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流浪の如く

名刺交換

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「何やっての、こんなとこで?」

オレはベンチコートを着て寒そうにしているナツを見て、キャバ嬢も大変だなぁと思った。

「えぇ、お客さん呼んでるのよ。古賀くん寄ってかない?」

「だから金無いし、酒飲めないっつったじゃん」

「あ、じゃあ名刺渡すね。もし来る気があったら来てね」

ナツは名刺を渡し、また通行人に声を掛けていた。

【クラブ ルージュ ユリ】

名刺にはそう書いてあった。
「ん?」名刺の裏には、アドレスとLINEのID 番号が手書きで書かれてあった。

(営業の為にいちいち番号とか教えるのか、大変なこった)

名刺をポケットに入れ、家路に着いた。

あの最初に会った悲しげな目では無かった。

じゃ、あれは酒で目がそういう感じになっただけなのか?
オレはその名刺をポケットに入れたままにしていた。


そしてまた数日経った日に繁華街を通った。

帰り道が繁華街を通る為にどうしてもこの界隈を抜けて行かなきゃならない。

「古賀くん」

またもやナツに声を掛けられた。

「名刺の裏に連絡先あったでしょ?見なかった?」

「だってオレ、キャバクラに興味ないし」

「いいよ、別に来なくても。たまには連絡してよ」

まただ。あの悲しい目をしている。
あの瞳の奥には何を見ているのだろうか。

「じゃあ、オレも名刺渡すよ」

オレは会社から支給された名刺をナツに渡した。

「えー、これ会社の番号しか載ってないじゃん」

「ちゃんと見ろよ。会社の番号とオレのスマホの番号も載ってるよ」

名刺には会社の名前、オレの名前と会社の住所、電話番号、そしてオレのスマホの番号が載っている。

ルート配送だから、会社にいるとは限らないから、スマホの番号も載ってあるのだ。

「じゃあ、ここにかければ古賀くんが直接でるの?」

「うん」

「じゃ、今度かけてみるね」

「仕事頑張れよ」

「ありがとう」

そしてオレは繁華街を抜け、家に着いた。

山下はすでにいなく、仕事に行っている。

にしても、いつまでアイツと一緒に暮らさなきゃなんないんだ。

はぁ、憂鬱だ…
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