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8話
しおりを挟む「よしっ!足止め完了!!」
満足気に、ムンっと小さくガッツポーズをするルーナ。
くるりと直ぐに身を翻し、後ろで石像のように固まっている2人に声をかける。
「えっ?!まぁいいや!ギル?!」
「あ、はい……」
ギルバートの真正面向き直り、すぅっと息を吸い、声を低め真面目な顔をしながら声を掛けるルーナ。
「ギルバート・レクラム。ヘルゲン家長女、ルーナの名の元に命じます。
ベルンハルト王太子殿下を必ず無事にお帰しするため、死力を尽くしなさい。
私も自重をせず、持てる力全てを用いサポートします。よろしいですね?」
「御意に」
恭しく頭を垂れるギルバート。
「ま、待ってくれ!私も一緒に戦わせてくれ!その為に『騎士科』に入学したんだっ!」
2人のやり取りに割り込むように、普段柔和なベルンハルトが珍しく感情を顕にしながら口を挟む。その菫色の瞳には激しい決意が溢れている。
「ですが……」
ルーナは王国に与する貴族子女としてその意向に沿うということは、未来の国王を……と逡巡するルーナ。
「いいじゃねーか!ルーナがサポートしてくれるんだろ?お前が迷うなんてらしく無いぞ。
いつものように『ゴリ押しで何とかなる』って言えよ!」
ギルバートがルーナの背中をポンっと叩きながら、ベルンハルトに視線を投げかけ挑戦的な笑顔を浮かべる。
そんなギルバートの後押しをうけ、ルーナはベルンハルトとギルバートに向き直り2人を見据える。
「不肖、ルーナ・ヘルゲン。全力でお二人のサポートをさせていただきます」
するとルーナが2人の背中に回り、両手を2人の背中にあてながらが一言一言、祈るように丁寧に言葉を紡ぐ。
「勇ましき騎士たちの身を護らん。《身体強化》防御力30%増。
《身体強化》攻撃力3倍、速度3倍」
ルーナが言葉を言い終えた刹那。
ギルバートとベルンハルトにキラキラ煌めく金色の光が降り注ぐ。やがて金色の膜となり2人の身体を包み込んだ。
ギルバートとベルンハルトは光の膜に覆われたと同時に身体の奥底からじんわりと温かくも激しい力が漲るのを感じた。
両手を握りしめたり、足を上げたりしながら何かを確認するような仕草を繰り返す2人をルーナは穏やかに微笑みながら見つめ、最後にカーテシーとともに言葉を贈る。
「高潔な騎士たるお二人方にご武運を」
頭を挙げたルーナはそのまま踵を返しながら「私はイザベル様の方へ行きます!」と言い振り返ることなく駆け出した。
その背中を見送った2人は武器を持ち、目の前に拡がる氷の海に全く躊いの無い足取りで真っ直ぐ向かっていった。
満足気に、ムンっと小さくガッツポーズをするルーナ。
くるりと直ぐに身を翻し、後ろで石像のように固まっている2人に声をかける。
「えっ?!まぁいいや!ギル?!」
「あ、はい……」
ギルバートの真正面向き直り、すぅっと息を吸い、声を低め真面目な顔をしながら声を掛けるルーナ。
「ギルバート・レクラム。ヘルゲン家長女、ルーナの名の元に命じます。
ベルンハルト王太子殿下を必ず無事にお帰しするため、死力を尽くしなさい。
私も自重をせず、持てる力全てを用いサポートします。よろしいですね?」
「御意に」
恭しく頭を垂れるギルバート。
「ま、待ってくれ!私も一緒に戦わせてくれ!その為に『騎士科』に入学したんだっ!」
2人のやり取りに割り込むように、普段柔和なベルンハルトが珍しく感情を顕にしながら口を挟む。その菫色の瞳には激しい決意が溢れている。
「ですが……」
ルーナは王国に与する貴族子女としてその意向に沿うということは、未来の国王を……と逡巡するルーナ。
「いいじゃねーか!ルーナがサポートしてくれるんだろ?お前が迷うなんてらしく無いぞ。
いつものように『ゴリ押しで何とかなる』って言えよ!」
ギルバートがルーナの背中をポンっと叩きながら、ベルンハルトに視線を投げかけ挑戦的な笑顔を浮かべる。
そんなギルバートの後押しをうけ、ルーナはベルンハルトとギルバートに向き直り2人を見据える。
「不肖、ルーナ・ヘルゲン。全力でお二人のサポートをさせていただきます」
するとルーナが2人の背中に回り、両手を2人の背中にあてながらが一言一言、祈るように丁寧に言葉を紡ぐ。
「勇ましき騎士たちの身を護らん。《身体強化》防御力30%増。
《身体強化》攻撃力3倍、速度3倍」
ルーナが言葉を言い終えた刹那。
ギルバートとベルンハルトにキラキラ煌めく金色の光が降り注ぐ。やがて金色の膜となり2人の身体を包み込んだ。
ギルバートとベルンハルトは光の膜に覆われたと同時に身体の奥底からじんわりと温かくも激しい力が漲るのを感じた。
両手を握りしめたり、足を上げたりしながら何かを確認するような仕草を繰り返す2人をルーナは穏やかに微笑みながら見つめ、最後にカーテシーとともに言葉を贈る。
「高潔な騎士たるお二人方にご武運を」
頭を挙げたルーナはそのまま踵を返しながら「私はイザベル様の方へ行きます!」と言い振り返ることなく駆け出した。
その背中を見送った2人は武器を持ち、目の前に拡がる氷の海に全く躊いの無い足取りで真っ直ぐ向かっていった。
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