上 下
79 / 87

暗躍

しおりを挟む










僕の名はリオス。この国の第一王子だ。僕には双子の妹がいる。名前をルナという。僕たちはいつも一緒に行動していた。
今日もアリア伯母さま連れられて湖に遊びに来ていた。

「リオス、ルナ。護衛から離れないでくださいね」
「はい、伯母上・・」

馬車で数時間のところにあるこの湖の近くに王族所有の屋敷があって今日はそこでお泊りの予定だ。

「ルナもわかっているよね?」
「はい、伯父上」

二人でニッコリ笑ってみせると、アリアもハインツも嬉しそうにでも心配そうに微笑む。

「屋敷についたら着替えて食事をしてから出かけますからね」
「はいっ!」
「リオスっは何をするんんだい?」
「僕は釣りをしたいです」
「私はボートに乗りたい」

めったに王宮を出ることがない二人にとって今日は前からずっと楽しみにしていた。
陛下も王妃も忙しくてなかなか二人に構ってあげられず、悩んでいたところアリアが申し出てくれたのだ。
アランはいつも姉上に頼り切っていることに申し訳ないと思いつつも教育係という立場から任せえることにしたのだ。
護衛もつけたし、魔道具も持たせた。何よりアリアとハインツがいるのだから間違いはないと思った。




部屋に入ったリオスはホッとしてベッドに倒れこむ。数日前に起きた自分たちの誘拐未遂事件。あの後しばらくしてからお母さまから呼び出された。


「実はお前たち二人には囮になってもらう。と言っても見せかけで相手にはオレの幻影魔法でおびき寄せるけどな・・」

「えっと、事態がうまく呑み込めないんだけど?」

お母さまはいつも唐突でビックリさせられるんだよね。

「アラン、ちゃんと説明しろ?」

お父様にそう言われて「ああそうか・・」と気づく。


「先日、お前たちを襲った犯人だが、隣国のクソ公爵だと判明した」
「・・クソ公爵とは?」
「あー、あれだ。お前たちが生まれるまえにオレに言い寄って来たヘルス公爵だ。顔はいいんだけどオレを見る目つきがキモイ。あれは変態だ。何かとつけてオレに触れようとした。拒否したから被害はないが、ルイの話だとまだオレを諦めていないようだ。ホントしつこい野郎だ」

顔を歪めて身震いしているお母さまにお父様が優しく肩を抱く。

「大丈夫か・・」
「ああ、思い出しただけで気分が悪い」
「お母さま、横になりますか?」
「・・ありがとう。大丈夫だ」

お茶を一気に飲んで気持ちを落ち着かせると話を続ける。

「そのヘルス公爵だが腕の立つ手練れを集めていると影から伝達があった。」
「それって、まさか?」
「ああ、どうやらあいつはクーデターを起こすつもりらしい」
「ルイ陛下は何と?」
「もちろん、迎え撃つつもりだと・・だが公爵自身が怪しい動きをしているらいい。」
「どんな動きを?」
「お前たちを誘拐してルイをオレたちを脅して自分が王位につく。その企みのようだ」
「はあ?オレたちを誘拐?」
「ああ、前は未遂に終わったが今度は全力で仕掛けて来るだろう」
「何それ?許せないんだけどっ!」

話を聞いていた子供たちの魔力溢れ出ていることに気づいたアランとレイルはニヤッとする。

「そうだよな・・」
「許せないよな?」
「ええ、私たちを舐めているとしか思えませんわ」
「うんうんん、そうだよな」

こんな話をしておいて何故かニヤニヤしているアランにリオスとルナはあれっと違和感を持った。

「お母さま・・?」
「そうだよな、こんなのオレたちを舐めているとしか思えなよな?」
「え、ええ・・?」
「だからさ、こっちから仕掛けてやることにした」
「「へ・・?」」



アランのその言葉にリオスとルナは目をパチクリさせたのだった。



しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

公爵令息は悪女に誑かされた王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

聖賢者は悪女に誑かされた婚約者の王太子に婚約を破棄され追放されました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...