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9 二回目の話合い
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打診したその日のうちに返事が来て、話合いは翌日である今日の午後からに決まった。これ程直ぐに返事が来たのは最重要案件だからだろう。場所は二人がこの世界に来て最初に話合いをした応接間で、私と樹里の後ろに護衛が立っている以外はあの時と同じ状態だ。もちろん妖精達も二人の肩や膝に座っている。
私達が席につくとまず陛下から謝罪された。
「此度の兵士による暴挙、本当にすまなかった。もう体は大丈夫なのか?」
「はい。なにもされていませんので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
私の返事に陛下と宰相、護衛達までが安堵した様子だった。まさか皆さん誤解していたんだろうか。だとしたら物凄くいたたまれないんですけど…。
私を襲った三人は尋問の後牢に入れられ、手助けした者も処罰が下る事になった。
これを機に聖女至上主義者の洗い出しも進めていると聞いている。
今回は話合いの内容が極秘事項ということで護衛達にも聞かせられない為、いつもより距離を取ってもらい消音の魔道具を使って行われる事になった。この魔道具は範囲内の音が漏れないだけでなく。口の動きも魔力で阻害して読み取れないようになっているらしい。しかも外の音は普通に聞こえるという優れものだ。
最初に樹里が声をあげた。
「浄化をしないと言った事は一旦は取り下げます。ですが、この後の話合いによってはどうなるかわかりません」
もはや脅しである。だがこう言うのは最初が肝心なのでまず宣告してもらった。
こっちとしては多勢に無勢なのだから手段は選んでいられない。陛下と殿下、シリング公爵が息をのむ。そこに更に私がたたみかける。
「私の授かった治癒能力も公表してもらいます。そうして頂ければ二人でそれぞれが得意な能力でこの国に貢献していくつもりです。妖精達も賛同してくれています。」
『 加護は、二人に授けた。どちらも、同じ 』
妖精も加勢してくれた。樹里が続く。
「知宏が襲われたことが信じられなくて…。加護を二人共授かったのに何でって…。そういうのが無くならないと聖女なんて無理です」
『 ジュリ、悲しいの? 王族、嫌い? 』
『 王族、いらない? 』
妖精の言葉に三人が目を見開き、殿下はソファーから身を乗り出している。王家と結んでいるという妖精との盟約まで危ういとなれば当然の反応だろう。
まさか妖精がそんなことを言うとは思っていなかったけれど、先制攻撃としての効果は絶大だろう。多分そのことに気付いていない樹里と妖精の会話は続く。
「嫌いじゃないよ。知宏のことを良く思っていない人がいることが悲しいの。どうしたら良いのかを話合うんだよ」
『 ジュリが悲しいの、良くない 』
『 トモヒロ、守るよ 』
樹里の「嫌いじゃない」という一言に前に座る三人が詰めていた息を吐く。
私の肩に座る妖精も話しかけてきた。
『 トモヒロも、悲しい? 』
「大丈夫。君たちが味方になってくれるから頑張れるよ」
追い詰めるばかりも良くないしそろそろ具体的な話をしないと先に進まない。今までの慣習を変えて貰う事になるだろうし、この世界の事は樹里と私にはわからないから国のトップの三人の意見を聞くためにこの場を設けてもらったのだ。
「この国が聖女様を大切に思っていることは理解しているつもりです。ですがこのままでは樹里も納得できないし、彼女にばかり負担がかかってしまうと感じました。そして今回の事件で私の存在を良く思っていない勢力がある事も知りました。私達二人がこの国で生きていくために、一緒に改善策を考えて頂きたいのです」
しばしの沈黙の後、陛下が口を開いた。
「わかった。二人の事は真実を公表すると約束する。そしてトモヒロの身の安全を保障出来る案を共に考えよう」
陛下の言葉で具体的な内容に話は進んだ。
二人の能力も公表することになるから、まずは聖女の能力が足りないと思われないようにしないといけない。
樹里は鑑定で(中)だが治癒も持っているし、私も浄化(中)を持っているので能力の偏りはあるが二人共浄化も治癒も授かっている。そこで今回は妖精からの加護を授かった者が二人も居るという事を強調していこうという事になった。
そうしたら樹里が張り切り出して…
「知宏も着飾ればいいんじゃないかな? 地味な恰好しているのがよくないんだよ!」
「それは良いですな。 見た目で侮る者もいますから効果がありそうですよ」
「ふむ、そうなると専属の仕立屋をつけねばならんな」
「え、ちょっと待ってください。着飾るって…」
樹里の発言にシリング公爵が賛同して、陛下まで乗って来てしまって止めるのが追いつかない。そうしたら殿下まで… 「身分の高いものは相応の装いでなければ下の者が戸惑うぞ」って言ってきたけど、その後に小声で「何故名前を呼ぶようになったのだ」なんて呟いていた。気になっていたのはそっちですか。
他に案はないだろうかとみんなが次の事を考えはじめてしまい、私の意見は聞いてもらえず専属の仕立屋がつくことが決定してしまったみたいだ。
何だかおかしな方向になっていないだろうか…?
私達が席につくとまず陛下から謝罪された。
「此度の兵士による暴挙、本当にすまなかった。もう体は大丈夫なのか?」
「はい。なにもされていませんので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
私の返事に陛下と宰相、護衛達までが安堵した様子だった。まさか皆さん誤解していたんだろうか。だとしたら物凄くいたたまれないんですけど…。
私を襲った三人は尋問の後牢に入れられ、手助けした者も処罰が下る事になった。
これを機に聖女至上主義者の洗い出しも進めていると聞いている。
今回は話合いの内容が極秘事項ということで護衛達にも聞かせられない為、いつもより距離を取ってもらい消音の魔道具を使って行われる事になった。この魔道具は範囲内の音が漏れないだけでなく。口の動きも魔力で阻害して読み取れないようになっているらしい。しかも外の音は普通に聞こえるという優れものだ。
最初に樹里が声をあげた。
「浄化をしないと言った事は一旦は取り下げます。ですが、この後の話合いによってはどうなるかわかりません」
もはや脅しである。だがこう言うのは最初が肝心なのでまず宣告してもらった。
こっちとしては多勢に無勢なのだから手段は選んでいられない。陛下と殿下、シリング公爵が息をのむ。そこに更に私がたたみかける。
「私の授かった治癒能力も公表してもらいます。そうして頂ければ二人でそれぞれが得意な能力でこの国に貢献していくつもりです。妖精達も賛同してくれています。」
『 加護は、二人に授けた。どちらも、同じ 』
妖精も加勢してくれた。樹里が続く。
「知宏が襲われたことが信じられなくて…。加護を二人共授かったのに何でって…。そういうのが無くならないと聖女なんて無理です」
『 ジュリ、悲しいの? 王族、嫌い? 』
『 王族、いらない? 』
妖精の言葉に三人が目を見開き、殿下はソファーから身を乗り出している。王家と結んでいるという妖精との盟約まで危ういとなれば当然の反応だろう。
まさか妖精がそんなことを言うとは思っていなかったけれど、先制攻撃としての効果は絶大だろう。多分そのことに気付いていない樹里と妖精の会話は続く。
「嫌いじゃないよ。知宏のことを良く思っていない人がいることが悲しいの。どうしたら良いのかを話合うんだよ」
『 ジュリが悲しいの、良くない 』
『 トモヒロ、守るよ 』
樹里の「嫌いじゃない」という一言に前に座る三人が詰めていた息を吐く。
私の肩に座る妖精も話しかけてきた。
『 トモヒロも、悲しい? 』
「大丈夫。君たちが味方になってくれるから頑張れるよ」
追い詰めるばかりも良くないしそろそろ具体的な話をしないと先に進まない。今までの慣習を変えて貰う事になるだろうし、この世界の事は樹里と私にはわからないから国のトップの三人の意見を聞くためにこの場を設けてもらったのだ。
「この国が聖女様を大切に思っていることは理解しているつもりです。ですがこのままでは樹里も納得できないし、彼女にばかり負担がかかってしまうと感じました。そして今回の事件で私の存在を良く思っていない勢力がある事も知りました。私達二人がこの国で生きていくために、一緒に改善策を考えて頂きたいのです」
しばしの沈黙の後、陛下が口を開いた。
「わかった。二人の事は真実を公表すると約束する。そしてトモヒロの身の安全を保障出来る案を共に考えよう」
陛下の言葉で具体的な内容に話は進んだ。
二人の能力も公表することになるから、まずは聖女の能力が足りないと思われないようにしないといけない。
樹里は鑑定で(中)だが治癒も持っているし、私も浄化(中)を持っているので能力の偏りはあるが二人共浄化も治癒も授かっている。そこで今回は妖精からの加護を授かった者が二人も居るという事を強調していこうという事になった。
そうしたら樹里が張り切り出して…
「知宏も着飾ればいいんじゃないかな? 地味な恰好しているのがよくないんだよ!」
「それは良いですな。 見た目で侮る者もいますから効果がありそうですよ」
「ふむ、そうなると専属の仕立屋をつけねばならんな」
「え、ちょっと待ってください。着飾るって…」
樹里の発言にシリング公爵が賛同して、陛下まで乗って来てしまって止めるのが追いつかない。そうしたら殿下まで… 「身分の高いものは相応の装いでなければ下の者が戸惑うぞ」って言ってきたけど、その後に小声で「何故名前を呼ぶようになったのだ」なんて呟いていた。気になっていたのはそっちですか。
他に案はないだろうかとみんなが次の事を考えはじめてしまい、私の意見は聞いてもらえず専属の仕立屋がつくことが決定してしまったみたいだ。
何だかおかしな方向になっていないだろうか…?
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