快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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不毛な同棲生活

怒り

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「…ぁ」

そのままナツの首が胴体から離れて落ちた。

操り人形の糸が切れたかのように、頭を失ったナツの身体はグニャリとして床に倒れた。

「…ナツ」

一瞬の事で何が起きたのか分からなかった…

まるで、マジックで胴体を2つに切り離すかのような感じで。

「너는 수다쟁이다.(お前は喋りすぎだ)」

ナツが倒れた背後に覆面男が何か言った。
何を言ったのだろう…

ナツ…まさかこんな最期になるなんて。

この数分の間に、二人があっという間に首を切断された…

悪夢でも何でもない、目の前で起こった現実だ…

次はオレの番か…
しかし、首を切断とは何て残酷な男だ。

恐怖より、山下とナツが殺された怒りの方が強かった。

「おい!テメー、それでも人間か!?」

オレは今まで生きてきて、腹の底から怒りが湧いてきた事はこれが初めてだ。

「…ふ」

覆面男がオレに剣先を向け、口を開いた。

「ったく、喋りすぎなんだよ、この女は」

日本語?コイツ日本語話せるのか?

「お前、ナツと同じ在日韓国人なのか?だったら何故、同胞にこんな酷い事するんだ!」

「同胞?バカかテメーは」

この声…しかも流暢な日本語。

「まだ分からねえのか、亮輔」

男は覆面を脱いだ。

「…お前、小島?」

間違いない…この顔、オレが15才の時、友人がいない事を思って兄が紹介した人物だ。

小島にはよく色んな事をして遊んでもらった。
ボーリングのスコアも上達したし、ドライブに行ったり、バーベキューをしたりと…

だが、それは裏で兄が糸を引いていて、オレと母を分断させる為に雇った人物だった。

そして母は海外に売り飛ばされ、オレはマンションを追い出された。全ては兄の陰謀だ。

マンションを追い出されたと同時に、小島との連絡は途絶えた。

その小島が何故、ナツと繋がっていたのか?

「久しぶりだな、亮輔。この女はオレの鉄砲玉だ」

ニヤけながら、右手で刀をヒュンヒュンと振り回している。

「何故、殺した?ナツはお前の何なんだ、おいっ!」

冗談じゃない!何の躊躇いも無く、人の身体を切り刻むだなんて、コイツは殺し屋になったのか?

「おいおい!久々の再会なのに、随分な言い方じゃねえか」

多分、オレはこの後殺されるだろう。
だが、刺し違えるつもりでコイツを殺す!

「お前…今まで何人もの罪の無い人を殺してきたんだ、おいっ!答えろっ!」

コイツは人の皮を被った悪魔だ。

「罪の無い人間?何言ってんだ、お前?
じゃあ、テメーは罪が無いのかよ?なぁ、おい。テメーのアニキの骨を川に投げ捨てるのは、罪じゃねえのかよ?今までウソついた事ねえのかよ?えぇ、おい。人間てのはな、大なり小なり罪を抱えて生きてるんだよ!」

これがあの小島なのか?

オレが知ってる小島は、こんな人間じゃない。
いつも優しくて、オレに色んな事を教えてくれた、年上の頼れる人だった。
確かに、兄が一芝居する為に雇った人間だったが、少なくとも、オレと会ってた時の小島はそんなヤツじゃなかった。

「この女はな、オレが世話してやったんだよ。最初に会った時はブッサイクなツラしてやがってよ。でもスタイルだけは良かったから、整形させたんだよ」

…コイツ、ナツを整形させたのか。

「コイツは在日韓国人として生まれてきて、随分と差別を受けて生きてきた。
オレはぶっちゃけ、韓国だろうが何だろうが関係ねえ!
オレの意のままに操れる人間が欲しかっただけだ。コイツは昔、風俗で働いてたのを、オレが面倒見てやったんだ。あっ、そうそう。
そういや、お前の母ちゃんも確かソープ嬢だったっけな」

甘い顔してナツに近づき、顔を整形させてまでオレと接するよう命じたのか、コイツは!

「何人も殺して、一体何がしたいんだ、おいっ!」

小島は時折、足を貧乏ゆすりしながら、右手で刀を持ち、タバコをくわえた。

「…おい、言いてえのはそれだけか?」

オレに煙を吐きかけながら、不気味な笑みを浮かべている。

「オレがテメーを始末する予定だったのに、この女ときたら、本気でオメーの事好きになったらしく、外へ一歩も出さねえから、オレが頃合いを見て、テメーを殺るつもりだったんだよっ!」

…じゃあ、あのしつこいまでの連絡は?
あれはオレの身を案じて、外に出るなって言ってくれたのか?

…ナツ。オレは単なる束縛だと思っていた。それは大きな間違いだった…

コイツに殺られないよう、一歩も外に出さないようにしてくれたのか…

知らず知らずに涙が溢れた。
もう泣くまいと誓ったのに…

「おいおい…今からテメーが死ぬってのに、何泣いてんだよ?」

だが、何か変だ。小島に何か違和感を感じる。

「お前…小島じゃないだろ?」


「あ?何言ってんだ、テメーは。じゃあ、誰だと言うんだ、えぇ?」

…なる程、通りでだ!
コイツは小島じゃない、恐怖より怒りの方が勝ったワケが!

オレは瞬時に近づき、胸ぐらを掴んだ。

「テメー、顔まで変えて、まだ下らねえ事しでかそうとしてんのかよ!!」

ヤツの顔面目掛けて、渾身の力で左の拳を叩き込んだ。

「ぐへっ!」

倒れた隙に、長い刀を奪い取った。

「下手な変装してんじゃねえよ、古賀達也!」

そう、コイツは顔を整形した、あの兄だ!
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