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暗躍
しおりを挟む僕の名はリオス。この国の第一王子だ。僕には双子の妹がいる。名前をルナという。僕たちはいつも一緒に行動していた。
今日もアリア伯母さま連れられて湖に遊びに来ていた。
「リオス、ルナ。護衛から離れないでくださいね」
「はい、伯母上・・」
馬車で数時間のところにあるこの湖の近くに王族所有の屋敷があって今日はそこでお泊りの予定だ。
「ルナもわかっているよね?」
「はい、伯父上」
二人でニッコリ笑ってみせると、アリアもハインツも嬉しそうにでも心配そうに微笑む。
「屋敷についたら着替えて食事をしてから出かけますからね」
「はいっ!」
「リオスっは何をするんんだい?」
「僕は釣りをしたいです」
「私はボートに乗りたい」
めったに王宮を出ることがない二人にとって今日は前からずっと楽しみにしていた。
陛下も王妃も忙しくてなかなか二人に構ってあげられず、悩んでいたところアリアが申し出てくれたのだ。
アランはいつも姉上に頼り切っていることに申し訳ないと思いつつも教育係という立場から任せえることにしたのだ。
護衛もつけたし、魔道具も持たせた。何よりアリアとハインツがいるのだから間違いはないと思った。
部屋に入ったリオスはホッとしてベッドに倒れこむ。数日前に起きた自分たちの誘拐未遂事件。あの後しばらくしてからお母さまから呼び出された。
「実はお前たち二人には囮になってもらう。と言っても見せかけで相手にはオレの幻影魔法でおびき寄せるけどな・・」
「えっと、事態がうまく呑み込めないんだけど?」
お母さまはいつも唐突でビックリさせられるんだよね。
「アラン、ちゃんと説明しろ?」
お父様にそう言われて「ああそうか・・」と気づく。
「先日、お前たちを襲った犯人だが、隣国のクソ公爵だと判明した」
「・・クソ公爵とは?」
「あー、あれだ。お前たちが生まれるまえにオレに言い寄って来たヘルス公爵だ。顔はいいんだけどオレを見る目つきがキモイ。あれは変態だ。何かとつけてオレに触れようとした。拒否したから被害はないが、ルイの話だとまだオレを諦めていないようだ。ホントしつこい野郎だ」
顔を歪めて身震いしているお母さまにお父様が優しく肩を抱く。
「大丈夫か・・」
「ああ、思い出しただけで気分が悪い」
「お母さま、横になりますか?」
「・・ありがとう。大丈夫だ」
お茶を一気に飲んで気持ちを落ち着かせると話を続ける。
「そのヘルス公爵だが腕の立つ手練れを集めていると影から伝達があった。」
「それって、まさか?」
「ああ、どうやらあいつはクーデターを起こすつもりらしい」
「ルイ陛下は何と?」
「もちろん、迎え撃つつもりだと・・だが公爵自身が怪しい動きをしているらいい。」
「どんな動きを?」
「お前たちを誘拐してルイをオレたちを脅して自分が王位につく。その企みのようだ」
「はあ?オレたちを誘拐?」
「ああ、前は未遂に終わったが今度は全力で仕掛けて来るだろう」
「何それ?許せないんだけどっ!」
話を聞いていた子供たちの魔力溢れ出ていることに気づいたアランとレイルはニヤッとする。
「そうだよな・・」
「許せないよな?」
「ええ、私たちを舐めているとしか思えませんわ」
「うんうんん、そうだよな」
こんな話をしておいて何故かニヤニヤしているアランにリオスとルナはあれっと違和感を持った。
「お母さま・・?」
「そうだよな、こんなのオレたちを舐めているとしか思えなよな?」
「え、ええ・・?」
「だからさ、こっちから仕掛けてやることにした」
「「へ・・?」」
アランのその言葉にリオスとルナは目をパチクリさせたのだった。
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