上 下
2 / 241
第1章

第2話 説明

しおりを挟む
 意味が分からないのですが、どうやら私達はお城の中にいるらしいです。槍を持ち、甲冑を着込んだ兵士?がこのホール?の外周を囲んでいて、おっさんや高校生達がいる周りを神官服?を着た男女が囲んでいるんだよね。これって、もしかして?・・・

「成功ね!」

「今回は人数通りだな」

 等と聞こえるが、1人の男子生徒が叫んだ。

「異世界転移キターーー!」

 なるほどねと思ったけど、先程の女子高生に抱き着かれている。
 怖かったのか震えており、周りも騒然となっていて、女生徒の何人かの泣き声が聞こえて来る。
 俺は周りをそれとなく確認し、抱き着いている女生徒に声を掛けた。

「おっさんは大丈夫そうだけど、君は大丈夫?」

 俺の声が何か違う?違和感があったが、女の子も落ち着いたようで返答してきた。

「あれっ!?さっきぶつかったおじさんじゃない?」

「えっ!?さっきぶつかっちゃったおっさんだよ?」

「うん。荷物や服はそうなんだけど、まさかおじさんって若返ったりした?」

 そうして彼女は胸元から出した手鏡を俺に向けてきた。

 「えっ?何これ?おっさんじゃなく、若い男の子が見えるんですけど?」

 俺がそう唸った次の瞬間、ズボンがずり落ちた。

「キャッ!お兄さんのズボンが!」

 俺は慌ててズボンをたくし上げたが、ユルユルだった。
 取り敢えずベルトを1番緩いところから、1番きついところに絞ったところ何とかなったが、ベルトが長いので後で少しカットしたい。歩くのはなんとか大丈夫そうだが、それでも少し緩い。

「ねぇ君、おっさんはどう見える?」

「さっきのおじさんに似た、私と同い歳位の男の子・・・かな?」

「やっぱりそうだよね・・・おっさん、お兄さんになった?」

「やっぱりさっきのおじさんですよね?」

「そうだね。ちぃとおかしな事態になっているから、おじさん改め、お兄さんから離れないで。えっと、俺は杉浦 栃朗です」

「あっはい。私は宮條 瑞希(くじょう みずき)です。おじさんじゃなくて、お兄さん?それとも栃朗さん?どちらかでいいですか?随分落ち着いているんですね?」

 彼女は目が細く、一見すると冷たく見えるクールビューティーだ。良い所のお嬢さん?なのかな?こんな美少女はテレビや雑誌でしか見た事がないぞ!

「栃朗で良いよ。じゃあ瑞希さんで良いかな?年の功でね。人間慌てたらそこで終わりなんだよ。どうも悪意を感じられるんだ。表情とかにも滲み出ているしね。一部の者には憐れみの表情が見られるから、この後碌な事が無いと思うんだ。えっと、この中に恋人とかいるのかい?」

「いえ。特定の人はずっといないですけど?」

「うん。君ともう1人位なら何とかしたいと思ってね。それ以上は無理かな。多少武術に心得が有るけど、悪いけど、他の人の事に迄は手が回らないよ。君だけなら何とかなるかもだけど」

 彼女はおっさんの腕をギュッと握ってきたよ。
 彼女はセーラー服なので、走ったりするのは無理そうだ。武器になりそうなのは・・・三脚位しかないか。
 カーボン製の三脚で雲台が中々重いが、武器として持つとしたら雲台側かな。

 兵士達は高校生達が落ち着くのを待っていたようで、高校生達を取り囲んでいる中の誰かが大きな声で喋り出した。

 壇上に何人かいて、その中の1人のおっさんが仰々しく話し始めたのだ。

「皆様ご静粛に!ようこそアーリバン王国へ。これから王女様より説明がございます」

「瑞希さん、目立たないように観察するんだ。どうも胡散臭いな」

 1人の若い女性が1歩前に出た。
 ドレスを纏い、いかにも高貴な感じがする。かなり整った顔立ちで、見事な金髪のロングヘアーだ。
 その姿を見た一部の高校生達は浮足立っており、何人かが唸っていた。
 ほう、瑞希ちゃんと良い勝負が出来る位の顔面偏差値だな。つまり美人さんだ。

「すげぇ!お姫様だ!」

「わー!綺麗なひとね!」

「胸デケエェ!、てかっ、谷間が見えそうだぞ!」

「ポロリしないかな?」

 王女は片手を上げた。

「この度は突然の召喚に応じて頂きありがとうございます!私はアーリバン王国第2王女のカーラです」

 いや、応じていないよ?こちらの意思に反して連れて来たんだよ?誘拐だよ?と俺は心の中で唸るが、瑞希ちゃんは俺の腕をギュッと掴む。
 ちょっと腕が痛いかなー!ってそれだけ不安なんだよね?何か守ってあげたくなる!

「皆様方は我々が召喚致しました。分かりやすく言いますと、異世界召喚を致しました。先ずはこちらの話を聞いて頂きたいですわ。疑問を感じられる事の殆どをお話致します!私が話した後、時間を取って質問をお聞き致しますので、先ずはそのまま聞いてください」

 皆を一度見渡した。

「先ずこの世界での勇者様方の死は、本当の死では有りません。死んでしまった場合、霧散して元の世界の、そう、召喚された時点に戻ります。最後の者が戻った時点で全員夢でも見ていたのかといった感じになります。その時は混乱していますが、こちらの世界で過ごした記憶はちゃんと有ります。最終目的は魔王討伐です。又はそれに類似する災厄への対処。これよりスキル付与の儀式にて皆様には素質に合った特殊なスキルを2つ選んで頂きます。志し半ばで死んだ場合やリタイアして返送の儀にて送り返す方は、そのスキルのうち、片方を持って帰る事が可能です。次に魔王討伐時に戦闘に参加せずに生き延びた場合、返送の儀にて送り返しますが、スキルを2つ共持ち帰る事が可能です。そして討伐に貢献の有った方は、それ以外のスキルのうち、新たに取得したスキルを1つ追加で持ち帰る事が可能です。成長すれば新たなスキルを得られます。これが皆様へのお詫びと報酬です。物理的な物は皆様方が召喚された時にお待ちの荷物のままで戻るので、新たな物は持ち帰る事が叶いません。今の荷物に宝石を忍ばせても、その場に宝石が残ってしまいますので。詳しくはこの後にお話し致しますが、女性の方に朗報があります。もしこちらの世界で男性と体の関係を持って処女性をなくしても、日本に戻れば処女に戻ります。ただ、皆様方お気を付けください。子をなした場合、その子は連れ帰る事は叶いません。忘れ形見にしかならず、女性の場合、帰還した時に体自体は出産経験が無かった事になります。基本的な事として、皆様のいた世界にはいない魔物と言うのがいます。動物とはまた違い、魔力を元にして作られし生命体で、人類の敵となります。皆様方には魔物を倒して頂きます」

 皆ざわめいた。ある意味凄い事になる。性に興味のある年齢だ。
 事実だとすれば例え羽目を外したとしても、日本に帰れば実体験としての記憶はあるが、体にはその痕跡が残らないし、無かった事になるので皆色めき立っている。
 そんな都合の良い話がある訳が無いのだが、今この異世界召喚という異常事態に信じる者がおり、誰かがスゲーぞ!と信じたかのように叫ぶと、釣られて皆信じてしまうような集団心理が働いてしまった。

 そして栃郎と瑞希だけは見逃さなかった。王女と言われるこの女の顔が一瞬どす黒く、フッ!と言うように口角が上がったのを。

「信じるなよ。あいつの顔が一瞬歪んだ。しかも慣れているぞ。異世界召喚という言葉や俺達の国名を言ったからな」

「はい。私も背筋に寒気が走りました。怖いです」

「質問はありませんか?勿論後からでも大丈夫です。先ずはあちらにてスキルを選んで下さい。1人ずつになりますが、選んでいる時間は数時間であっても、実際は数秒です。それとこの首輪をして頂きます。この世界では皆様はこれを装着しないでスキルを使われますと、10回に1度程度ですが、スキルが暴走して死に至りますので、制御の首輪を装着して頂きます。しかも爆発して周りを巻き込んでしまいますので宜しくお願い申し上げます。それではこちらに」

 そうして隣の部屋に移動するのであった。


作者からのお願いです!
少しでも面白い!先が気になる!と思って頂けましたら、お気に入り登録で応援して頂けましたら幸いです。

他の作品も楽しんで頂けましたら幸いです。

応援宜しくお願いします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

処理中です...