?」」
二人が浄化石を凝視して固まっている。あ、そうか、まだ情報解禁前だった。まあこのふたりなら大丈夫だろう。
「今日の話し合いで作れることがわかったものなんだけど、最初に作ったものはふたりにあげたくて私が引き取って来たんだ」
固まっていたふたりが同時に顔をあげる。先に復活したのはハイムくんだった。
「ちょっと待って下さい! え? 黒霧を寄せ付けないって…そんなとんでもない物を作ったんですか⁉ しかもそれを日頃の感謝で従者に渡しちゃ駄目でしょっ!」
おお、ハイムくんの素が出ている。そんなに驚かなくても大丈夫だよ。これからたくさん作るから。
「トモヒロ様、貴方と言う人はどれだけ私を喜ばせたいんですか…」
レヴァンテの握りしめた拳が小刻みに震えている。喜んでくれて何よりだ。
それから浄化石と魔力付与について話合いで決まった事をふたりに報告した。浄化石の事も驚いていたけど、ハイムくんは魔力付与の方が気になるらしい。
「私にも出来るでしょうか? 水属性(中)と火属性(小)を持っています」
「出来ると思うよ。今はシリング公爵が主体になって法務省と魔法省が検証することになっているから、結果が纏まったら試してみるといいよ」
「はい。出来るようになれば冒険者じゃなくても魔石が手に入るんですね 。魔物狩りが出来ない人には朗報だと思います」
シリング公爵が言っていた「新たな産業」というのはこのことを指していたのか。
魔力さえあれば老若男女問わず魔石が作れるようになれば、魔道具ももっと普及していくだろう。公爵には頑張ってもらわなければ…。
そして今後の私のスケジュールに浄化石作りの時間が追加された。量産するぞ!
それからは部屋に届けられる色々な宝石や石で暇を見ては浄化石を作った。手のひらに握って魔力を移せばいいだけなので、教会やギルドへの移動中にも出来る。魔力付与が終わると石が一瞬光るので分かりやすい。私は浄化が(中)なので大きな石には付与出来ないから数で頑張るしかない。
浄化以外の魔力付与も魔法省が中心になって動き出した。
色々と試した結果、属性によって付与できる石が違うことが判明した。そして、赤色系は火で青色系は水と言うように、色で向いている属性が判断できる事が分かった。検証がある程度済んだら講習会を開いて魔力付与も広めていくらしい。ただ、魔力付与した宝石は魔道具に使うと魔物から出た魔石と同じ様に割れてしまう。間違っても家宝の宝石とかに付与することが無い様にしないといけない。魔道具の燃料として考えるなら、手軽に手に入る石で付与が出来るものを探す方が良いだろう。
浄化魔法は色に関係なく付与できる石ならどれでも出来たけど、治癒魔法の付与はどの石にも全く出来なかった。そのうち出来る石が見つかるかもしれないし地道に試していこう。
新しい部屋で三人で最初にするのが反省会になってしまった。
部屋に入ってからのやり取りがどういう状況だったのかを、私にもわかるようにハイムくんが説明してくれた。
まず寝室は最もプライベートな場所なので、本人の了承なく入らないものらしい。
従者や護衛は業務上出入りはするけれど、さっきの状況は公爵が寝室に私を誘ったことにレヴァンテが気付いて威嚇したけど「求婚した私が口説いてて本人も嫌がってないんだから護衛のお前は黙ってろ」という事だったらしい。だからレヴァンテは中に入って来なかったのか。
「私にはどうすることも出来なかったので、レヴァンテ様を呼んでくれたのは良かったです。少しでも嫌だったり身の危険を感じた時は、迷わず護衛を呼んで下さい」
私が公爵に口説かれていることに気付いていないのはわかったけど、止める訳にもいかずハラハラしていたらしい。
「天蓋の布で見えなくなった時はかなり焦りました。でも呼んでくれたので踏み込むことが出来ました」
「あ~あれね…凄く自然に目隠しされて驚いたよ。慣れていてスマートだった。皆さん恋愛スキルが高すぎないか? 私には太刀打ちできそうもないよ」
「獣人は比較的晩婚が多いんです。若い時に恋愛を楽しんでからパートナー選びをするので、駆け引きに慣れている人が多いかもしれません。ですから、トモヒロ様を恋愛対象と見る人は求婚してきた人だけではないと思って下さい」
「ハイムくん、追い打ちをかけないで…。レヴァンテ、私の経験値じゃ確実に負けてしまう。助けてくれ」
打ちひしがれて助けを求めたら、嬉しそうに尻尾をぶんぶん振ってレヴァンテが近くに来て膝をついた。
「私が守ります! いつでも呼んでください」
「すっごく頼りにしている。 そうだ、ふたりとも手を出してくれる?」
そう言ったらハイムくんも並んで膝をついて、不思議そうな顔をしてふたり揃って両手を出してきた。私の従者と護衛は素直で可愛いな。そこに小ぶりの浄化石をひとつづつのせた。
ハイムくんは緑の宝石でレヴァンテは薄青の宝石にした。あまり高価ではないものだけど、どちらもそれぞれの瞳の色に近い物を選んだ。
「日頃の感謝の気持ちだよ。受け取って」
「まさか、宝石ですか? こんな高価な物…」
「宝石だけど、そこまで高価な物じゃないから、受け取って欲しいな」
恐縮するハイムくんの隣でレヴァンテは胸の前で握りしめて「一生大事にします」と言っている。もちろん尻尾はブンブンだ。その声を聞いて躊躇っていたハイムくんも嬉しそうにお礼を言って受け取ってくれた。
「その石、私が浄化の魔力を付与した浄化石って言うものなんだ。黒霧を寄せ付けないからなるべく身に着けていて欲しい」
「「 …はい?」」
二人が浄化石を凝視して固まっている。あ、そうか、まだ情報解禁前だった。まあこのふたりなら大丈夫だろう。
「今日の話し合いで作れることがわかったものなんだけど、最初に作ったものはふたりにあげたくて私が引き取って来たんだ」
固まっていたふたりが同時に顔をあげる。先に復活したのはハイムくんだった。
「ちょっと待って下さい! え? 黒霧を寄せ付けないって…そんなとんでもない物を作ったんですか⁉ しかもそれを日頃の感謝で従者に渡しちゃ駄目でしょっ!」
おお、ハイムくんの素が出ている。そんなに驚かなくても大丈夫だよ。これからたくさん作るから。
「トモヒロ様、貴方と言う人はどれだけ私を喜ばせたいんですか…」
レヴァンテの握りしめた拳が小刻みに震えている。喜んでくれて何よりだ。
それから浄化石と魔力付与について話合いで決まった事をふたりに報告した。浄化石の事も驚いていたけど、ハイムくんは魔力付与の方が気になるらしい。
「私にも出来るでしょうか? 水属性(中)と火属性(小)を持っています」
「出来ると思うよ。今はシリング公爵が主体になって法務省と魔法省が検証することになっているから、結果が纏まったら試してみるといいよ」
「はい。出来るようになれば冒険者じゃなくても魔石が手に入るんですね 。魔物狩りが出来ない人には朗報だと思います」
シリング公爵が言っていた「新たな産業」というのはこのことを指していたのか。
魔力さえあれば老若男女問わず魔石が作れるようになれば、魔道具ももっと普及していくだろう。公爵には頑張ってもらわなければ…。
そして今後の私のスケジュールに浄化石作りの時間が追加された。量産するぞ!
それからは部屋に届けられる色々な宝石や石で暇を見ては浄化石を作った。手のひらに握って魔力を移せばいいだけなので、教会やギルドへの移動中にも出来る。魔力付与が終わると石が一瞬光るので分かりやすい。私は浄化が(中)なので大きな石には付与出来ないから数で頑張るしかない。
浄化以外の魔力付与も魔法省が中心になって動き出した。
色々と試した結果、属性によって付与できる石が違うことが判明した。そして、赤色系は火で青色系は水と言うように、色で向いている属性が判断できる事が分かった。検証がある程度済んだら講習会を開いて魔力付与も広めていくらしい。ただ、魔力付与した宝石は魔道具に使うと魔物から出た魔石と同じ様に割れてしまう。間違っても家宝の宝石とかに付与することが無い様にしないといけない。魔道具の燃料として考えるなら、手軽に手に入る石で付与が出来るものを探す方が良いだろう。
浄化魔法は色に関係なく付与できる石ならどれでも出来たけど、治癒魔法の付与はどの石にも全く出来なかった。そのうち出来る石が見つかるかもしれないし地道に試していこう。
98
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる
kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。
かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。
そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。
「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」
おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる