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暗躍5

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ガタガタと馬車が揺れる中、アランとレイルは隠密をかけ息を潜めて様子を窺っていた。彼らがいるのは奴らの馬車の上だ。振り落とされないようにロープをかけそれに摑まっていた。

国境が近づくにつれ灯りが大きくなり、緊張が走る。奴らがリオスと思っているのはアランが幻影をかけた人形だ。今はまだ、それに気づかれていないが取引になればバカでも気づくだろう。それを合図に奴らを捕まえるつもりだ。アリアもハインツも少し離れたところからついてきている。

アランたちの目的は黒幕がヘルス公爵かどうか確認するためでもある。まあ、本人があそこにいるとは思えないが公爵家の人間はいるだろう。



灯りを睨みながらレイルはアランに色目を使った奴が許せなかった。


『くそじじいめっ!オレのもんに色目を使いやがってっ!』


じわじわと殺気を放つレイルにアランも同調して行く。


『あのクソやろう。オレだけでなくリオスにまで手をだそうとするなんてなんて許せねえっ!』


ここにアリアがいれば、『アランをおびき出すためでしょう』と、ツッコミが入るだろうが、生憎アリアはここにはいない。


ヘルス公爵が絡んでいるとわかって苛立ってはいたが、子供たちのことを考え怒りよりも心配のほうが気持ちは大きかった。


それが今、解き放され怒りのボルテージが上がって行く。


『『オレたちに手を出したことを、後悔させてやるっ!』』


二人の気持ちが一体になったこの時、ヘルス公爵の結末は決まっていた。


取引相手の姿がぼんやりと見えて来た時、


「拘束・・」


静かにアランの魔法は飛ぶ。



「ギャッ――」
「うわぁっ――何だこれっ・・」
「――おい」
「き、奇襲だっ!」
「おい、どうなっているっ!」


混乱して騒ぐ奴らにレイルが馬車から飛び降りて剣を振り下ろす。


「ぎゃああああああ――っ」
「な、何が起こっている」

切られた仲間を見て慌てふためき反撃に出ようにも出来ず、餌食になって行く。

「―――フンっ」


無言で剣を振るうレイルに男たちは震えあがり、剣を構えるが腰が逃げて恐怖に凍り付く。


「な、何者だ?」
「まさか、あいつら失敗したのか?」
「くそっ!これでも食らええーっ!」

やけくそで男が放ったのはファイヤーボールだが威力が小さすぎてレイルはそれを剣で吹き飛ばした。


「ば、ばかなっ」
「ぎゃあああああーっ」

剣では敵わないと思ったのか弓矢えレイルを狙い矢を放つが届く前に弾かれる。


「な、何っ」


驚く男にアランのファイヤーボールがさく裂する。


せねえよっ!」


それは男が放った物よりも大きく威力は格段に違った。


「ぎゃああああああああああーっ!!」

火だるまになる仲間を目の前に傷だらけになった奴らは地面をはいながら逃げようとしたが、それをアランが見逃すわけもなく

「拘束・・」

魔法で拘束され地面に転がされ、殺気を放つ二人の圧力にひれ伏したのだった。







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