123 / 189
流浪の如く
表出ろ、コラァ!
しおりを挟む
やっぱり、山下は疫病神だった…
一緒に住んだのはいいが、昼過ぎまで寝ていて、仕事を探す気配は一向に無い。
飯代は出すと言いながら、その金でパチンコやスロットをやる。
勝てば豪勢な飯だが、負ければ卵かけご飯。
「お前、職探ししてんのかよ!毎日昼過ぎまで寝ていて、ゴロゴロしてるだけじゃねぇか!」
オレも同じようなもんだが、コイツはそれ以上のろくでなしだ。
「まぁ、そういうなよ。すぐに見つかるから大丈夫だって、心配すんなよ」
本当に探す気があるんだろうか。
一週間の約束だが、既に三日経過している。
この様子じゃ、一週間どころか、二週間、一ヶ月、それ以上ここに居候するつもりなのだろうか…
「お前、仕事探すってどんな仕事探してんだよ」
昼間の仕事はイヤだ、肉体労働は疲れる、製造業は単調な作業だから飽きるだの、不満ばかり言ってる。
オレも男と同居するなんて初めてだから、多少の事は目をつぶっていたが、食って寝て、また食って寝るという、堕落した生活だ。
これじゃ、豚みたいな丸顔のキャバ嬢も愛想つかすだろう。
「お前さぁ、実家あるんだろ?実家に帰ったらどうなんだよ」
実家に帰れと促すが、山下は頑として帰りたくないと言う。
「冗談じゃねえよ、オレの実家は東北だぞ?実家に戻っても農業しかやること無いんだぞ」
実家があるだけマシだ。
オレなんか帰る所が無いというのに。
天涯孤独の身になったオレからすれば、贅沢だ。
「農業だっていいじゃねえか!それで野菜でも作ってりゃいいだろ、田舎もんの分際で、無理して都会になんか来るな!」
「あぁ、誰が田舎もんだ?」
「テメーだよ、このカントリーヤローが!」
「んだと、こらぁ!」
「やんのか、おいっ!」
…毎日こんなやり取りだ。
コイツはヒモ体質だ。
オレもそういうとこがあるから、コイツの言う事は分からないでもない。
だが、オレとコイツの違うとこは、オレは女に養ってくれ、だなんて一言も言った事が無い。
だが、コイツはハナっから養ってくれと言う。
同じヒモ体質でも、全く違うタイプだ。
オレだって、働かないで楽して過ごしたい。
十代の頃はそれが許されたし、相手から一緒に住もう、養子になってくれ、とまで言われた。
だが、23才になって、女に養ってくれ、なんてとても言えない。
それに、誰かと一緒に暮らすというのが、今のオレにとっては苦痛以外、なにものでもない。
ましてや、男同士で同居なんて…
当初は男同士で、色んな話をしてみるのもいいかな、なんて思って山下をアパートに住む事を許した。
家事も分担、飯代はコイツが払うという約束だった。
こんなヤツと住む事を仕方なく許したオレも悪い。
誰も信じないという気持ちは、今も変わらない。
だが、成人して、いつまでも斜に構えて人を寄せ付けないなんて事は難しい。
大人になれば、多少の人脈がないと、色々と不便だ。
だからオレは顔には出さず、普通に接する方法を覚えた。
そうは言っても、コイツと一緒で、働いては辞め、また働いては辞めるというだらしない日々を送ってきたが、今は少しでもそういう考えを払拭して、何があっても高校は卒業するという、鴨志田との約束を果たさなきゃならない。
オレの事はさておき、問題はコイツだ。
「おい、飯はどうした?」
「…いや、今日負けちゃったから」
またパチンコか…
「…じゃ何か?テメーが負けた日は、オレは何食えばいいんだ?」
「んー…かつお節に醤油かけて食うと中々美味いぜ」
「パチンコやる金あるなら、何か買ってこい、このバカ!」
山下に蹴りを見舞った。
「ってぇな、テメー!やろうってのか、コラァ!」
「おー、だったら今すぐここ出てけ!」
「…いや、後もう少しだけだから、な?頼むよ」
「…」
全く、どうしようもないバカだ。
「お前さ、何の仕事したいの?何か資格とかないのかよ?」
「車の免許ならあるぜ」
「じゃ、運送会社で働けばいいだろうが」
「運転しっぱなしなんて、ダルくて事故っちまうよ」
「じゃお前、最終学歴は?」
「…高校中退」
「お前は、肉体労働しか無いんだよ!額に汗してとことん働いてこい!」
「だからぁ、疲れるのはイヤなの?分かる?」
【ゴッ…】
思わずキレて、ヤツの顔面に左の拳を叩き込んだ。
「テメー、表出ろコラァ!」
「やってやろうじゃねえか!表出ろよ、おい!」
「上等だ、このヤロー!」
山下は靴を履いて、表に出た。
その隙にオレはドアを閉め、鍵をかけた。
【テメー、汚ぇぞ、こらぁ!】
ドンドンドンドンドン、とドアを叩くが、知らんぷりだ。
…要するに、働く気が無いんだろう。
こうなったら、沢渡さんに頼んでみようか。
そう思い、ドアをドンドン叩いてるのを無視して、沢渡さんに連絡した。
一緒に住んだのはいいが、昼過ぎまで寝ていて、仕事を探す気配は一向に無い。
飯代は出すと言いながら、その金でパチンコやスロットをやる。
勝てば豪勢な飯だが、負ければ卵かけご飯。
「お前、職探ししてんのかよ!毎日昼過ぎまで寝ていて、ゴロゴロしてるだけじゃねぇか!」
オレも同じようなもんだが、コイツはそれ以上のろくでなしだ。
「まぁ、そういうなよ。すぐに見つかるから大丈夫だって、心配すんなよ」
本当に探す気があるんだろうか。
一週間の約束だが、既に三日経過している。
この様子じゃ、一週間どころか、二週間、一ヶ月、それ以上ここに居候するつもりなのだろうか…
「お前、仕事探すってどんな仕事探してんだよ」
昼間の仕事はイヤだ、肉体労働は疲れる、製造業は単調な作業だから飽きるだの、不満ばかり言ってる。
オレも男と同居するなんて初めてだから、多少の事は目をつぶっていたが、食って寝て、また食って寝るという、堕落した生活だ。
これじゃ、豚みたいな丸顔のキャバ嬢も愛想つかすだろう。
「お前さぁ、実家あるんだろ?実家に帰ったらどうなんだよ」
実家に帰れと促すが、山下は頑として帰りたくないと言う。
「冗談じゃねえよ、オレの実家は東北だぞ?実家に戻っても農業しかやること無いんだぞ」
実家があるだけマシだ。
オレなんか帰る所が無いというのに。
天涯孤独の身になったオレからすれば、贅沢だ。
「農業だっていいじゃねえか!それで野菜でも作ってりゃいいだろ、田舎もんの分際で、無理して都会になんか来るな!」
「あぁ、誰が田舎もんだ?」
「テメーだよ、このカントリーヤローが!」
「んだと、こらぁ!」
「やんのか、おいっ!」
…毎日こんなやり取りだ。
コイツはヒモ体質だ。
オレもそういうとこがあるから、コイツの言う事は分からないでもない。
だが、オレとコイツの違うとこは、オレは女に養ってくれ、だなんて一言も言った事が無い。
だが、コイツはハナっから養ってくれと言う。
同じヒモ体質でも、全く違うタイプだ。
オレだって、働かないで楽して過ごしたい。
十代の頃はそれが許されたし、相手から一緒に住もう、養子になってくれ、とまで言われた。
だが、23才になって、女に養ってくれ、なんてとても言えない。
それに、誰かと一緒に暮らすというのが、今のオレにとっては苦痛以外、なにものでもない。
ましてや、男同士で同居なんて…
当初は男同士で、色んな話をしてみるのもいいかな、なんて思って山下をアパートに住む事を許した。
家事も分担、飯代はコイツが払うという約束だった。
こんなヤツと住む事を仕方なく許したオレも悪い。
誰も信じないという気持ちは、今も変わらない。
だが、成人して、いつまでも斜に構えて人を寄せ付けないなんて事は難しい。
大人になれば、多少の人脈がないと、色々と不便だ。
だからオレは顔には出さず、普通に接する方法を覚えた。
そうは言っても、コイツと一緒で、働いては辞め、また働いては辞めるというだらしない日々を送ってきたが、今は少しでもそういう考えを払拭して、何があっても高校は卒業するという、鴨志田との約束を果たさなきゃならない。
オレの事はさておき、問題はコイツだ。
「おい、飯はどうした?」
「…いや、今日負けちゃったから」
またパチンコか…
「…じゃ何か?テメーが負けた日は、オレは何食えばいいんだ?」
「んー…かつお節に醤油かけて食うと中々美味いぜ」
「パチンコやる金あるなら、何か買ってこい、このバカ!」
山下に蹴りを見舞った。
「ってぇな、テメー!やろうってのか、コラァ!」
「おー、だったら今すぐここ出てけ!」
「…いや、後もう少しだけだから、な?頼むよ」
「…」
全く、どうしようもないバカだ。
「お前さ、何の仕事したいの?何か資格とかないのかよ?」
「車の免許ならあるぜ」
「じゃ、運送会社で働けばいいだろうが」
「運転しっぱなしなんて、ダルくて事故っちまうよ」
「じゃお前、最終学歴は?」
「…高校中退」
「お前は、肉体労働しか無いんだよ!額に汗してとことん働いてこい!」
「だからぁ、疲れるのはイヤなの?分かる?」
【ゴッ…】
思わずキレて、ヤツの顔面に左の拳を叩き込んだ。
「テメー、表出ろコラァ!」
「やってやろうじゃねえか!表出ろよ、おい!」
「上等だ、このヤロー!」
山下は靴を履いて、表に出た。
その隙にオレはドアを閉め、鍵をかけた。
【テメー、汚ぇぞ、こらぁ!】
ドンドンドンドンドン、とドアを叩くが、知らんぷりだ。
…要するに、働く気が無いんだろう。
こうなったら、沢渡さんに頼んでみようか。
そう思い、ドアをドンドン叩いてるのを無視して、沢渡さんに連絡した。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる