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閑話1 獣人達のつぶやき
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※ 視点が変わります。
◇ とある魔法師団員 ◇
今日は聖女様が召喚されて来る日だ。
神殿の召喚の間には陛下と殿下、それと公爵や宰相といった国の上層部が出迎えの為に揃っている。もちろん護衛もいるし、俺達みたいな魔法師団内の貴族で魔力の高い者も集められた。
聖女様が亡くなられてからこれで八回目の召喚で、やっと次代の聖女様が現れた。
でもそれだけじゃなくて、召喚の間には一緒にもう一人、男が召喚されてきていた。
聖女様は伝え聞いていた小柄なお姿と違い、この世界の女性と変わらない背格好だけど、何というか足が…、その、見え過ぎていてなんとも煽情的なお姿だった。年の若い者はそんな聖女様のお姿に目が釘付けになっていたが、俺は一緒に現れた男から目が離せなかった。
なんであんなに小さいんだ。
確かに男性なのだが、女性の聖女様よりも更に背が低く細い体をしている。声をかけられた陛下に答える声は低く、成人した男性なのがわかった。そしてその小さな体で後ろに聖女様を庇い陛下に対して臆することなく意見してみせた。
その光景を見て、あの男が欲しいという衝動が湧き上がるのを感じた。
自分の懐に入れて守りたい。あの小さな体は腕の中に綺麗に収まってしまうだろう。そうしたら存分に可愛がれる。獣人の本能があの男を手に入れたいと訴える。
そしてそう思ったのは俺だけじゃないのもわかっていた。
目の前で意見された陛下は爛々と目を光らせているし、宰相のシリング侯爵も鋭い眼光で見つめている。熊の獣人の護衛はでかい体を前のめりにして見ていて、今にも飛び出しそうだ。熊は特に小さいものに惹かれる性質だから尚更なのだろう。
この場所にいる力の強い者のほとんどが、聖女様と共に現れた男に注目していた。
そんな俺たちの想いが膨らむ中、小さく細い姿は護衛に囲まれ陛下と一緒に神殿を出て行こうとしている。後を追いたい衝動にかられどうしても目が追ってしまう。
その姿を食い入るように見つめる先で、まるで遮るように扉が閉じられた。
◇ 従者 ハイム ◇
私は今回とても珍しい役職に任命されました。
それは聖女様と一緒に召喚された男性の従者という役割です。その男性、フジサキ様は聖女様と同じ身分にあたるらしく、代々貴族家に仕えて来た我家に拝命され私が就く事になりました。
お部屋ではじめて対面したフジサキ様はとても小さくてびっくりしました。成人男性なのはわかるのに、小さい。確か34才と聞いていましたが、二十代…いえ、それよりも若く見えます。とにかく小さくて目が大きく可愛い顔立ちをされていて、力の強い獣人なら確実に本能を刺激されるだろうと思いました。護衛に任命されたレヴァンテ様も既に心を奪われているようで、見つめる目に熱が籠っています。
そして私のような平民にも分け隔てなく接してくれる、優しいお人柄なのも知ることが出来ました。
そんなフジサキ様はとても危なっかしい方でした。仕立屋の男が必要以上に体に触れていてもされるがままでレヴァンテ様が威嚇していましたし、簡単に肌を晒して着替えようとするので慌てて衝立の影に隠しました。見えてしまった上半身は白くほっそりとしていて物凄く目の毒でした。
(レヴァンテ様は食い入るように見ていました。)
その後も陛下の誘いにそれと気付かずに部屋に行き、聖女様が慌てて連れ出してきたり、ご自身の容姿を全く理解していない事がわかったり、レヴァンテ様に気安く触れたりと、こちらの常識を早く学んでいただかないと危険だとわかりました。
でも、事件は起きてしまった。フジサキ様が拉致されてしまい、救出した時には媚薬が使われていたと知らされました。レヴァンテ様の上着にくるまれて部屋に戻って来たフジサキ様は何も身に着けておらず、媚薬の影響で体が痺れているため浴室でレヴァンテ様が解毒剤が届くまでに処理を施すことになりました。
はじめは二人きりにするのを躊躇いましたが、レヴァンテ様の瞳には守れなかった後悔と犯人への怒りしかなかったのでお任せすることにしました。
途中、届いた解毒剤を持って浴室に入ったのですが、レヴァンテ様の腕に抱かれたフジサキ様は意識が朦朧としているようで、私に気付いていないようでした。
しばらくするとレヴァンテ様だけが出てきました。先程目にしたフジサキ様の様子とレヴァンテ様の表情の険しさが、最悪の事態が起きてしまった事を物語っています。
濡れてしまっている服を着替えるようにレヴァンテ様即して、私は浴室に様子を伺いに向かいました。
扉の前でしばらく待っていても物音ひとつしません。相当ショックを受けているのだと思います。ですが余り長く湯に浸かっているのも良くないので、声をかけると返事が返ってきて少しだけ安堵しました。
解毒剤が効いて浴室から出て来たフジサキ様の足取りは、おぼつかない様子で見ていて辛くなりました。ただでさえ小さいお身体なのに…、犯人は三人がかりで押さえつけていたそうです。あまりにも酷すぎる…!
***
お話をうかがった結果、誤解していたとわかり、本当に安堵しました。
フジサキ様はとても恥ずかしそうに何もなかったとお顔を真っ赤にして言っていて、嘘は感じられませんでした。
今回の事件の後、聖女様と色々お話されていた内容を私とレヴァンテ様にも話して下さり、協力して欲しいとお願いされました。命令すれば良い事をこちらにお願いされたのです。フジサキ様にとって一番身近な二人だと言われて本当に嬉しかった。
まだお仕えして間もないですが、出来る事なら生涯お仕えしたいお方です。
◇ とある魔法師団員 ◇
今日は聖女様が召喚されて来る日だ。
神殿の召喚の間には陛下と殿下、それと公爵や宰相といった国の上層部が出迎えの為に揃っている。もちろん護衛もいるし、俺達みたいな魔法師団内の貴族で魔力の高い者も集められた。
聖女様が亡くなられてからこれで八回目の召喚で、やっと次代の聖女様が現れた。
でもそれだけじゃなくて、召喚の間には一緒にもう一人、男が召喚されてきていた。
聖女様は伝え聞いていた小柄なお姿と違い、この世界の女性と変わらない背格好だけど、何というか足が…、その、見え過ぎていてなんとも煽情的なお姿だった。年の若い者はそんな聖女様のお姿に目が釘付けになっていたが、俺は一緒に現れた男から目が離せなかった。
なんであんなに小さいんだ。
確かに男性なのだが、女性の聖女様よりも更に背が低く細い体をしている。声をかけられた陛下に答える声は低く、成人した男性なのがわかった。そしてその小さな体で後ろに聖女様を庇い陛下に対して臆することなく意見してみせた。
その光景を見て、あの男が欲しいという衝動が湧き上がるのを感じた。
自分の懐に入れて守りたい。あの小さな体は腕の中に綺麗に収まってしまうだろう。そうしたら存分に可愛がれる。獣人の本能があの男を手に入れたいと訴える。
そしてそう思ったのは俺だけじゃないのもわかっていた。
目の前で意見された陛下は爛々と目を光らせているし、宰相のシリング侯爵も鋭い眼光で見つめている。熊の獣人の護衛はでかい体を前のめりにして見ていて、今にも飛び出しそうだ。熊は特に小さいものに惹かれる性質だから尚更なのだろう。
この場所にいる力の強い者のほとんどが、聖女様と共に現れた男に注目していた。
そんな俺たちの想いが膨らむ中、小さく細い姿は護衛に囲まれ陛下と一緒に神殿を出て行こうとしている。後を追いたい衝動にかられどうしても目が追ってしまう。
その姿を食い入るように見つめる先で、まるで遮るように扉が閉じられた。
◇ 従者 ハイム ◇
私は今回とても珍しい役職に任命されました。
それは聖女様と一緒に召喚された男性の従者という役割です。その男性、フジサキ様は聖女様と同じ身分にあたるらしく、代々貴族家に仕えて来た我家に拝命され私が就く事になりました。
お部屋ではじめて対面したフジサキ様はとても小さくてびっくりしました。成人男性なのはわかるのに、小さい。確か34才と聞いていましたが、二十代…いえ、それよりも若く見えます。とにかく小さくて目が大きく可愛い顔立ちをされていて、力の強い獣人なら確実に本能を刺激されるだろうと思いました。護衛に任命されたレヴァンテ様も既に心を奪われているようで、見つめる目に熱が籠っています。
そして私のような平民にも分け隔てなく接してくれる、優しいお人柄なのも知ることが出来ました。
そんなフジサキ様はとても危なっかしい方でした。仕立屋の男が必要以上に体に触れていてもされるがままでレヴァンテ様が威嚇していましたし、簡単に肌を晒して着替えようとするので慌てて衝立の影に隠しました。見えてしまった上半身は白くほっそりとしていて物凄く目の毒でした。
(レヴァンテ様は食い入るように見ていました。)
その後も陛下の誘いにそれと気付かずに部屋に行き、聖女様が慌てて連れ出してきたり、ご自身の容姿を全く理解していない事がわかったり、レヴァンテ様に気安く触れたりと、こちらの常識を早く学んでいただかないと危険だとわかりました。
でも、事件は起きてしまった。フジサキ様が拉致されてしまい、救出した時には媚薬が使われていたと知らされました。レヴァンテ様の上着にくるまれて部屋に戻って来たフジサキ様は何も身に着けておらず、媚薬の影響で体が痺れているため浴室でレヴァンテ様が解毒剤が届くまでに処理を施すことになりました。
はじめは二人きりにするのを躊躇いましたが、レヴァンテ様の瞳には守れなかった後悔と犯人への怒りしかなかったのでお任せすることにしました。
途中、届いた解毒剤を持って浴室に入ったのですが、レヴァンテ様の腕に抱かれたフジサキ様は意識が朦朧としているようで、私に気付いていないようでした。
しばらくするとレヴァンテ様だけが出てきました。先程目にしたフジサキ様の様子とレヴァンテ様の表情の険しさが、最悪の事態が起きてしまった事を物語っています。
濡れてしまっている服を着替えるようにレヴァンテ様即して、私は浴室に様子を伺いに向かいました。
扉の前でしばらく待っていても物音ひとつしません。相当ショックを受けているのだと思います。ですが余り長く湯に浸かっているのも良くないので、声をかけると返事が返ってきて少しだけ安堵しました。
解毒剤が効いて浴室から出て来たフジサキ様の足取りは、おぼつかない様子で見ていて辛くなりました。ただでさえ小さいお身体なのに…、犯人は三人がかりで押さえつけていたそうです。あまりにも酷すぎる…!
***
お話をうかがった結果、誤解していたとわかり、本当に安堵しました。
フジサキ様はとても恥ずかしそうに何もなかったとお顔を真っ赤にして言っていて、嘘は感じられませんでした。
今回の事件の後、聖女様と色々お話されていた内容を私とレヴァンテ様にも話して下さり、協力して欲しいとお願いされました。命令すれば良い事をこちらにお願いされたのです。フジサキ様にとって一番身近な二人だと言われて本当に嬉しかった。
まだお仕えして間もないですが、出来る事なら生涯お仕えしたいお方です。
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