快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

sky-high

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流浪の如く

表出ろ、コラァ!

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やっぱり、山下は疫病神だった…

一緒に住んだのはいいが、昼過ぎまで寝ていて、仕事を探す気配は一向に無い。

飯代は出すと言いながら、その金でパチンコやスロットをやる。
勝てば豪勢な飯だが、負ければ卵かけご飯。

「お前、職探ししてんのかよ!毎日昼過ぎまで寝ていて、ゴロゴロしてるだけじゃねぇか!」

オレも同じようなもんだが、コイツはそれ以上のろくでなしだ。

「まぁ、そういうなよ。すぐに見つかるから大丈夫だって、心配すんなよ」

本当に探す気があるんだろうか。

一週間の約束だが、既に三日経過している。

この様子じゃ、一週間どころか、二週間、一ヶ月、それ以上ここに居候するつもりなのだろうか…

「お前、仕事探すってどんな仕事探してんだよ」

昼間の仕事はイヤだ、肉体労働は疲れる、製造業は単調な作業だから飽きるだの、不満ばかり言ってる。

オレも男と同居するなんて初めてだから、多少の事は目をつぶっていたが、食って寝て、また食って寝るという、堕落した生活だ。
これじゃ、豚みたいな丸顔のキャバ嬢も愛想つかすだろう。


「お前さぁ、実家あるんだろ?実家に帰ったらどうなんだよ」

実家に帰れと促すが、山下は頑として帰りたくないと言う。

「冗談じゃねえよ、オレの実家は東北だぞ?実家に戻っても農業しかやること無いんだぞ」

実家があるだけマシだ。
オレなんか帰る所が無いというのに。

天涯孤独の身になったオレからすれば、贅沢だ。

「農業だっていいじゃねえか!それで野菜でも作ってりゃいいだろ、田舎もんの分際で、無理して都会になんか来るな!」

「あぁ、誰が田舎もんだ?」

「テメーだよ、このカントリーヤローが!」

「んだと、こらぁ!」

「やんのか、おいっ!」

…毎日こんなやり取りだ。

コイツはヒモ体質だ。
オレもそういうとこがあるから、コイツの言う事は分からないでもない。

だが、オレとコイツの違うとこは、オレは女に養ってくれ、だなんて一言も言った事が無い。
だが、コイツはハナっから養ってくれと言う。



同じヒモ体質でも、全く違うタイプだ。

オレだって、働かないで楽して過ごしたい。
十代の頃はそれが許されたし、相手から一緒に住もう、養子になってくれ、とまで言われた。
だが、23才になって、女に養ってくれ、なんてとても言えない。

それに、誰かと一緒に暮らすというのが、今のオレにとっては苦痛以外、なにものでもない。

ましてや、男同士で同居なんて…
当初は男同士で、色んな話をしてみるのもいいかな、なんて思って山下をアパートに住む事を許した。

家事も分担、飯代はコイツが払うという約束だった。

こんなヤツと住む事を仕方なく許したオレも悪い。

誰も信じないという気持ちは、今も変わらない。
だが、成人して、いつまでも斜に構えて人を寄せ付けないなんて事は難しい。


大人になれば、多少の人脈がないと、色々と不便だ。

だからオレは顔には出さず、普通に接する方法を覚えた。
そうは言っても、コイツと一緒で、働いては辞め、また働いては辞めるというだらしない日々を送ってきたが、今は少しでもそういう考えを払拭して、何があっても高校は卒業するという、鴨志田との約束を果たさなきゃならない。

オレの事はさておき、問題はコイツだ。

「おい、飯はどうした?」

「…いや、今日負けちゃったから」

またパチンコか…

「…じゃ何か?テメーが負けた日は、オレは何食えばいいんだ?」

「んー…かつお節に醤油かけて食うと中々美味いぜ」

「パチンコやる金あるなら、何か買ってこい、このバカ!」

山下に蹴りを見舞った。

「ってぇな、テメー!やろうってのか、コラァ!」

「おー、だったら今すぐここ出てけ!」

「…いや、後もう少しだけだから、な?頼むよ」

「…」

全く、どうしようもないバカだ。

「お前さ、何の仕事したいの?何か資格とかないのかよ?」

「車の免許ならあるぜ」

「じゃ、運送会社で働けばいいだろうが」

「運転しっぱなしなんて、ダルくて事故っちまうよ」

「じゃお前、最終学歴は?」

「…高校中退」

「お前は、肉体労働しか無いんだよ!額に汗してとことん働いてこい!」

「だからぁ、疲れるのはイヤなの?分かる?」

【ゴッ…】

思わずキレて、ヤツの顔面に左の拳を叩き込んだ。

「テメー、表出ろコラァ!」

「やってやろうじゃねえか!表出ろよ、おい!」

「上等だ、このヤロー!」

山下は靴を履いて、表に出た。

その隙にオレはドアを閉め、鍵をかけた。

【テメー、汚ぇぞ、こらぁ!】

ドンドンドンドンドン、とドアを叩くが、知らんぷりだ。
…要するに、働く気が無いんだろう。



こうなったら、沢渡さんに頼んでみようか。
そう思い、ドアをドンドン叩いてるのを無視して、沢渡さんに連絡した。
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