快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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新たな出発

麻薬中毒者(ジャンキー)となって

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凜は廃人になった。
オレは凜とは恋愛をするつもりは無かったが、長く付き合える間柄になるんじゃないかと思っていた。
だが、蓋を開ければ、オレをセレブのレンタル要員に誘い込む為に近づいただけだった。

ガラの悪い三人組を使い、オレを脅し、無理矢理レンタル要員の会員にさせようとしたのが凜の間違いだった。
そしてオレは報復として、その倍、いや何十倍もの仕返しをした。

その結果が廃人だ。


誰だって金に目が眩む。それは当然の事だ。
しかし、クズは金で裏切る。
中にはそうじゃないヤツもいるだろう。
だが、そんなヤツはいまだにお目にかかった事はない。


年が明け、オレは初詣の帰りに鴨志田が眠る墓に行った。
ここでは必ず、オレの近況を報告する。

ただそれだけなのだが、墓石を前に色々と自分の事を話すと、黙って聞いてくれるような感じがするのだ。


正月休みが終わり、日常の生活に戻り、オレは仕事に学校にと行く日々を送った。

そんな休日、沢渡さんから連絡があった。

【もしもし、亮輔くんか?お母さんが見つかったらしい】

母が見つかった?
ホントなのか?

「ホントですか?で、母は今どこに」

【…】

沢渡さんは無言だった。

「沢渡さん、どこにいるんですか、母は?」

やや間があって沢渡さんは重い口を開いた。

【コロンビアで見つかったらしい。かなり衰弱して、日本大使館の付近で倒れていたのを発見されたみたいだ】

衰弱?身体は大丈夫なんだろうか?

「衰弱ってのはどういう意味ですか?」

【…亮輔くん。残念だが、お母さんはもう以前のお母さんじゃなくなってる。
どうやら向こうでタチの悪いマフィアの連中相手に売春をしてたみたいだが、問題なのはドラッグ漬けにされて、ほぼ廃人同然らしい】

廃人!まさか凜のようになったのか?

「で、母は日本に帰ってこれるんですか?」

【…うん、だがかなりのドラッグの量を使ったせいか、麻薬中毒者になってしまったらしい。
帰国しても、すぐに面会という訳にはいかないみたいなんだ】

そんな!麻薬中毒なんて…

「で、母は帰国したら逮捕されるんですか?」

【それはまだ分からない。とにかく今はドラッグ漬けになった身体を治療させないと】

「あの、…母は元に戻る事は出きるんでしょうか?」

【…何せドラッグは人を滅ぼすクスリだからね。今の状況では何とも…】

「そんな…」

【亮輔くん、とにかくこれから空港へ行くのだが、君も来れるか?】

「勿論、行きます、行かせてください!」

母が見つかったという知らせより、ドラッグ浸けで変わり果てた姿になった事の方がショックだった。

南米に飛ばされて売春を強いられてたのか…

あの男のせいで!

オレは沢渡さんが迎えに来てくれた車に乗り込んだ。

「お母さんはいわゆる逃亡犯罪人引渡法にはならないから犯罪者という扱いはされないと思うんだが、ただ麻薬中毒という事もあって、どうなるかは警察の判断に任せるしかないみたいだ」

「だってオフクロは、兄にはめられて海外に飛ばされたんですよ!これって人身売買の被害者じゃないですか!沢渡さん、何とかならないですか?」

オレは沢渡さんに頼るのは止めようと誓ったのだが、オフクロの件となれば話は別だ。

「亮輔くん…」

「はい」

沢渡さんの顔がバックミラー越しに沈痛な表情を浮かべ話をした。

「もう1つ君に伝えなければならない事があるんだが」

「何ですか?」

「…実は会社が…つまりお兄さんが社長だった時に、あちこちに店舗を構えたのはいいんだが、どれもこれも業績が悪化して、今や大赤字で会社は倒産寸前なんだ」

会社が?

「それ、ホントなんですか?」

「…亮輔くん、私は君にウソはつかない。いくら私が社長になってその穴埋めをしようと努力したんだが…時すでに遅しで。
仕方なく民事再生法を申請して、大手のグループに吸収される形となってしまった。全く、あんな事さえなければ…」

あんな事っていうは兄の事だろう。
あのクズ、死んでも人に迷惑かけやがって!

「で、沢渡さんはどうなるんですか?」

「…まぁ私は社長としてあの会社にいたが、吸収されたら私はお払い箱だ…せいぜい何の意味もない肩書きの役員になるしかないだろう」

「…そうだったんですか」

「亮輔くん、すまない。君をサポートすると言いながらこんな結果になってしまうとは…」

「…はい」

その間は無言のまま、空港に着いた。

ロビーでは母の帰国を今か今かと待っていた。

「あの便かもしれない」 

沢渡さんは窓の外に着陸しようとしている飛行機を指した。

あの便にオフクロが…

しばらく待っていると、車椅子姿の女性が何人かの警察に囲まれるようにして現れた。

…!あれが母か?

オレは絶句した。

あの妖艶で豊満な肉体の面影は無く、痩せこけ、老婆のように変わり果ててしまった。

「オフクローっ!」

「社長!」

オレも沢渡さんも母に声をかけたが、全く反応は無かった。

母は警察に身柄を拘束され、衰弱しきった身体の治療が先決の為、救急車に乗せられて行った。

…あれが母だと?
ウソだろ?

オレは呆然と立ち尽くしていた。
隣で沢渡さんが目を潤ませ、母が出ていった方向を見つめていた。

まさか、凜を廃人にしたオレに対する因果応報なのか。
それとも兄の怨念なのか。

また頭の中で兄の幻影が浮かび上がった…
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