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暗躍6

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目の前で起こっている惨劇に男は呆然と眺めていた。


「何なんだ・・何が起こっている?」


雇った男たちが一方的に切り刻まれ血を流していることに体の震えが止まらない。計画では王子を誘拐して国王を脅迫して王妃であるアランの身柄を拘束するつもりだった。それがまさかこんなことになるとは予想していなかった。

アランが放ったファイヤーボールが目に前でさく裂して馬車の破片が散乱するとともに男たちの悲鳴が轟く。

「ぎゃあああああ――――っ!!」
「た、助けてくれ――っ!」

爆風で馬車の車輪が宙を舞い男に襲い掛かる。


『な―――逃げられないっ!』


もうダメだと目をギュッと閉じた時、偶然なのか何かが飛んできてそれを阻止した。


どしゃ――――!


いつまで経ってもない衝撃に恐る恐る目を開け視界に入ったのは誰のものかわからない腕だった。


「ひっ!」


そして、自身の手は飛んできた血で真赤に染まっていた。


「ひぃ・・な、なん・・で・・」


ブルブル震える手からは血が零れ落ち地面に滴り落ちていく。それを慌ててハンカチで拭きとるがそれだけでは拭いきれず服にこすりつけた。


「血が・・はっ・・な、何で・・・・」


誘拐した王子の顔を拝みに来たのが間違いだったと気づいてももう遅い。

冷静であれば王子を盾にして逃げれたかもしれない。だが、この惨状を目の当たりにした恐怖でそんな考えは頭にはなかった。

だから、背後から忍び寄る気配に気づくのが遅れた。



「拘束――」



体が硬直してバランスを崩して顔から地面に倒れこんだ。


「ぎゃっ!」


痛みを堪えていると上から声が聞こえて来た。


「やっぱりお前が黒幕か?」


恐る恐る顔を上げると、そこには欲しかったアラン王妃の姿があった。


「おおっ!アラン王妃ではないですか――」

ヘルス公爵はここで大きな勘違いをしていた。男たちがアランを連れてきたのだと。







薄ら笑いをするヘルス公爵にアランは反吐が出そうだった。

「何をへらへら笑っている?」

「え?何をって・・私に会いにきたのでしょう?」

「・・・はあ?」

「大丈夫ですよ。陛下には秘密にして差し上げますから・・」


秘密って、レイルはすぐそこにいるんだけど、こいつ見えていないのか?

怪訝な顔で睨むアランに気付かず、べらべらと話し始める。


「ああ、愛しのアラン、さあ私と愛の巣に行きましょう・・」

うっとりしながら話すヘルス公爵にアランは引きつりその足が一歩下がった。



こいつ、変態かっ!



恍惚とした目で見つめられて寒気がした。そのアランの背後にいたレイルは黒いオーラをまといながらアランを庇うようにヘルス公爵の前に立ちふさがった。


「・・レイル陛下・・なぜあなたがここに?」
「なぜだと、我が子が拉致られてオレが黙っているとでも思ったのか?」

顔色を悪くしたヘルス公爵にレイルは容赦なく殺気を放つ。


「ひっ!」



あっけなく拘束されたヘルス公爵にレイルは怒りが治まらず転がっている彼に蹴りを入れた。


「ぎゃっ!」


「貴様目的はなんだ?」

ドスの利いた声にヘルス公爵は苦痛に耐えながら薄ら笑いを漏らした。


「何って、アランを我が物にしルイ陛下に国王の座を降りてもらうために決まっているでしょう。そして私が新国王として鎮座する・・・・いい案だと思いませんか?」


「貴様っ!」


レイルの怒りが頂点に達し剣が彼の足に突き刺さった。

「ぎゃあっあああああああ――っ!!!」

「そんなことが許されると思っているのかっ!」

ぐりぐりと剣を突き刺したまま揺らしてより深く突き入れていく。

「うわああああ――っ!!い、痛い、や、やめっ」

「お前のような奴が国王になぞなれるわけがないだろうっ!今の国王に相応しいのはルイだけだ!それに例えルイが退いても次期国王は我が娘のルナだ!貴様ではないっ!!」


「ぐっああっ・・痛い!やめろっ!」

「オレたちを敵にまわしたことを悔いても許さんっ!」





*******************************


補足*

隣国はレイルの国に属国となり現在国王はルイですが次期国王の継承権はルナ王女です。つまりルナ王女は自国で王位継承は2位で隣国では次期国王となりますがそれはルイが急死した場合です。よってルイが結婚し子供が次期国王となります。

ややこしい設定ですみません。

BL小説大賞で、この度奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。




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