画廊寄武等とyouれい!

須江まさのり

文字の大きさ
78 / 103
第三章『画廊寄武等とYouしょく!』

75.とある幽霊の記憶

しおりを挟む

「画廊寄くん、元気にしてる?」

 その家に行ったわたしは、しつこいくらい呼び鈴を押し続けて、ようやく玄関のドアを開けて顔を見せた彼に対し、けっこう勇気を振り絞ってそう言ったのだけれど。

「まあ、病気とかしてるわけじゃないので健康ではあるけれど……。えーと、何でしょう?」

 結局、そんな素気の無い対応をされてしまった。

「あ、あの、画廊寄くん、最近学校来てないでしょ? だから、担任の髪永かみなが先生にプリント届けるように頼まれて……。ほら、わたし達って小学生からずっと同じクラスだったじゃない、そのよしみで」

 わたしは照れと緊張で顔が火照っているのが恥ずかしくて、矢継ぎ早に言ったのだけれど……。

「え、ああそうなんだ。どうもご苦労様です」

 そんなそっけない返事を返されてしまい、さらに恥ずかしくなってしまったわたしは、

「いいのいいの。忘れて忘れて! それじゃ」

 と、久しぶりに出た昔の口癖を残して逃げるようにその場から立ち去っていた。


 そんな帰り道……。

 完全にわたしの存在を忘れていた相手の様子に、『それならわたしのことを覚えてくれるまで続けてやろうじゃないの!』と、なんだか妙な意地が湧きて、それからというもの週2~3回くらいのペースでプリントを届け続けたのだけれど……。

「ええと……どちら様でしょう?」

「ええ? えーと……」

 と、毎回そんな感じで、いつも同じような会話を繰り返すだけだった……。

 それでもめげずに足蹴く通い続けているとやがて、ようやくわたしの顔を見ても『この人誰だろう?』という顔をしなくなってくれるようにはなっていった。

 それでも彼のそっけない態度は変わらなかったけど……。

「どなたかは存じあげませんがいつもありがとうございます」

 今日はそうきたか……じゃあこっちもそれに合わせて……。

「いえいえ、礼を言われるようなことでは。こちらは名乗るほどのものではありませんし」

「いや、別に名前は聞いてないっすけど……」

 いやなにそれ……という感じではあったけど、だんだんとコミュニケーションが図れるようになってきた、そんなある日。

 わたしはたまたま見付けた雑誌に載っていた『イメチェンして、男子の気を引こう』なんて、そんな記事を真に受けてしまったわたしは、髪型を変えて彼の家に行ってみた……。

 とはいえ、いきなり髪を切ってショートカットにするなんて度胸も無かったので、出来たのは髪の毛を結ぶくらいだったんだけど……。

 で、その結果。

「……あれ? 今日は違う人なんだ」

 そんな、残念な返答をされてしまった……。

 どうやら、今まで彼は、わたしの顔を認識していたわけではなく、髪型で判別していたらしいという、残念な事実を突きつけられる結果となっていた……。

 わたしはまた恥ずかしくなって、慌ててしまう。

「え? ああ、ちょっと気分を変えようと思って髪型変えただけだよ! 髪を縛ってみたんだけれど、に、似合ってない!?」

「え? あ! え、えーと……」

 という感じで困っている彼に、わたしは……。

「あ、あはは、似合ってないよね! ごめん、今日の事は忘れて、はいこれ、いつもの!!」

 と、手に持っていたプリントを押し付けるように渡しながら、さっさとその場を後にしていた。

 その帰り道……、
「あれは怒ってよかったかも……。ってか女の子が髪型変えた時には普通ウソでも褒めるべきなんじゃないの?」
なんて、今更という感じで怒りを覚えかけたんだけど……。

『……あれ? 今日は違う人なんだ?』

 と、なんだかちょっぴりガッカリしていたように見えた彼の態度を思い出して……。

 それだけのことが、なんとなく嬉しく感じた……。


**

 そんな帰り道わたしは思う。

 そもそも、あの人を思い通りにする方法なんて、どの本のマニュアルにも無いのだ。

 それこそ神様とかで有ったとしても、彼の行動を予測したり思い通りに操り続けたりなんていうは無理だろうと思う。というか、あの人の思考回路は一般男子どころか人とかですらなく、それとはまったく違う画廊寄武等という別の生き物なのだ。と。

――うん、彼のことを理解しようと思ったら、心で……いや、魂で感じ取らなきゃいけないんだ。

 そう思い立った日から、わたしは彼のことが少しずつ理解できるようになっていく気がした。

 まあ、それは、単なる思い込みだったのかもしれないけれど……。

「はい、どちらさんでしょう?」

 と、明らかにわたしを認識していながらもそんなそっけない対応を返す彼に対して、怒りや戸惑いを感じることは無くなっていった。


**


 そのあたりで、わたしの記憶は終わっていました。たぶん、その頃に……わたしは命を落としてしまったのでしょう。

 あれ? これって恋のお話だったのでしょうか? なんだかちょっと違う気もしてならないのでした……。

「会話の途中で無言にならないでくれよ。えーと……『わたしだって……』の続きは何だい?」

 そんな心配そうな声でふと我に返ると目の前にはその画廊寄くんの顔があって、わたしは思いっきり動揺してしまうのでした。

 ああ今のわたしは幽霊なんだ……。

 そんなことを思いながらわたしは彼に答えるのでした。

「あ……。すいません、少しばかり考え事をしてしまっていたようで……」

「そうか、何はともあれ大丈夫そうだな」

****

 流れてきたその記憶を見ていた中で彼女の目に映っていたのは、昨日から着替えもせずに着続けている赤いシャツを着ていた僕の姿だった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...