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7話

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「今日も、よろしくな!もうこの面子でも慣れてきたから……、レベルアップをはかりたいんだけど良いか?」
「今日は前回よりもさらに森の奥に進もうと思うんだけれど、イザベルとルーナ嬢の2人は大丈夫?」
「「はい。構いません」」

本日2回目の『魔物討伐実習』

今日もルーナの逆さてるてる坊主は効果が無く、ルーナの寮の窓で大量に吊るされている。
1度、イレーネがその禍々しい儀式を見てしまい精神的負担を心配したイレーネが翌日ルーナにスイーツの差し入れをした。

2回目ということで前回よりも森の奥に進むことになったルーナ達。
因みにルーナは先程ギルバートとベルンハルトがアイコンタクトをしたのを見逃さず、やる気が15%アップした。猫かぶりも絶好調で微笑みを絶やしていない。

ルーナ達が『魔物討伐実習』を行なっているこの森は森の奥に進むにつれて、魔物のランクも上がるというどこぞのRPGゲームのようなご親切仕様な森だ。

魔物ランクもRPGゲームの如くSランクからFランクまでランク付けされており、先日ルーナ達のグループはE、Fランクの魔物が出没するエリアで実習を行った。

一角ネズミやホーンラビットのような小動物にハロウィン仕様の角を生やした見た目にも戦闘力的にも可愛らしい魔物しか出没しなかった。
ギルバートの炎魔法を付与した剣で切り裂き、ベルンハルトの氷魔法で氷漬け、イザベルの矢で撃ち抜いたりと割合余裕を持って討伐を終えた。

ほぼルーナはかすり傷を負った3人の治療くらいしか出番が無く、存分に2人の観察を行なっていた。

前回の実習で経験値と自信を得た4人は森の奥へと踏み入ることにした。
さくさくさくと足を動かし新緑の緑鮮やかな森を進んでいく、しかし今日は全くE、Fランクの魔物に遭遇しない。ましてや、小動物さえもだ。

「なぁ……、なんでこんなに静かなんだ……??」
「そうだね……、他の実習のグループが通った後?にしても全く魔物が姿を表さないなんてことがあり得るのかな?」

常に皆の1歩前を先頭切って歩くギルバートが周囲を警戒するように見渡し、剣の柄にそっと手を添えながら訝しげな声を上げる。
ベルンハルトも同意するように周囲の気配を探るように目を細め辺りを見渡す。

そんな2人の警戒心を煽るように見上げた空に、暗澹たる雲が空を覆い拡がり始めていた。

2人の警戒した様子を視界に入れながら、ルーナは後方でこそっと魔法を展開する。風魔法と土魔法を組み合わせ、前世で言うところのソナーの代わりとして風魔法で空気の揺れを、土魔法で地面の揺れを音の代わりに探知する。

こんな事をしているとギルバートにバレたら怒られるので、少し2人より距離を取って使う。

まだルーナ達の視界には入ってはいないが、大型の魔物と大量の小さな魔物達がこちらに向かって猛スピードで向かっている。
ルーナはゾクリと背筋に冷たいものが走り、バクバクと知らず知らずに心臓が早鐘をうっていく。

猫かぶりをするのもわすれ、身体強化魔法を自身の身体に掛ける。幼馴染のギルバートに向かい全力で駆け寄っていくルーナ。
突然、ルーナが横から現れ、驚いているギルバートを無視して、腕を掴みながら声を荒げる。

「ギルっ!今すぐ逃げるよっ!大型の魔物と小さな魔物達の大群がこのままだとこちらにくる!」
「はぁっ?!ルーナ突然何いってんだよっ?!」
「だからっ!魔法で探知したのっ!速くしないと——」

刹那、大型の熊をより禍々しく変化させたBランクの魔物である「ブラッディベア」の咆哮が鼓膜を破らんと森全体を揺るがした。
口喧嘩をしているルーナとギルバート、その様子を目を丸くしてみつづけていたベルンハルト、扇子で蒸し暑さにより噴き出た汗を引かせていたイザベルの動きがピタリと止まる。

何とも厨ニ心を擽る名前の「ブラッディベア」だが、その名の通り、凶暴な魔物だ。熊の数倍の巨体であるが俊敏性が高く、かなり速く動き回りながら大きな鉤爪をつかい目の前の敵を一斬必殺。
しかも、体が固く防御性も高い。

Bランクの魔物で納得の熊さんだ。

そのブラッディベアが何故こんな低ランクの魔物しかいない森の入り口近くにいるかは不明だが、そのブラッディベアから逃げるように土埃を上げランクC、Dの魔物であるワイルドボアやシルバーウルフがルーナ達に迫り来る。

ギルバートやベルンハルトは迫り来る土埃から視線を逸らさず、佩いた剣の柄に手を掛ける。
しかし、こんな大量の魔物や今迄相手したことが無い高ランクの魔物相手である。
緊張で手はじっとりと汗ばみ、剣を握る手はカタカタ小刻みに震える。震えた手を叱咤するように力を入れて剣を握るために白く変色し、肩が縮み力んで仕舞っている。

間合いをはかるため、じっとその時を息を潜め待つ2人。5m程の距離まで土埃の先頭を切っていた魔物が近付いてきた。足元をネズミやうさぎ等の小動物達が逃げ惑うように駆け抜けていく。
2人が示し合わせたように、直ぐに飛びかかっていけるように腰を落とした瞬間、甘い花のような香りが2人の鼻先を掠め——

——瞬きもできぬ間に凛とした声が高潔に響く。

「絶対凍土!!」

2人の視界に突然飛び込んできた桃色のポニーテールを揺らす小さな少女の背中。

その先には先程土埃を上げて近付いていた魔物達の群れの足元に氷の海が拡がっていた。

冬の山の中に突然迷い込んでしまった錯覚を起こす程の凍てつく風が2人の頬を撫でつけた。
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