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第5章
日記
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俺は自転車の部品が出来上がって来るまで、時間を持て余していた。その間に先の日記の全てに目を通し、日記の持ち主の人生に触れてみようと決心した。
日付がおかしかった。今は199X年の筈なのだが、この人は201X年からあの世界に異世界転移させられたと書いていた。彼の年齢は40代半ばだそうだ。しかし転移後の体が18歳になっており、記憶の一部がなくなっていた。しかもなくしていなかった18歳以降の記憶が段々と思い出せなくなりつつある為に、この日記を記すと書いてあった。
ぱらぱらっと捲って見たが、家族の名前や住んでいた住所が書いてあり、なんと俺の家の近所らしい。だが肝心のこの日記の持ち主の名前がどこにもなかったのだ。まあ日記に自分の名は書かないよな。それと同郷の者として親近感を覚えた。隣の小学校の校区だ。
この人は結婚をしており、高校生と中学生の子供がいる。一度書いた年齢が訂正されていた。その理由は横に書いてあったが、長男と長女の関係の記憶がいりくっていたと。上の子を下の子と上下を間違えていたのだ。そのレベルで記憶が混乱していた。上の子が男の子だったのだが、上の子が女の子だと思い込んでいる時期があったというのだ。
俺はこの人があまりにも可哀想で涙をしていた。妻達は俺が日記に没頭し、時折泣いている姿を見て心を痛めながらそっと涙を拭いてくれていた。日本語で書かれていたので地球から来た者だという事だけは分かっている。
日記は手帳を使っており、どこかの会社支給の手帳らしく、日本語でXX株式会社と書いてあった。どうやらこの手帳の持ち主はこの会社の人で、異世界召喚された時には仕事をしていたっぽい。そして記憶にある自転車の図面を記憶が残っている間に残したようだ。エンジニアだったのだろうか?今も生きているのか?そして日記代わりに自分の身に起きている事を書いていたりする。また、一度記憶をなくしているようだ。
何やら召喚直後に追放されたと俺と同じ目に遭っているようだ。食事をしなければならないので一旦読み終わり、手帳を机に置こうとしたところ、背表紙を何気なく開いて見た。するとそこには名刺を挟むところがあり、1枚の名刺がはさまれていた。おやこれはこの持ち主の名刺かな?と思い、その名刺を見ると俺は愕然とした。この手帳に書いてある会社の名前の名刺だったのだが、そこに書かれている名前が己の名前だったからだ。俺は衝撃に打ちひしがれた。まさかこの日記は俺が書いた物たというような感じにだ。そう、俺自身の事なのだ。己の事だと考えると辻褄が合う事が多かった。恐る恐る召喚された直後の事を見てみると、シェリー の事が書いてあった。はっきりとシェリーと書いてあるのだ。書いた記憶すらないが、ただなんとなく日記にシェリーと出会った頃の事を書いたような気がしなくはなかった。一度記憶をなくしたと有ったから、召喚後の記憶の一部が戻っていないようだった。
また、自転車の図面などを書いた記憶とか、向こうに家族がいた事、俺がおっさんだったという事の記憶がなかった。俺は食事に行くのを忘れ、必死に見ていた。紙が貴重だというのが当時から分かっていたようで、小さな字で必死に細かく書いてあった。
ショックな事と書いていたのは上の子と下の子が逆転していたり、妻の顔が思い浮かばない事と書いてあった。スマホやタブレットにある写真を見てもふーん位にしか思わなかったと。
スマホ?タブレット?何だそれ?
そしてシェリーに頼んだ事が書いてある。時折日記の存在を言ってもらい、己がおっさんであった事、召喚時に十八歳になっていた事。それにより様々な不具合が起こっている事。それらを指摘してもらうのがシェリーの役目だった。しかし今はシェリーはいない。この世界に来てから2年以上が過ぎている。もうじき3年になるだろうか。その間シェリーがいない為に、己がどういう者だというのを思い出す術を今の今まで持っていなかったのだ。
いつまでたっても俺が食事の為に食堂に来ないので、トリシアが様子を見に来た。俺は机にしがみつきながら、そんなバカなそんなバカなと震えながら見ていた。異変に気がついたトリシアがランス大丈夫?と声をかけてきてくれた
。
俺は彼女のお腹に顔をうずめ、情けなく泣いてしまった。訳が分からないだろうにそれでもトリシアはそっと俺の頭を撫でてくれたり背中をポンポンと叩いて落ち着かせようとしてくれていた。俺はブツブツと言っていたのだが、あの日記、あの日記を書いた持ち主は俺だった、俺だったんだと。
妻達には日記の内容をかいつまんで伝えてはあった。トリシアも衝撃を受けたようで一瞬体がビクンとなっていたが、すぐさま胸をはだけ、おいでという。そうして俺に胸を吸わせていた。そう俺は何かあるとこうやって胸をチューチュー吸うバブリーモードに入ると落ち着くのだ。以前の呪いの副作用に苦しみ続けていた。トリシアにバブっていると他の妻達も来て、俺がトリシアを相手にバブっている様子に気が付き、トリシアが日記の持ち主が自分だと判ったようで、それで衝撃を受けていたのを今落ち着かせていると説明をしてくれていた。
暫くバブった後、俺は冷静さを取り戻し、今手元にあるこの日記が、自分自身で己の事を書き記した日記だという事を認識をした。ただ思い出す事はなかった。以前はシェリーに言われ理解したのではなく思い出していたそうだが、今は思い出せる事は召喚後に経験した事のみで、召喚前の記憶は思い出せなかった。だが、そういう過去があり、記憶から欠落しているという認識は持てるようになった。その、俺の事ではあるが誰か他人の人生が、事実の書かれた日記だと。そういう認識のレベルの話ではある。一度用意した食事をしようと誰かに言われ、皆と一緒に黙々と食事をし、その後妻達の前で日記を読み始めるのであった。
日付がおかしかった。今は199X年の筈なのだが、この人は201X年からあの世界に異世界転移させられたと書いていた。彼の年齢は40代半ばだそうだ。しかし転移後の体が18歳になっており、記憶の一部がなくなっていた。しかもなくしていなかった18歳以降の記憶が段々と思い出せなくなりつつある為に、この日記を記すと書いてあった。
ぱらぱらっと捲って見たが、家族の名前や住んでいた住所が書いてあり、なんと俺の家の近所らしい。だが肝心のこの日記の持ち主の名前がどこにもなかったのだ。まあ日記に自分の名は書かないよな。それと同郷の者として親近感を覚えた。隣の小学校の校区だ。
この人は結婚をしており、高校生と中学生の子供がいる。一度書いた年齢が訂正されていた。その理由は横に書いてあったが、長男と長女の関係の記憶がいりくっていたと。上の子を下の子と上下を間違えていたのだ。そのレベルで記憶が混乱していた。上の子が男の子だったのだが、上の子が女の子だと思い込んでいる時期があったというのだ。
俺はこの人があまりにも可哀想で涙をしていた。妻達は俺が日記に没頭し、時折泣いている姿を見て心を痛めながらそっと涙を拭いてくれていた。日本語で書かれていたので地球から来た者だという事だけは分かっている。
日記は手帳を使っており、どこかの会社支給の手帳らしく、日本語でXX株式会社と書いてあった。どうやらこの手帳の持ち主はこの会社の人で、異世界召喚された時には仕事をしていたっぽい。そして記憶にある自転車の図面を記憶が残っている間に残したようだ。エンジニアだったのだろうか?今も生きているのか?そして日記代わりに自分の身に起きている事を書いていたりする。また、一度記憶をなくしているようだ。
何やら召喚直後に追放されたと俺と同じ目に遭っているようだ。食事をしなければならないので一旦読み終わり、手帳を机に置こうとしたところ、背表紙を何気なく開いて見た。するとそこには名刺を挟むところがあり、1枚の名刺がはさまれていた。おやこれはこの持ち主の名刺かな?と思い、その名刺を見ると俺は愕然とした。この手帳に書いてある会社の名前の名刺だったのだが、そこに書かれている名前が己の名前だったからだ。俺は衝撃に打ちひしがれた。まさかこの日記は俺が書いた物たというような感じにだ。そう、俺自身の事なのだ。己の事だと考えると辻褄が合う事が多かった。恐る恐る召喚された直後の事を見てみると、シェリー の事が書いてあった。はっきりとシェリーと書いてあるのだ。書いた記憶すらないが、ただなんとなく日記にシェリーと出会った頃の事を書いたような気がしなくはなかった。一度記憶をなくしたと有ったから、召喚後の記憶の一部が戻っていないようだった。
また、自転車の図面などを書いた記憶とか、向こうに家族がいた事、俺がおっさんだったという事の記憶がなかった。俺は食事に行くのを忘れ、必死に見ていた。紙が貴重だというのが当時から分かっていたようで、小さな字で必死に細かく書いてあった。
ショックな事と書いていたのは上の子と下の子が逆転していたり、妻の顔が思い浮かばない事と書いてあった。スマホやタブレットにある写真を見てもふーん位にしか思わなかったと。
スマホ?タブレット?何だそれ?
そしてシェリーに頼んだ事が書いてある。時折日記の存在を言ってもらい、己がおっさんであった事、召喚時に十八歳になっていた事。それにより様々な不具合が起こっている事。それらを指摘してもらうのがシェリーの役目だった。しかし今はシェリーはいない。この世界に来てから2年以上が過ぎている。もうじき3年になるだろうか。その間シェリーがいない為に、己がどういう者だというのを思い出す術を今の今まで持っていなかったのだ。
いつまでたっても俺が食事の為に食堂に来ないので、トリシアが様子を見に来た。俺は机にしがみつきながら、そんなバカなそんなバカなと震えながら見ていた。異変に気がついたトリシアがランス大丈夫?と声をかけてきてくれた
。
俺は彼女のお腹に顔をうずめ、情けなく泣いてしまった。訳が分からないだろうにそれでもトリシアはそっと俺の頭を撫でてくれたり背中をポンポンと叩いて落ち着かせようとしてくれていた。俺はブツブツと言っていたのだが、あの日記、あの日記を書いた持ち主は俺だった、俺だったんだと。
妻達には日記の内容をかいつまんで伝えてはあった。トリシアも衝撃を受けたようで一瞬体がビクンとなっていたが、すぐさま胸をはだけ、おいでという。そうして俺に胸を吸わせていた。そう俺は何かあるとこうやって胸をチューチュー吸うバブリーモードに入ると落ち着くのだ。以前の呪いの副作用に苦しみ続けていた。トリシアにバブっていると他の妻達も来て、俺がトリシアを相手にバブっている様子に気が付き、トリシアが日記の持ち主が自分だと判ったようで、それで衝撃を受けていたのを今落ち着かせていると説明をしてくれていた。
暫くバブった後、俺は冷静さを取り戻し、今手元にあるこの日記が、自分自身で己の事を書き記した日記だという事を認識をした。ただ思い出す事はなかった。以前はシェリーに言われ理解したのではなく思い出していたそうだが、今は思い出せる事は召喚後に経験した事のみで、召喚前の記憶は思い出せなかった。だが、そういう過去があり、記憶から欠落しているという認識は持てるようになった。その、俺の事ではあるが誰か他人の人生が、事実の書かれた日記だと。そういう認識のレベルの話ではある。一度用意した食事をしようと誰かに言われ、皆と一緒に黙々と食事をし、その後妻達の前で日記を読み始めるのであった。
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