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◆第二章◆
Episode11: 隠し部屋
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「玲二様! ご無事で良かったです」
「誘拐の可能性は低いんだろ? 俺のほうは心配しなくてもこの通りだ」
「しかし……ご主人様はどこへ行かれてしまったのでしょう」
使用人たちが首をかしげる。
「家の中は全て探したんだろうな?」
「はい、勿論でございます。ご主人様の大部屋、我々使用人の部屋、失礼とは存じますが玲二様のお部屋も全て確かめさせて頂きました」
義父は、もういい歳だ。介助無しに歩くのが大変な老体で、どうやって行方知れずになるというのか。しかも、この時間だ。とっくに真夜中である。
「この家、セキュリティーは高いハズだからな……。連れ去られた可能性は低そうなんだが」
失踪ねぇ……。火事が起きても部屋を守るんだとか言いそうな、堅物の義父が行方不明――か。
「ところで、そちらのお嬢様は……?」
「アンタでも知らないのか」
結良がこの家に居たことを知らなかったのは、俺だけではないらしい。
ウチにいる、三人の使用人――その中でも、少なくとも俺が外に出られるようになった時には既にウチで働いていた一人でさえ、結良を初めて見かけるという。
「おいおい……どうなってんだ」
食事から何から、全て使用人が回している家だ。そんなことがありえるのか?
そこで、俺はふと気づいた。
「結良、そういえばお前が居たのはどの部屋だ」
十年間、同じ家に居て気づかなかったのだ。何か隠し部屋でもあるんじゃなかろうか。
「おっきい部屋から、階段を下りたところ」
「は? 階段??」
ウチに階段は無いはずだ。
そもそも、フロントには二階建ての家など存在しない。
あるとすれば……。
「もしかしてこの家、第五層にも続いてんのか?」
それくらいしか考えられないのだ。
大きな部屋――結良によれば、それは義父の部屋だった。
「結良、どこに階段なんかあるんだ」
この部屋は、よくわからない絵画や彫金装飾で埋め尽くされている以外は、義父の大きなテーブルと本棚しか無い。
すると、結良が すたすたと大理石のテーブルのほうへと向かっていく。
「ここ」
いや待て、そこはテーブルだ。
……だが、よく見ればいつもと少々位置がずれている気がする。
「もしかして……」
軽く数百キロはありそうなテーブルだが、二人がかりで力を加えると、ゴゴゴっと音を立てて右へとスライドした。
テーブルがもとあった位置に、隠し階段が姿を現す。
「マジか」
テーブルは底板つきだった。おそらく下部にキャスターでも付いているのだろう。
階段は、予想通り直下の第五層へ繋がっているらしかった。
……しかし、何かが引っ掛かる。
まず、結良が外に出られたということは誰かがテーブルをずらしたということだろう。
使用人が知らないということは、普通に考えれば義父だ。
だが、老体の義父がどうやってテーブルをずらしたんだ?
それに。
そもそも、義父が仮にこの下に居るとして、では誰がテーブルを元の位置に戻したと言うんだ?
「すまんが、誰か外で待っててくれ」
三人の使用人のうちひとりを指名して、待機させることにする。
全員で入って、監禁状態になるのは御免だ。
俺、結良、使用人二人の四人で下ることにした。
冀くは、懸念が現実にならんことを――。
「誘拐の可能性は低いんだろ? 俺のほうは心配しなくてもこの通りだ」
「しかし……ご主人様はどこへ行かれてしまったのでしょう」
使用人たちが首をかしげる。
「家の中は全て探したんだろうな?」
「はい、勿論でございます。ご主人様の大部屋、我々使用人の部屋、失礼とは存じますが玲二様のお部屋も全て確かめさせて頂きました」
義父は、もういい歳だ。介助無しに歩くのが大変な老体で、どうやって行方知れずになるというのか。しかも、この時間だ。とっくに真夜中である。
「この家、セキュリティーは高いハズだからな……。連れ去られた可能性は低そうなんだが」
失踪ねぇ……。火事が起きても部屋を守るんだとか言いそうな、堅物の義父が行方不明――か。
「ところで、そちらのお嬢様は……?」
「アンタでも知らないのか」
結良がこの家に居たことを知らなかったのは、俺だけではないらしい。
ウチにいる、三人の使用人――その中でも、少なくとも俺が外に出られるようになった時には既にウチで働いていた一人でさえ、結良を初めて見かけるという。
「おいおい……どうなってんだ」
食事から何から、全て使用人が回している家だ。そんなことがありえるのか?
そこで、俺はふと気づいた。
「結良、そういえばお前が居たのはどの部屋だ」
十年間、同じ家に居て気づかなかったのだ。何か隠し部屋でもあるんじゃなかろうか。
「おっきい部屋から、階段を下りたところ」
「は? 階段??」
ウチに階段は無いはずだ。
そもそも、フロントには二階建ての家など存在しない。
あるとすれば……。
「もしかしてこの家、第五層にも続いてんのか?」
それくらいしか考えられないのだ。
大きな部屋――結良によれば、それは義父の部屋だった。
「結良、どこに階段なんかあるんだ」
この部屋は、よくわからない絵画や彫金装飾で埋め尽くされている以外は、義父の大きなテーブルと本棚しか無い。
すると、結良が すたすたと大理石のテーブルのほうへと向かっていく。
「ここ」
いや待て、そこはテーブルだ。
……だが、よく見ればいつもと少々位置がずれている気がする。
「もしかして……」
軽く数百キロはありそうなテーブルだが、二人がかりで力を加えると、ゴゴゴっと音を立てて右へとスライドした。
テーブルがもとあった位置に、隠し階段が姿を現す。
「マジか」
テーブルは底板つきだった。おそらく下部にキャスターでも付いているのだろう。
階段は、予想通り直下の第五層へ繋がっているらしかった。
……しかし、何かが引っ掛かる。
まず、結良が外に出られたということは誰かがテーブルをずらしたということだろう。
使用人が知らないということは、普通に考えれば義父だ。
だが、老体の義父がどうやってテーブルをずらしたんだ?
それに。
そもそも、義父が仮にこの下に居るとして、では誰がテーブルを元の位置に戻したと言うんだ?
「すまんが、誰か外で待っててくれ」
三人の使用人のうちひとりを指名して、待機させることにする。
全員で入って、監禁状態になるのは御免だ。
俺、結良、使用人二人の四人で下ることにした。
冀くは、懸念が現実にならんことを――。
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