124 / 189
流浪の如く
スエット上下で面接…
しおりを挟む
翌日、山下を連れて、駅前のコーヒーショップで沢渡さんが来るのを待った。
それにしても、なんて格好してるんだ…
金髪に細い眉毛。
おまけに、上下のスエットにサンダルという、ふざけた服装だ。
沢渡さんは、母が築き上げた会社を、兄が公私混同して倒産寸前にまでなった後を継いで社長となったが、民事再生法により、大手の企業に吸収されるという、辛い経験をした。
だが、沢渡さんを筆頭に、古参の幹部連中と共に必死になって業績を上げ、今では、その企業の子会社の代表取締役として、経営は徐々に上向きになった。
沢渡さんには、コイツの就職の世話をしてもらえないだろうか、と連絡した。
沢渡さんは快く引き受け、コーヒーショップで待ち合わせする事となった。
「おい!これでも、面接なんだぞ。何だよ、その格好は」
普段から、こんな格好をしている。
一緒にいるオレが恥ずかしい。
「はぁ?だって、仕事するしないはオレが決めるんだぜ。話だけなら、この格好で十分だろ」
…コイツには何を言ってもムダだ。
しばらくして、沢渡さんが店に現れた。
以前と変わらず、スリーピースのスーツを着こなし、ダンディーで品がある。
若干、白髪が目立つが、それを差し引いても、風格のある雰囲気を醸し出している。
「亮輔くん、久しぶりだな。何才になった?」
「23になりました」
「そうか。それならば、居酒屋の方が良かったかな?亮輔くんも、もう酒が飲める年になったんだからな」
「いや、オレはちょっと酒はダメなんで…」
「何だ、残念だな。隣の彼が亮輔くんの言ってた人かな?」
沢渡さんは山下の格好を見て、一瞬眉をひそめたが、直ぐに元の表情に戻った。
「あぁ、はい。コイツ、山下って言います。おい、この人が沢渡さんで、オレが世話になった人だ。
挨拶しろよ」
「あ、山下っす。山下悠平って言います、ヨロシクです」
席に座ったまま、頭も下げない。
…バカだ!これから仕事世話してもらうのに、そんな態度とは…
目眩がしてくる…
「沢渡です、ヨロシク。亮輔くんから話は聞いてある。何でも、以前はキャバクラのボーイをやってたらしいね?」
「えぇ、まぁ。でも、店の女とデキちゃって、クビになりました」
余計な事言うな!山下の足をギュッと踏みつけた。
「痛っ!」
「ん、どうしたのかな?」
「いや、何でもないです。沢渡さん、コイツを沢渡さんの所で使ってもらえないでしょうか?こんなふざけた格好してますけど、経験はあるんで。
どうかお願いします。…おい、お前も頭下げろバカ!」
全く緊張感が無い…
「山下くんとか言ったね。私は身なりで人を判断しない。
だが、その格好はなんだね?
仮にもこれは、面接なんだぞ。
何もネクタイまでしろとは言わないが、そういう格好で面接に挑むというのは、些かふざけ過ぎじゃないかな?」
誰だって、そう言うと思う。
他の人なら、一発で不採用だ。
「あ、さーせん。でも、いつもこの格好なんで」
「…おいっ!あんまりこの人を怒らせるんじゃないぞ」
小声で言ったが、全く聞いていない。
「ところで君は、何でボーイになろうと思ってるのかな?」
沢渡さんは穏やかな表情だ。
「えー、ボーイになれば、色んなキャバ嬢に囲まれて何かいいじゃないすか?
それにもしかしたら、キャバ嬢と付き合えるかもしんないし」
「成る程、そういう事か…」
その瞬間、カップに入っていたホットコーヒーを山下にぶちまけた。
「あ"っぢぃ~っ!!」
山下は顔にホットコーヒーを浴びて、大声を上げた。
店内では、何事か?とばかりに、客がこっちを見ている。
「今すぐ、その頭を黒く染めてこいっ!!そして、明日ここに来るんだ!次にそんなふざけた格好で来たら、これだけじゃ済まないぞ!分かったかっ!」
鬼のような形相で山下を一喝すると、名刺を渡した。
その迫力にビビった山下は、震えながら返事した。
「それじゃ、亮輔くん。後の事は私に任せてくれ。彼を一から鍛え直すから」
鬼の形相から一変して、温和な表情に変わった。
「あ、ありがとございます。このバカをよろしくお願いいたします」
沢渡さんに礼を言った。
山下はおしぼりで顔を拭いている。
「いいか、私の所の店で一から勉強するんだ。給料は20万。文句無いな?」
そう言って、沢渡さんは席を立った。
「亮輔くん。今度お母さんに、お線香を上げに伺うよ。その時は一杯だけでいいから、私に付き合ってくれよ」
「わかりました。母も喜ぶと思います」
「短い時間で申し訳ないが、私はこれで失礼するよ。おい、明日必ず私の所に来いよ!ちゃんとスーツを着て来るんだ、いいな!」
沢渡さんは店を出た。
このバカは、人を舐めすぎた。
さすが、沢渡さんだ。
山下のビビった姿を見て、オレは笑いを堪えた。
…よく考えたら、笑うのは何年ぶりだろう。
それにしても、なんて格好してるんだ…
金髪に細い眉毛。
おまけに、上下のスエットにサンダルという、ふざけた服装だ。
沢渡さんは、母が築き上げた会社を、兄が公私混同して倒産寸前にまでなった後を継いで社長となったが、民事再生法により、大手の企業に吸収されるという、辛い経験をした。
だが、沢渡さんを筆頭に、古参の幹部連中と共に必死になって業績を上げ、今では、その企業の子会社の代表取締役として、経営は徐々に上向きになった。
沢渡さんには、コイツの就職の世話をしてもらえないだろうか、と連絡した。
沢渡さんは快く引き受け、コーヒーショップで待ち合わせする事となった。
「おい!これでも、面接なんだぞ。何だよ、その格好は」
普段から、こんな格好をしている。
一緒にいるオレが恥ずかしい。
「はぁ?だって、仕事するしないはオレが決めるんだぜ。話だけなら、この格好で十分だろ」
…コイツには何を言ってもムダだ。
しばらくして、沢渡さんが店に現れた。
以前と変わらず、スリーピースのスーツを着こなし、ダンディーで品がある。
若干、白髪が目立つが、それを差し引いても、風格のある雰囲気を醸し出している。
「亮輔くん、久しぶりだな。何才になった?」
「23になりました」
「そうか。それならば、居酒屋の方が良かったかな?亮輔くんも、もう酒が飲める年になったんだからな」
「いや、オレはちょっと酒はダメなんで…」
「何だ、残念だな。隣の彼が亮輔くんの言ってた人かな?」
沢渡さんは山下の格好を見て、一瞬眉をひそめたが、直ぐに元の表情に戻った。
「あぁ、はい。コイツ、山下って言います。おい、この人が沢渡さんで、オレが世話になった人だ。
挨拶しろよ」
「あ、山下っす。山下悠平って言います、ヨロシクです」
席に座ったまま、頭も下げない。
…バカだ!これから仕事世話してもらうのに、そんな態度とは…
目眩がしてくる…
「沢渡です、ヨロシク。亮輔くんから話は聞いてある。何でも、以前はキャバクラのボーイをやってたらしいね?」
「えぇ、まぁ。でも、店の女とデキちゃって、クビになりました」
余計な事言うな!山下の足をギュッと踏みつけた。
「痛っ!」
「ん、どうしたのかな?」
「いや、何でもないです。沢渡さん、コイツを沢渡さんの所で使ってもらえないでしょうか?こんなふざけた格好してますけど、経験はあるんで。
どうかお願いします。…おい、お前も頭下げろバカ!」
全く緊張感が無い…
「山下くんとか言ったね。私は身なりで人を判断しない。
だが、その格好はなんだね?
仮にもこれは、面接なんだぞ。
何もネクタイまでしろとは言わないが、そういう格好で面接に挑むというのは、些かふざけ過ぎじゃないかな?」
誰だって、そう言うと思う。
他の人なら、一発で不採用だ。
「あ、さーせん。でも、いつもこの格好なんで」
「…おいっ!あんまりこの人を怒らせるんじゃないぞ」
小声で言ったが、全く聞いていない。
「ところで君は、何でボーイになろうと思ってるのかな?」
沢渡さんは穏やかな表情だ。
「えー、ボーイになれば、色んなキャバ嬢に囲まれて何かいいじゃないすか?
それにもしかしたら、キャバ嬢と付き合えるかもしんないし」
「成る程、そういう事か…」
その瞬間、カップに入っていたホットコーヒーを山下にぶちまけた。
「あ"っぢぃ~っ!!」
山下は顔にホットコーヒーを浴びて、大声を上げた。
店内では、何事か?とばかりに、客がこっちを見ている。
「今すぐ、その頭を黒く染めてこいっ!!そして、明日ここに来るんだ!次にそんなふざけた格好で来たら、これだけじゃ済まないぞ!分かったかっ!」
鬼のような形相で山下を一喝すると、名刺を渡した。
その迫力にビビった山下は、震えながら返事した。
「それじゃ、亮輔くん。後の事は私に任せてくれ。彼を一から鍛え直すから」
鬼の形相から一変して、温和な表情に変わった。
「あ、ありがとございます。このバカをよろしくお願いいたします」
沢渡さんに礼を言った。
山下はおしぼりで顔を拭いている。
「いいか、私の所の店で一から勉強するんだ。給料は20万。文句無いな?」
そう言って、沢渡さんは席を立った。
「亮輔くん。今度お母さんに、お線香を上げに伺うよ。その時は一杯だけでいいから、私に付き合ってくれよ」
「わかりました。母も喜ぶと思います」
「短い時間で申し訳ないが、私はこれで失礼するよ。おい、明日必ず私の所に来いよ!ちゃんとスーツを着て来るんだ、いいな!」
沢渡さんは店を出た。
このバカは、人を舐めすぎた。
さすが、沢渡さんだ。
山下のビビった姿を見て、オレは笑いを堪えた。
…よく考えたら、笑うのは何年ぶりだろう。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる