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顔を変えた過去
在日故の悲しさ
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「傷害事件?アンタみかけによらずケンカ強いのか?」
傷害事件という事は、ケンカで相手をボコボコにしたもんだと思っていた。
「いえ、その刃物で相手を…」
レイはか細い声で話を続けた。
「実は…私、在日なんです…」
「ん?在日?」
達也はいまいちピンとこなかった。
在日という言葉は聞いたことあるが、具体的な事はよく分からない。
「…はい、在日韓国人です」
「ん?て事はアンタ韓国人?」
へぇー、という感じでレイをみた。
「…えぇ、ですが、生まれも育ちも日本ですけど」
「んじゃ、日本人じゃん」
過去を思い出したのか、レイは大きな声をあげた。
「何が日本人よ!私はね、在日韓国人という事で随分差別を受けてきたのよ!あなた達日本人には分からない程っ!ただ在日、というだけで言われもない事を言われ、差別を受けてバカにされ、あなたに何が分かるというのっ!」
レイは一気に捲し立てた。
達也が思わず怯んでしまう程、レイの言葉は怒りに満ちていた。
「な、なんだよ急に…オレはよく分かんねえんだよ、そういう事は」
何か気に障る事を言ったか?と達也は困惑していた。
「在日というだけで、日本人と違う扱いを受けるのよ。生まれてからずっと…」
「んー、何だかよく知らねえけど、白人が黒人を差別するようなもんか?」
「まぁ、似たようなもんね。私は朝鮮学校の高等部に通ってたの」
「あー、思い出した!確か民族衣装みたいなの着て学校に行くんだろ?」
「それは以前の事。
今はブレザーの制服よ。ただ校内ではあなたの言うような、チマチョゴリを着て授業を受けるけどね」
「でもあれだろ?在日韓国人だって、日本の学校に行こうと思えば行けたんだろ?」
達也の言うとおり、日本人学校にも在日コリアンが通っているケースは少なくない。
「さぁ…でも、日本の学校に通ったら、余計差別されるかもね。皆、表向きは仲良くしてるけど、裏では何言われてるか分かんないし、それに私の住んでいた地域は在日の人が多かったからか、朝鮮学校に通う人ばかりだったし…」
「それで、何で傷害事件起こしたんだ?」
レイは少し躊躇いながらも、話を続けた。
「私、日本の高校生にレイプされかけたの…しかも数人に囲まれて…助けて!って言っても、誰もいない場所で…
で、制服をビリビリに破かれた時、咄嗟にカバンの中にあった家庭科用のハサミで…」
「それ、正当防衛じゃねえの?」
「私もそう言ったわ!でも、その時言われたのよ【お前ら在日は日本なんかにいるな!祖国へ帰れ!】って…祖国って何?私は生まれも育ちも日本なのよ?なのに、何で日本人と違って差別されなきゃなんないの?」
達也はレイの言葉を黙って聞いていた。
「私は一体、何処の国の人間なの?日本で育って日本の物を食べて、テレビ観て、同じ生活してるのに、何で国籍が違うだけで差別されなきゃなんないの?おかしいでしょ?」
「…だったら、韓国に帰ればいいじゃん、そんなに日本が嫌なら」
レイの話を聞いているうちに、めんどくさくなり、祖国へ帰れば?と素っ気なく言った。
「そう簡単に言わないでよ!私達在日が韓国に帰ったとしても、日本以上に扱いが酷いのよ!それに私、韓国の文化なんて知らないし、家族は皆日本にいるのに私だけ韓国に行っても、今以上に差別を受けるのよ!
一体私は何処の国の人間なの?っていつも思ってた…
何で、こんなに辛い思いしなきゃなんないのよ…」
レイの頬から涙が伝った。
「傷害事件を起こした私は警察に捕まり、鑑別所へ送られたわ。こんな私に、まともな就職先なんて無いの!だから、こんな仕事しか出来ないのよ…」
「で、そうやって自分の手首切ってるのか?」
達也はレイの左手首を指した。
「そうよ!こうする事によって、自分が楽になれたような気がするの。気づいた時には、こんなにいっぱいキズ跡になったわ」
レイは左手首から肘にかけ、無数のキズ跡があった。
「リストカットねぇ…オレにゃ、サッパリ理解出来ねえや。何が悲しくて、テメーの身体に刃物で切るなんてよ。まぁ、相手の身体を切るってんなら分かるけどな」
「だから、こんな事言っても理解してもらえないのよ!」
達也はレイの左手首を掴んだ。
「アンタ、日本はキライか?」
「…」
「色んな日本人がいる。嫌韓派もいれば、そうじゃない日本人もいる。アンタはそんな、日本人ばっかの所にいたんだろ…オレは日本だの韓国だの、アメリカやヨーロッパ、そんなもんは関係ねえ!
気が合えば仲良くなる。
逆に気に入らねえ日本人だって、いっぱいいる。
アンタはそういう環境で育ってきた。ただそれだけだ。
日本人はそんな連中ばかりじゃない。
オレみたいに、国籍云々だとかどうでもいいボーダーレスなヤツだっているんだ」
達也はレイの左手首にキスをした。
「…あぁ、恥ずかしい」
自傷行為を行ったキズ跡にキスをされたなんて、初めての事だ。
「アンタ、整形したいと思った事はあるか?」
「そんなのしょっちゅうよ!こんな顔だもん、出来れば整形したいわ」
お世辞にも、レイの顔は美人とは言えない。
「オレ、近々整形する予定なんだ」
「えっ、どうして?そんないい顔してるのに」
達也は長身でチャラい格好をしてるが、顔立ちは良く、女にもモテた。
「…やらなきゃなんねえ事情があんだよ。まぁ、早い話が、命を狙われてるって事だ」
達也はまたベッドに横たわり、天井を見ていた。
鏡張りの天井は仰向けになっている達也の全身が映ってる。
「…まぁ、話せば長くなるんだが…」
そして、達也は今置かれている立場をレイに話した。
傷害事件という事は、ケンカで相手をボコボコにしたもんだと思っていた。
「いえ、その刃物で相手を…」
レイはか細い声で話を続けた。
「実は…私、在日なんです…」
「ん?在日?」
達也はいまいちピンとこなかった。
在日という言葉は聞いたことあるが、具体的な事はよく分からない。
「…はい、在日韓国人です」
「ん?て事はアンタ韓国人?」
へぇー、という感じでレイをみた。
「…えぇ、ですが、生まれも育ちも日本ですけど」
「んじゃ、日本人じゃん」
過去を思い出したのか、レイは大きな声をあげた。
「何が日本人よ!私はね、在日韓国人という事で随分差別を受けてきたのよ!あなた達日本人には分からない程っ!ただ在日、というだけで言われもない事を言われ、差別を受けてバカにされ、あなたに何が分かるというのっ!」
レイは一気に捲し立てた。
達也が思わず怯んでしまう程、レイの言葉は怒りに満ちていた。
「な、なんだよ急に…オレはよく分かんねえんだよ、そういう事は」
何か気に障る事を言ったか?と達也は困惑していた。
「在日というだけで、日本人と違う扱いを受けるのよ。生まれてからずっと…」
「んー、何だかよく知らねえけど、白人が黒人を差別するようなもんか?」
「まぁ、似たようなもんね。私は朝鮮学校の高等部に通ってたの」
「あー、思い出した!確か民族衣装みたいなの着て学校に行くんだろ?」
「それは以前の事。
今はブレザーの制服よ。ただ校内ではあなたの言うような、チマチョゴリを着て授業を受けるけどね」
「でもあれだろ?在日韓国人だって、日本の学校に行こうと思えば行けたんだろ?」
達也の言うとおり、日本人学校にも在日コリアンが通っているケースは少なくない。
「さぁ…でも、日本の学校に通ったら、余計差別されるかもね。皆、表向きは仲良くしてるけど、裏では何言われてるか分かんないし、それに私の住んでいた地域は在日の人が多かったからか、朝鮮学校に通う人ばかりだったし…」
「それで、何で傷害事件起こしたんだ?」
レイは少し躊躇いながらも、話を続けた。
「私、日本の高校生にレイプされかけたの…しかも数人に囲まれて…助けて!って言っても、誰もいない場所で…
で、制服をビリビリに破かれた時、咄嗟にカバンの中にあった家庭科用のハサミで…」
「それ、正当防衛じゃねえの?」
「私もそう言ったわ!でも、その時言われたのよ【お前ら在日は日本なんかにいるな!祖国へ帰れ!】って…祖国って何?私は生まれも育ちも日本なのよ?なのに、何で日本人と違って差別されなきゃなんないの?」
達也はレイの言葉を黙って聞いていた。
「私は一体、何処の国の人間なの?日本で育って日本の物を食べて、テレビ観て、同じ生活してるのに、何で国籍が違うだけで差別されなきゃなんないの?おかしいでしょ?」
「…だったら、韓国に帰ればいいじゃん、そんなに日本が嫌なら」
レイの話を聞いているうちに、めんどくさくなり、祖国へ帰れば?と素っ気なく言った。
「そう簡単に言わないでよ!私達在日が韓国に帰ったとしても、日本以上に扱いが酷いのよ!それに私、韓国の文化なんて知らないし、家族は皆日本にいるのに私だけ韓国に行っても、今以上に差別を受けるのよ!
一体私は何処の国の人間なの?っていつも思ってた…
何で、こんなに辛い思いしなきゃなんないのよ…」
レイの頬から涙が伝った。
「傷害事件を起こした私は警察に捕まり、鑑別所へ送られたわ。こんな私に、まともな就職先なんて無いの!だから、こんな仕事しか出来ないのよ…」
「で、そうやって自分の手首切ってるのか?」
達也はレイの左手首を指した。
「そうよ!こうする事によって、自分が楽になれたような気がするの。気づいた時には、こんなにいっぱいキズ跡になったわ」
レイは左手首から肘にかけ、無数のキズ跡があった。
「リストカットねぇ…オレにゃ、サッパリ理解出来ねえや。何が悲しくて、テメーの身体に刃物で切るなんてよ。まぁ、相手の身体を切るってんなら分かるけどな」
「だから、こんな事言っても理解してもらえないのよ!」
達也はレイの左手首を掴んだ。
「アンタ、日本はキライか?」
「…」
「色んな日本人がいる。嫌韓派もいれば、そうじゃない日本人もいる。アンタはそんな、日本人ばっかの所にいたんだろ…オレは日本だの韓国だの、アメリカやヨーロッパ、そんなもんは関係ねえ!
気が合えば仲良くなる。
逆に気に入らねえ日本人だって、いっぱいいる。
アンタはそういう環境で育ってきた。ただそれだけだ。
日本人はそんな連中ばかりじゃない。
オレみたいに、国籍云々だとかどうでもいいボーダーレスなヤツだっているんだ」
達也はレイの左手首にキスをした。
「…あぁ、恥ずかしい」
自傷行為を行ったキズ跡にキスをされたなんて、初めての事だ。
「アンタ、整形したいと思った事はあるか?」
「そんなのしょっちゅうよ!こんな顔だもん、出来れば整形したいわ」
お世辞にも、レイの顔は美人とは言えない。
「オレ、近々整形する予定なんだ」
「えっ、どうして?そんないい顔してるのに」
達也は長身でチャラい格好をしてるが、顔立ちは良く、女にもモテた。
「…やらなきゃなんねえ事情があんだよ。まぁ、早い話が、命を狙われてるって事だ」
達也はまたベッドに横たわり、天井を見ていた。
鏡張りの天井は仰向けになっている達也の全身が映ってる。
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そして、達也は今置かれている立場をレイに話した。
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