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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

211 同じ主に仕えしもの

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 来た道を戻りギルドに着くと、先程モルトがテイムモンスターの登録手続きを頼んでいた職員が、カズに気付き声をかけてきた。
 渡してあったバードリングをカズに返し、仮登録の物と付け替えるように言われた。
 カズはフジから仮登録時に付けたベルトを外し、バードリングを新たに付けた。

「キツくないか?」

「『だいじょうぶ』」

「なら良かった」

 カズはフジに付けていたベルトを職員に渡し、ギルドを出る。

「さてと、やる事も終わったし、王都を出てマイヒメと合流するか」

「『お母さんとこ行く!』」

 カズは人気のない路地裏まで来ると〈ゲート〉で王都の外へと移動した。
 そこでマイヒメに合図を送り、自分達が居る場所を教える。
 カズの魔力を感知して、マイヒメはカズとフジ居る所に降りて来る。

「『カズ。急に場所を移動するの、なんとかならない? 坊やの居場所が分からなくなって、不安になるわ』」

「ごめん。連絡出来るようしてみるよ。だからマイヒメも、これ付けてくれるかな?」

「『なぁにそれ?』」

「俺が作ったバードリング。フジみたいに足に付けるんだよ」

「『フジ? 坊やのこと?』」

「あ、そうそう。フジって名前にしたんだけど、やっぱり変かな?」

「『フジ……カズが付けたなら良いわよ』」

「そ、そう(あっさりと受け入れたな)」

「『それで坊…フジ坊に付けてあるそれをワタシにも』」

「ああ。ギルトにテイムモンスターとして登録すると、こんな感じの物を付けることになるんだ。ギルトの物より、俺が作った物なら良いかと思って(あとで色々と、付与するつもりだから)」

「『まぁ良いわ』」

「そう。マイヒメの登録はまだだけど、試しに付けてみるよ」

 カズはマイヒメの足に、バードリングを装着した。

「キツかったり違和感があったら言ってくれ。調整するから」

「『少し緩いわね。これじゃあ飛んでると揺れて気になるわ』」

「それじゃあ、ちょっと狭めるよ」

 カズはマイヒメに付けたバードリングに手をかざし、スキルで大きさを調整した。

「どう?」

「『さっきよりは良いわ』」

「じゃあ試しに、念話を付与してみるよ。使えれば良いんだけど」

 今度はマイヒメとフジのバードリングに念話の《付与》を試みた。

「足のリングに魔力を流して、俺に向けて念じ話し掛けてくれ」

「『念じ?』」

「念話とかテレパシーって分かる? 声に出さずに相手に向けて話し掛けるの」

「『……る……しら』」

「もう一回話し掛けてみて。今度はもう少し使用する魔力を増やして」

「『ワタシの声が、聞こえるかしら。これで良い?』」

「『聞こえた。俺の声は聞こえる?』」

「『聞こえるわ。直接声が伝わって来るなんて、変な感じね』」

「使ってれば慣れるよ。じゃあ今度はフジと俺。そしてマイヒメとフジでやってみよう」

 この後少しの間、マイヒメとフジはカズと念話の練習をした。

「あとは念話が使える距離とかを調べれば、連絡が取りやすくなるよ」

「『これは良いわね。ワタシがこんな事できるなんて驚きだわ』」

「うまくいって良かったよ。フジは魔力がまだ少ないから、長距離や長話は難しいかな」

「『カズは面白いわ。他にも色々な事を体験したいわ』」

「考えておく。それじゃあ、そろそろ出発しよう。アヴァランチェに用があるんだ」

「『ならフジ坊と背中に乗って。ワタシが運ぶわ』」

「そうか。じゃあ頼むよ。俺がアヴァランチェに居る間は、フジに狩りでも教えててよ。街も王都程広くはないし、念話で連絡も出来そうだから」

「『そうね。じゃあ行くわよ』」

 カズとフジが背中に乗るのを確認したマイヒメは、大空高く飛びカズが指示した方へと飛んで行く。
 今回はカズとフジしか乗っていないので、飛ぶ速度は、キウイを乗せていた時より遥かに速い。

「そうだ。アヴァランチェに行く前に、マイヒメ達に紹介しておくよ」

「『誰かしら』」

「獣魔契約した、白真っての」

「『カズが獣魔契約した相手。それは楽しみだわ(ワタシと同列くらい強いモンスターに違いないわね)』」

「あそこの、正面に見える雪山の頂上へ向かってくれ。一応マイヒメ達に、寒冷耐性を与えるから、そんなに寒くない思うから」

 カズは横に居るフジと、乗っているマイヒメに〈プロテクション〉を使い、寒冷耐性を与えた。
 雪山に近づくと、カズかある場所に降りるようマイヒメに伝えた。

「『こんなに雪が積もってるのに、そんなに寒くないわね』」

「『わーいまっしろ。ふわふわで冷た~い』」

 フジがマイヒメから降りると、周囲にある雪に飛び込みはしゃぐ。

「おーい白真。起きてるか?」

 カズが白真を呼ぶが返事はない。

「おーい……おぉーい!」

「『居ないの?』」

「すぐそこだから、ちょっと寝床を見てくるよ。フジと遊んでて」

 カズが白真の寝床に行くが、そこに白真の姿はなかった。
 カズは場所を間違えたかと思い【マップ】を見て白真の位置を確認する。
 すると唯一あるモンスター反応が、離れた場所から、マイヒメ達が居る所に近づいていた。

「なんだお前らは? この辺りでは見ないものだな」

「『うわ~、お母さんより大きい』」

「『フジ坊危険よ! こっちに来て!』」

「我の領域に無断で入り込むとは、覚悟は出来ておろう」

「『何よコイツ! こんな奴が居るのて……せめてフジ坊だけでも』」

 臨戦態勢をとるマイヒメと、雪の中に降り立つ白真が見合う。
 マイヒメは震えながらもフジを隠し守ろうとする。
 白真は目の前に居る、見慣れぬ怪鳥の親子をじっと観察し、足に付いているリングにある魔力を感じとる。

「『な、何よ! ただじゃ殺られないわよ!』」

「お前ら、カ…」

 白真が見慣れぬ怪鳥に話し掛けたその時、よく知った声が、自分の寝床の方から聞こえてきた。

「ああ居た居た。寝てると思ってたら、どっか行ってたのか?」

「『カ、カズ!』」

「カズ。来る時は念話で、先に知らせると言っておったではないか」

「ぁぁ……忘れてた。すぐ近くに来てたもんで、寄ったんだよ」

「こやつらはカズが連れてきたのか? 足に付けている物から、カズの魔力を感じたが」

「そう。白真に紹介しておこうと思って。テイムする事になったマイヒメと、その子供のフジだ」

「テイムか。カズに使える者が、我だけでは不服。ということか?」

「不服じゃないけど、なんて言うか成り行きで」

「そうか。まぁ良い。先に連絡をせんから、侵入者かと思うたぞ」

「それはすまない。とりあえず紹介しておく。今言ったように、ライジングホークのマイヒメとフジ。それでこっちがフロストドラゴンの白真。お互いによろしくってことで」

 カズが紹介し終わると、マイヒメがカズに近づいて行く。

「どうしたのマイヒメ?」

「『……どうしたのじゃないわよ!! 先日助かったと思ったそうそう、もっと恐ろしいのが現れて、死ぬかと思ったわ!』」

 マイヒメがカズに詰め寄り、怒鳴り付ける。 

「あれ、獣魔契約してるのが、フロストドラゴンだって言ってなかったっけ」

「『言ってないわよ! 怖くて怖くて、フジ坊を連れて逃げようとしたけど、全身が震えて動けなかったのよぉ』」

「こ、ごめん」

 マイヒメが震えて泣いているのを見て、悪い事をしたと反省するカズ。
 フジはひょっこりと、マイヒメの後ろから出てくる。

「『お母さんだいじょうぶ? どこか痛いの?』」

「『……大丈夫よ。どこも痛くないから。全部カズが悪いの』」

「『カズが悪いの?』」

「ぅ……ハッキリ言うな。ああ今回は言い忘れた俺が悪い。ごめん」

 カズの様子を見ていた白真が、ニタニタと笑っていた。
 カズがそれに気付き視線を白真に向けると、そっぽを向いて誤魔化す。

「ごめんよマイヒメ」

「『もういいわよ。これからは気を付けてよ』」

「分かった。それじゃあ、俺はアヴァランチェに行ってくるから、良ければ白真とマイヒメ達で、話でもしててよ」

「我は構わぬぞ。腹も満たし退屈していたとこだ」

「マイヒメはどう?」

「『た、食べられたりしないわよね』」

「何もしないから大丈夫。そうだろ白真」

「我の機嫌を損ねなければな」

「『え!』」

「おい白真」

「冗談だ。カズが連れて来てのだから、何もせん」

「そういう事だそうだ。まぁ嫌ならフジを狩りに連れて行けば良いよ」

「『そうしようかしら。フジ坊もお腹が空いてる様だし』」

「俺がアヴァランチェに行ってる間、好きに過ごしてくれ。白真が何かしたなら言ってくれ。お仕置きとして、新しい魔法やスキルを試す時の、的にでもなってもらうから」

「な、何もせんと言っておろうが! 恐ろしい事を言うでない!」

「じゃあ行って来るから、マイヒメとフジをよろしくな。白真」

 カズは〈フライ〉を使い、飛んで下山して行った。
 残されたマイヒメは、ビクビクしながら白真と話を始めた。
 山を下り街道へと出たカズは、ものの数十分程で、アヴァランチェの東門に到着した。
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