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第三章『画廊寄武等とYouしょく!』
76.炎の中で
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――そうか……。成仏し始めた直前のあの時、あの子は生前の記憶を取り戻していたのか。
夢の中で化け物じみた姿になっていた僕(化けタケト)は、残留思念を読み取る魔法とやらで思考の中に流れてきた記憶を見ながらそう思ったが、そんな幻覚のように思考に流れていた映像はそこで途切れた。
「……え?」
ふと気付けば辺りを取り囲んでいた炎は勢いを増していた。夢の中の僕(略して〝夢タケト〟)は、着物姿の少女とブラの引っ張り合い(なんだそりゃ?)をしている姿勢のままだった。
そんな引っ張り合いを演じていた少女は呆然とした様子で、力なくそのブラから手を離しながら呟く。
「これが……人として大切なもの……」
同じくその記憶を眺めていた、というよりは本来その子が編み出した術によって見えていた映像だったので、そのスイッチのオンオフの権利はこちらには無いのだ。
「つまり……こういったたわいもない思い出を持っているのが人間ということ……いいえ、こんなふうに誰かに対して特別な想いを抱くのが人間というものなのでしょう……だとすれば、確かにそれは今のわたしには無い物でしょう……」
「いや、あの……何だか余計な設定のせいで変な誤解をさせて申し訳ないんだが……」
虚ろな表情でそう呟いている着物少女の様子に、化けタケトは少々困惑しながら言葉を掛けたが、相手はそんな言葉も耳には入っていない様子で立ちつくしている。
――何やら大きな勘違いをしているようだが、こんな展開になるきっかけとなった『人として持って居るべき大切なもの』がうんたらかんたらっていう話の元は『ブラを持たざる者は人にあらず』っていう、そんな特殊な選民思想を持ってる奴の戯言だから気にしないでいいんだが……。
そんなことを思いながら、さてどうやってそれを説明しようかと考えていると、目の前の少女がふらりと揺らいだかと思うとそのままこちらへ倒れ込んできた。
「お……おい、どうしたんだ?……っと?」
化けタケトは条件反射で体をかがめてそれを受け止めようとして、そのまま膝をつくのだが、咄嗟に差し伸べようとした左手が大きな三本の爪の刃である事に気付いて、慌てて右手に切り替える。
とはいっても、かろうじて人の手を模してはいるが、固い外骨格で覆われていたため、多少難儀しながらも、なんとかその体を支えた。
「おい、どうしたんだ? まさか、色々な術を使ったせいでMP(マジックパワー的なもの)を使い果たしたっていうんじゃないだろうな?」
意識が朦朧とした様子でぐったりとしている着物少女をどうにか膝の上に乗せた化けタケトはそんな声を掛けてからふと気付く。
「いや……もしかして周りの温度が上がっている!?」
化けタケトは外骨格で覆われているため気付くことは無かったが、これだけ炎で囲まれていれば普通の和服姿でしかな彼女からすればかなりの熱さだろうと思える。
「お、おい、大丈夫か!?」
そう問い掛けるが、ぐったりとした様子の彼女に反応は無かった。
普段なら『瞬間冷却の魔法!』とか言って都合の良い魔法を編み出して対応したのだろうが、幽霊の少女の残留思念から再生されていた脳内映像に夢中なあまり、そんな周囲の状況に気付かずに、脱水症状などの異変に気付くのが遅れてしまっていたようだった。
「くっ、とりあえず周りの炎を消すか……」
そう考えた化けタケトだったが、すぐに呆然となる。
「こ、これ……どうやったら消せるんだ? てか、元の姿に戻ることすら出来ないだって!?」
いくら念じても、一旦燃え出していた周囲の炎は制御できない。それどころか、元の夢タケトの姿に戻ることも出来ないようだった。
「なんてこった……どっちも不可逆ってわけなのか。ならとりあえず炎の届かない上空に飛ぶしかないか……」
そう思ったが、膝に乗せた彼女をかかえ直すのは無理そうだった。
今の彼、化けタケトの姿はあまりにも戦いに特化されている。敵を貫くための三本爪と化している左手は元より、かろうじて人の手の形をしている右手も、その華奢な少女の体を掴むには中途半端な大きさだった。
「今はうまいこと膝に乗っている状態だが、支えている手を離したら滑り落ちてしまうだろうな……」
それこそ今の彼の体の可動域はロボットのおもちゃみたいなものなので、実際そうして膝立ちになっている姿勢を取っているのですらかなりの無理をしている状態だ。
もしそうなってしまえば、一旦地面に倒れてしまった彼女を持ち上げるための姿勢を取れるかどうかも怪しい。
今はかろうじて無事だが、もしもまごついてしまえばいつその炎が迫って来るか分からない、そうなってしまえば彼女は一巻の終わりだろう。
「くっ、どうすればいいっていうんだ……おい起きてくれ。そしてちょっとだけこの体にしがみ付くなりしてくれれば、君を連れてここから飛んで逃げられる」
化けタケトは必死でそう呼びかけるが、その少女はぐったりしたまま目を開ける様子は無いままだった。
夢の中で化け物じみた姿になっていた僕(化けタケト)は、残留思念を読み取る魔法とやらで思考の中に流れてきた記憶を見ながらそう思ったが、そんな幻覚のように思考に流れていた映像はそこで途切れた。
「……え?」
ふと気付けば辺りを取り囲んでいた炎は勢いを増していた。夢の中の僕(略して〝夢タケト〟)は、着物姿の少女とブラの引っ張り合い(なんだそりゃ?)をしている姿勢のままだった。
そんな引っ張り合いを演じていた少女は呆然とした様子で、力なくそのブラから手を離しながら呟く。
「これが……人として大切なもの……」
同じくその記憶を眺めていた、というよりは本来その子が編み出した術によって見えていた映像だったので、そのスイッチのオンオフの権利はこちらには無いのだ。
「つまり……こういったたわいもない思い出を持っているのが人間ということ……いいえ、こんなふうに誰かに対して特別な想いを抱くのが人間というものなのでしょう……だとすれば、確かにそれは今のわたしには無い物でしょう……」
「いや、あの……何だか余計な設定のせいで変な誤解をさせて申し訳ないんだが……」
虚ろな表情でそう呟いている着物少女の様子に、化けタケトは少々困惑しながら言葉を掛けたが、相手はそんな言葉も耳には入っていない様子で立ちつくしている。
――何やら大きな勘違いをしているようだが、こんな展開になるきっかけとなった『人として持って居るべき大切なもの』がうんたらかんたらっていう話の元は『ブラを持たざる者は人にあらず』っていう、そんな特殊な選民思想を持ってる奴の戯言だから気にしないでいいんだが……。
そんなことを思いながら、さてどうやってそれを説明しようかと考えていると、目の前の少女がふらりと揺らいだかと思うとそのままこちらへ倒れ込んできた。
「お……おい、どうしたんだ?……っと?」
化けタケトは条件反射で体をかがめてそれを受け止めようとして、そのまま膝をつくのだが、咄嗟に差し伸べようとした左手が大きな三本の爪の刃である事に気付いて、慌てて右手に切り替える。
とはいっても、かろうじて人の手を模してはいるが、固い外骨格で覆われていたため、多少難儀しながらも、なんとかその体を支えた。
「おい、どうしたんだ? まさか、色々な術を使ったせいでMP(マジックパワー的なもの)を使い果たしたっていうんじゃないだろうな?」
意識が朦朧とした様子でぐったりとしている着物少女をどうにか膝の上に乗せた化けタケトはそんな声を掛けてからふと気付く。
「いや……もしかして周りの温度が上がっている!?」
化けタケトは外骨格で覆われているため気付くことは無かったが、これだけ炎で囲まれていれば普通の和服姿でしかな彼女からすればかなりの熱さだろうと思える。
「お、おい、大丈夫か!?」
そう問い掛けるが、ぐったりとした様子の彼女に反応は無かった。
普段なら『瞬間冷却の魔法!』とか言って都合の良い魔法を編み出して対応したのだろうが、幽霊の少女の残留思念から再生されていた脳内映像に夢中なあまり、そんな周囲の状況に気付かずに、脱水症状などの異変に気付くのが遅れてしまっていたようだった。
「くっ、とりあえず周りの炎を消すか……」
そう考えた化けタケトだったが、すぐに呆然となる。
「こ、これ……どうやったら消せるんだ? てか、元の姿に戻ることすら出来ないだって!?」
いくら念じても、一旦燃え出していた周囲の炎は制御できない。それどころか、元の夢タケトの姿に戻ることも出来ないようだった。
「なんてこった……どっちも不可逆ってわけなのか。ならとりあえず炎の届かない上空に飛ぶしかないか……」
そう思ったが、膝に乗せた彼女をかかえ直すのは無理そうだった。
今の彼、化けタケトの姿はあまりにも戦いに特化されている。敵を貫くための三本爪と化している左手は元より、かろうじて人の手の形をしている右手も、その華奢な少女の体を掴むには中途半端な大きさだった。
「今はうまいこと膝に乗っている状態だが、支えている手を離したら滑り落ちてしまうだろうな……」
それこそ今の彼の体の可動域はロボットのおもちゃみたいなものなので、実際そうして膝立ちになっている姿勢を取っているのですらかなりの無理をしている状態だ。
もしそうなってしまえば、一旦地面に倒れてしまった彼女を持ち上げるための姿勢を取れるかどうかも怪しい。
今はかろうじて無事だが、もしもまごついてしまえばいつその炎が迫って来るか分からない、そうなってしまえば彼女は一巻の終わりだろう。
「くっ、どうすればいいっていうんだ……おい起きてくれ。そしてちょっとだけこの体にしがみ付くなりしてくれれば、君を連れてここから飛んで逃げられる」
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