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第一章 はじめての
魔王胃散
しおりを挟む「え、何っ……!? いや、違っ……!!!」
理解が追いつかないのか、寝起きで上気した頬がスッ……と青ざめるサリュ。
「勇者貴様っ!!」
反対に、即座に意味を理解してサリュに飛び掛るペール――――――ちょ、不味いだろそれっ!!
「待てっ…………ぐぅっ!! ペール、早まるなっ!!」
サリュの首元に伸びた、ペールの鋭い爪。既の所で腕を伸ばし間に入り……最悪は免れた。
……魔王ボディのこの腕に、切り傷が出来てしまったけども。
「何故です、魔王様っ!!」
「いや、どー見ても罠でしょ……」
サリュが祖国を裏切っていたなら仲間割れに……そうでないなら、僕の背後は……隙だらけだった。
「チッ……何故、魔物が……人間の、味方をする!? 何故、勇者と魔王が……手を組む!?」
血反吐を吐きながら、叫ぶようにサリュへ語り掛ける捕虜。
――――――舐めていた。武を生業にする人間の頭の良さを……軍を率いる立場の、思考能力を。
目の前の不測の事態に動揺せず、一瞬で……一言で、場を錯乱させられるのか……。
「そうやって、私を道具みたいに……使うからです、アレット少佐」
しょ、少佐……!? 隊長格って少佐……!? 偉いんじゃないの??
こんな風に敵元に飛び込んで来ないでしょ、普通……。
「貴様っ!! 恩を忘れたか!?」
「……日頃の恨みで、掻き……消され、ました」
真っ赤な顔で怒鳴り散らす捕虜……アレットという人。それに対して、萎縮して……声が震えているサリュ。
二人の関係は……一目瞭然で。若かった頃、怖いオーナーに萎縮していた自分にそっくりで…………見ていて辛くて。
「ねぇサリュ……この人に酷い事しても、良いよね?」
「全力で」
だから、守らなきゃ……そう思って二人の間に立ち、サリュに聞けば即答してきて……ちょっと笑いそうになった。
――――――だけど、サリュを見るペールの目は……未だ、厳しいままで。
ちっ……ただでさえ、元は敵同士のせいで難しい問題なのに……ややこしくしやがってよぉ……。
モヤモヤと……サリュへの態度にイライラが合わさって……凄く不快だよ、この人。
「勇者、貴様っ――――ゴ、ゴホッ……な、んだその態度はぁ!!」
血反吐を吐きながらもサリュへ向かって叫び続けるアレット。
このメンタルの強さは何処から来てるのだろう……?
「なんでそんな強気なの?」
「ふんっ……私が、勝者だからだ、下等生物」
「わけわからん」
綺麗な金髪を、汗でへばり付かせながらのドヤ顔は……こう、ピキッとくるものがある。
はぁ……話しても無駄だし、さっさとヤろう。スレット方も気になる…………し…………?
――――あぁ……そうか。
僕にスレット達がいるように……この人も部下がいる訳で。
少数を連れて忍び込んできた……はず。スレット側にも人員が居るはずなんだから。
結局……この人をどうこうした所で、所属している国がいる訳で……大局的に見れば、向こうの国の優勢に思える。まだまだ戦力がある訳だし。
この人からすれば、魔王周辺に護衛として戦力が集まってるように見えるだろうし。
でもまぁそれは……僕が来る前の話なんだよね。
「残念だったね。僕の優秀な部下が、きっと君の部下達を……全滅させてるよ、今頃」
まさか一人で迎撃に向かってるとは思うまいよ。
「はぁ? ククッ……どうやら、頭の方も……弱いみたいだな? 自分の国の状況も、見えんのか?」
……なんでこんな挑発的な話し方しかしないんだろう……? 軍ってそういうものなのかな?
「……今、自分の置かれてる状況わかってる?」
「フッ……生憎、ウチの奴らも、優秀でな。小隊一つ程度、捕縛した所で……つけ上がるなよ、魔王」
「む、むむ……」
ニヤッと不敵に笑われると……まだ、何か隠してる手があるんじゃないと勘繰ってしまう。
ダメだ……平和に生きていた僕じゃ、どうしようも出来ないや。
「……まぁ良いや。僕はやれる事をやるだけだよ」
「ククッ……逃げるの、か? 強者に勝てぬと、尻尾を巻くのか魔王っ……!!」
「うるさいなぁ……」
早く黙らせないとストレスがヤバい。胃がムカムカしてくるよこの体でも…………ん? ストレス……ストレス、かぁ。
ストレスには甘いものが良いって言うよね? この魔王産の砂糖なら……どれくらい効果出るんだろう?
試してみるか。
リラックス……鎮静……そんな願いを込めて、指先から角砂糖を一つ。
ガリッ……と噛めば、ジュワッ……と広がり、唾液と共に喉を通って胃の奥へ。
あぁ……全身に染み渡るぅ……。
「……何を、している……?」
「うーん……秘密」
怪訝そうなアレットの顔を見ても……何とも思わない。
スッ……と頭が冴えたような、モヤモヤが解けてクリアになったような……そんな感覚。漢方みたい。
「わぁお……我ながらすげぇ……」
寝起きのような……全部がリセットされたような不思議な気持ち。
「珍妙な奴め……」
それに……一つ、気付けた事がある。
初めて砂糖を作った時……魔法に興味を持っていた。
皆に配る飴を作る時……皆が強くなるように願った。
今は……ストレスを緩和したいと祈りを込めた。
つまり……つまり――――――この砂糖は……僕の意志を反映しているんじゃないか?
僕の願いが……砂糖に……!?
「はは……ははは……ははははっ!!!」
「ヒッ……」
ゾクゾクしてきた……ワクワク、してきた……!! 何でも出来るじゃないか……!!
例えば……僕の砂糖を使ったケーキの土台生地。
その生地の上にムースを乗せて、生地で挟んで……その上には果物をピューレ状にして、砂糖で味付けしてゼラチンで固めたクーリーを乗せて、生地を乗せて、層になったケーキを作って。
仕上げに生クリームを絞ったり、ソースを掛けたり、砂糖漬けのフルーツだって、キャラメリゼしたナッツを乗っけたって……何だって良い。
そうやって……何パーツも、僕の砂糖を使ったケーキを作れば?
全部の砂糖に、別々に意志を込めれば――――一体、どうなる?
パーツ事はケーキじゃない。全部合わさって……一つのケーキなんだよ。
だから……何重にも強くなれと願ったケーキは……何をもたらす?
砂糖を舐めだけじゃ変化の無かったこの体。もし、そんなケーキを食べれば――――――どう、変わる……!?
「ふふ、ふふふ……さぁ、実験台になるといい……人間よ……」
寝そべっていたアレットの顔を掴み上げ、四つん這いにさせる。
「な、何をするつもり――――むぐっ!!」
あぁ……一度強くなった四天王も……国民も、更なる強さが手に入るかも知れない。
この力、弱くなんてない……無限の可能性を秘めてやがる……!!
「ほら……口を開けよ」
「あぅ……は、離せ……!!」
この地を発展させて……色んな材料を、お菓子作りに必要な道具を作れるようにならなきゃいけないなぁ……!!
この砂糖と、この世界の材料と……僕の技術。それが合わさった時……むふ、むふふふ……。
「手始めに……そうだな――――――お前を、お菓子無しじゃ生きれない体にしてやろう!!」
「はぁ? ぐっ……!? オエッ……!! カハッ!!」
想定外の言葉だったのか、呆れて開いた口。その中に人差し指をグイッと突っ込み、砂糖を口内に直接生成。
甘いものが大好きになって……毎日食べなきゃ可笑しくなっちゃうように、願いを込めて。
「ゴホッ……や、やめ……!! ンンッ!! ゴブッ……!!」
ザラザラと、口の横から零れ落ちる砂糖。勿体ないが……後学の為にも心を鬼にしないと。
「ほら……溶けるだろう? 厄介だろう? 飲み込むしかないだろう!?」
「うぅ……う、うぅっ……」
苦しさからか、涙目になってるアレット。止めたいけど……止める訳には、いかない……!!
「ほら……さっさと飲み込んで楽になると良い」
僕の言葉を皮切りに、ゴクリゴクリ……と静かに嚥下するアレット。漸く諦めたか。
飲み込んだのを確認したから、砂糖の生成を止めて彼女の顔から手を離す。
力無く、床に零れ落ちて山になった砂糖の上にドサッと倒れ、顔を付けるアレット。
すると途端にジュワジュワ……と砂糖が溶け始めた。
「ふむ……流石にプライドが傷付い「ふへっ……へへっ……あまぁい……あまぁい……」た……んじゃないんだ…………えぇ……」
…………涙で溶けてるんじゃない……舐めてるんだ、この人……。
「うわぁ……ドン引き」
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