夏の日の出会いと別れ~霊よりも怖いもの、それは人~

赤羽こうじ

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二人きりの旅行②

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「ふふふ、ごめんごめん。わざと変な言い方してみたんだけど、わかり易いぐらい顔に出てたよ」

「えっ、何?嘘?冗談とか?」

「ははは、流石にそんな嘘はつかないって。ごめんごめん、実はある用事があってそのリゾートホテルに行かなきゃいけないの。別に一人で行ってもいいんだけど、幸太君も良かったら一緒にどうかなって思ってさ。あっ、お金は心配しないで、色々あって無料《タダ》で泊まれるから。面倒臭いから行きたくないって言うんなら仕方ないから一人で行くけどさ」

 そう言って叶は俯き寂しそうな顔を見せる。そんな叶の仕草がわざとだと分かりつつも幸太は思わず慌てて否定する。

「いやいや、面倒臭い訳ないって。行くから、是非一緒に行きたいです。本当に無料《タダ》でいいの?」

「ふふ、大丈夫色々ツテがあってね。じゃあ一緒に行こうか。あっ、でもエッチな事しないでよ。まだそういう仲じゃないんだから」

「えっ……あっ、うん」

 あらためて釘を刺され、幸太は思わず気の抜けた様な返事を返した。そんな幸太を叶が冷たく見つめる。

「……やっぱり一人で行こう。幸太君と一緒なのが一番危険な気がするし」

「ああちょっとごめん、嘘、嘘です。何もしないから」

「ええ、そうなんだ、何もしてくれないんだ。ふ~ん」

 何が正解なんだよ――!?

 含み笑いを見せる叶に対して、幸太が心の中で叫んでいた。そんな幸太の気持ちが伝わったのか叶は「ははは」と楽しそうに笑っていた。

 その後二人が戻ると、楓と咲良が呆れた様な表情を浮かべて海の方を見つめていた。

「どうしたんですか?」

 不思議に思った叶が問い掛けると、楓が鼻で笑いながら海岸にいる人物を指さした。

「あれ心霊系の動画配信者だって。今どき霊だなんだって非科学的よね」

 霊を否定する楓を見て叶は苦笑いを浮かべながら頷いていた。
『一般的に考えればそりゃそうよね。受け入れる幸太君が変わってるのかな?』
 幸太にちらりと視線をやり、叶は口角を上げた後、楓に問い掛ける。

「まぁそうですよね。ただ行方不明になった方が実際いるんですよね?」

「ああ、そうみたいね。私は全然知らないんだけどさ」

「ああそうなんですか」

 叶はそれ以上何も言う事なく笑みを浮かべて仕事に戻った。

 数日後。
 約束通り二人は電車に乗り、隣町へ向かった。隣町は幸太達が住んでいる街よりも少し栄えており、テーマパークやショッピングモールなんかもあった。それ故に幸太も度々この街を訪れてはいた。

「へぇ、結構栄えてるんだ。幸太君は来た事あるの?」

 駅から降り立つなり叶が笑顔で問い掛けると、幸太は少し戸惑いながら頷く。

「うんまぁね。ほら俺達が住んでる所より都会だから買い物とか遊びに来る事はあるよ」

「ふ~ん、なるほどね」

 そんな幸太の態度を見て叶は頷くと、幸太の腕をそっと掴み寄り添った。

「まぁ君がどんな思い出があるのか知らないけど、せっかく来たんだから二人で楽しもうよ」

 そう言って叶が屈託のない笑顔を向けると幸太も思わず笑みがこぼれる。
 駅から目的のリゾートホテルまでは歩けば三十分以上はかかる道のりだった。それでも二人は街を散策しながら歩いて行く。

「ねぇ、お腹減らない?」

「あ、俺もちょうどそれ聞こうかと思ってた所。何食べたい?」

「うん、そうだな、なんでもいいんだけど……あっ、そこにあるレストランいい感じじゃない?そこにしよう」

 そう言って叶は幸太の背後に見えたレストランを指差した。ちょうどお昼時だった為店内は満席だったがテラス席が空いてるという事で、二人は店外に設置されたテラス席へと案内される。

「もう少し早く来るべきだったかな?空調の効いた店内でゆっくり食べたかったんだけどな」

 叶が眉尻を下げて笑みを見せる。確かに空調の効いた店内は快適に思えたが叶と二人でいれる事が嬉しかった幸太は笑顔で頭《かぶり》を振った。

「いやまぁ、店内も確かにいいけど、テラス席で叶さんとご飯食べるのもなんか旅行感があっていいんじゃないかな?」

「あは、確かにそう言われればそんな気もするね。まぁせっかくだし楽しもうか」

 そう言って叶も破顔する。その後二人は食事をしながら歓談を楽しんだ。他愛もない話をする中で、疑問に思っていた事を尋ねる。

「叶さん、あの、今から行くリゾートホテルに行く用事って何ですか?」

 幸太の質問を受け、叶は含みのある笑みを浮かべる。
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