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残った者の宿題
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そうして暫く様子見の形で日常に戻るが、更に三日後には本家代表代理として各家に先の事件の詳細の通知、簡易であるが父親、慶の葬儀の執り行い。
これは大々的に行わず、必ずしも当主などの出席を必要としない旨、距離的に東西の中間付近にある静岡で民間の葬儀場を抑えた、との連絡を各方面に出した
事件から一週間後には葬儀が有る為、晴海・アヤネ・名雪が各家の代表血族に近い為出るが会場は大きいが簡易なモノで、署名、香典、焼香という形だけで直ぐ終わった
急に事が起こったので認知が追い付かない部分もあったが簡易な短時間とは言え「父親の葬儀」「死因がE案件」というのを現実に突き付けられるとあまり家族という印象も感情も無くても、やはり陰鬱な感覚に襲われる
別館の方で簡単な立食場があり、アヤネに促され、そちらに移動し同じ日に参加した顔見知りと其々遭遇する
というのも、集まって一斉に式典と言う形でなく、知る人ぞ知るという人物の葬儀なので数日開けっ放しで期間内に自由に来て参加等して貰う形だからである。当日晴海らは来たが
それ以外の繋がりのある財界、政界等の人物も来るからで この形になった
別館で当日組で来ていたのは京極の善幸と睦の長、六花という女性で名雪の母、始めての事なので双方に挨拶してお悔やみを告げられた後、まずは善とアヤネ、晴海で雑談になる
「大変な事になりましたな」
「そうですね、僕もまだ認知が追っつかない面もあります、それだけに喪失感みたいのは薄いですけど…」
「残った者は現世でやる事が残る、宿題をしている間はそれもあまり無いかもしれませんな」
「ところで襲撃、という事ですけど善さんはどうお考えですか?」
「懸念する事は多い、ですが物理的に出来る事は限られておりますからな、捜査出来る訳でもなく、原因を調べる事も難しい、ワシとしては既に泰斗殿から幾つか提案を受けているので出来る事をやる、という形になります」
「それは?」
「京極の方にも紙術、特に召喚の使える退魔士を警戒に出すように言ってきておりますな」
「神宮寺の方面に?」
「また本家襲撃等と云う事になっては目も当てられませんからな、警戒防衛は増やしたい所でしょう。それに、紙術の召喚は物理的に兵を増やす効果と、事前察知に使えるからです
羅針盤での察知が早ければ事の起こり前に見つける可能性もある事、紙犬等は猟犬のように小範囲であれば妖怪察知にも使えますし、被弾しても人的犠牲が出ない」
「なるほど、急に前線の人材は増やせないので、という事ですか」
「ただまあ、晴海様はご存じでしょうが、アレは召喚主の霊力に強く依存しますからな稼働時間も数倍違う」
「アヤネが使う式神?は初期は小さい狛犬みたいな感じでしたね、そういえば」
「左様です」
「それと、事態が事態ですのでワシもおそらく復帰する事になるでしょう、西側の対処は人員的に問題が多い」
「頼もしい事だとは思いますが大丈夫なんですか??」
「まあ、年齢とか戦闘力とかに依存しない業ですからな。それにワシも暇を持て余して居る所ですし、こういってはなんですが多少楽しみな面もあります」
「それなんですが、ウチでは初歩紙術をアヤネから希望する人に指導してるのですが召喚術等は無理なんでしょうか?」
「秘術以外は、特別絶対門外不出という事ではないので、4家直系の方なら構わないと思います、霊力が一定数以上無いとそもそも使えない、役に立たない、という制限の為、京極の一族で独占に近い形に成っているだけなので。その辺りの事を弁えて頂ければ構わないです」
「そう云う事ですか」
「実際、歴史の初期や中期は神宮寺から道具や術は各家に伝授されたりしていたので、現代で有効な技術交流が出来て、尚且つその者が扱えるなら左程問題にならない。問題はどの業も《霊力という才能に依存する》部分ですから、晴海様が良いと思うなら伝えても構いません」
「それに、現代でも他の家から教えを乞う方も居られますからな、幾人か指導した事もありますので問題ないでしょう」
「了解です、有難う御座います」
「いえ、事が事ですからな。晴海様の元に居る信頼と才能に恵まれた若者が我らの手法を使うというのは全体の強化には成りますからな、ただアヤネも未熟故、指導となるとどうなのかというのはありますが」
「が、がんばります」
「ま、何れにしろ、先どうなるかは分からない、やれることはやっておいた方がよい」
「はい」
「では、ワシは先に戻ります、やる事が多いのでね」
「あ、善幸さん」
「なんでしょう?」
「モバイル端末は使いますか?」
「それなりには」
「では、こちらの組織の情報を共有して置きたいのですが」
「そうですな、では」
と、その場でアドレスを交換して、先に善は離れた、入れ替わりに続けて名雪から母を紹介される
「六花(リッカ)でございます、お初にお目にかかります晴海様」とデジャブの如く最敬礼される
「あ、初めまして。面を上げてください」
名雪と背丈は同じくらいでグラマーのパーフェクトなスタイルでモデルぽい、顔もよく似てるがどちらかと言えば中性的なクールというより、魅惑的でありながら細眼で刺すような視線でちょっと偉い人感があるが
年齢は四十前後なんだろうが、正直「母」と言われても誰も信じないだろうくらいに若い、中身は名雪と同じであまり動じない細かい事を気にしないそう
彼女も一応退魔士ではある、以前にランクの所でアヤネに聞いた通りで国内五人居ない、のCランク、ただ武闘派という程でもなく、頭脳派で術士でもある
衣装も和装で華やかな色を着ている。睦の当主なので、対外面的な役割が多く対話も如才ないが、何より当主として稀有な人物でもある
「善殿の所も要請が来たか」
「と云うと六花さんの所にも?」
「うむ…直接的な話ではないがな」
「それは?」
「ウチは元々名古屋以外の広い範囲で警戒や情報収集しておる、直下に血統一族や兵が多く、元々忍び、隠密の技術から起こっている一族でな。手広く商売や貿易をやっており、その際に各地の警戒、捜査等も同時している、これの手を広めるのは可能だが、退魔で戦えるかというと微妙な線なのでな」
「うむ、母は強いが本家から離れて直接戦闘という事も難しいし、私を除くと実質EとかDとかの相手を最低限足止め可能な人員はそういない」
「まあ、このままでは事が大きく成った場合不味い、とはあるので色々用意はしたのだが、何れにしろ、ウチには特殊な術での対抗は難しいのでね」
「差支え無ければどのような用意を?」
「ウチや先代から継承した術の指導、手法を娘らに与えたり、それより遠い者には戦闘訓練、まあ、道場のような物を作っての継承、探知機の増産、海外から指導者を招いたりと、5~6年前からやってはいるのだが…」
「驚いたな…、僕らがやってるような事を既にやってたんですね…」
「あまり他所に出したくない情報でね…結果他所の知らぬ事にはなったが」
「いえ、独自性を確保するという前提はあるので、そこは別に…門外不出の事もあるでしょうし」
「理解が早くて助かる。ま、そういう事情あって手は尽くしているが、やはり《個人の霊力的資質に依存》という所で躓く」
「ですよね…」
「そこで相談なのじゃが」
「はい??」
「ウチの長女や親族等も預かってくれんか?」
「…は?…あ、あのもしかして…聞いているんですか?僕の力の事?」
「いいや、名雪とは暫く会話しておらんし、特に報告も受けておらん想像じゃ」
「マジですか…」
「うむ、神宮寺は過去そういう力を持った当主が出ておるし、晴海様の元で急激に善殿に迫る程強く成ったのも京極筆頭に女ばかり、また集まっているのも同じく女子、多分だが《分け与え》を発現されたのでは?手法もおそらく《異性限定》という事になる」
流石に晴海もアヤネもあんぐりな読みである、勿論秘密の流出もない、ECMのメンツも口外してないので、完全に予想である
「凄いな…そこまで分かるなんて」
「どうじゃろう?構わんか?」
まあ、そこまで読まれると秘密にしておく意味もないだろう
一応の事としてコレも受け入れ、力の移譲と条件等も簡易に話す
基本的に四家の輪にある家の子限定、充填から移譲可能の期間、口外しない事も伝える
「なるほど、娘らの事は問題ない、説明自体も要らんしな
晴海様のお世話の名目でもよいし、容姿的にも問題ないハズ」
「それはまあいいんですけど…一応当人の気持ちがあるので」
「わかった、双方気に入ったらという事にしておこう」
(なんだかサバけた人だなぁ…)とはあるが、移譲自体は希望する人にはやっていく方針なので一応了承し。六花も帰る事になるが
「そうだ晴海様」
「はい?」
「今は充填されておるのか?」
「感覚的には分かり難いですが、前回から二週くらい過ぎているので多分」
「では、このまま名古屋に同道せぬか?」
「はい?」
「ウチも抱いてみないか?という事だが?」
「あのですね…」
「今は独身じゃから問題ない、熟した女に慣れて置くのも良いぞ?」
「母上、流石に其れは無理難題ではないか?」
「ふむ…そうか残念だ。ウチも霊力がもう少し欲しいし神宮寺の直系男子の子を欲しいぞ」
「あー、その…次の機会に…」
「そうか、ではその気に成ったら連絡をくれ」
として名刺渡して今度こそ場を離れた
「…冗談なのか本気なのかよく分からないんだけど…」
「多分本気だろう、母上はああ見えて裏表はない人だ。晴海様がどうしても嫌だという訳でないなら考えてみてくれ」
「色々ぶっ飛んだ人ですね…」
「まあでも、移譲は別にして…物凄く優秀な人なのは分かった、頼りにはなりそう」
「そ、そうですね…」
「それにしても名雪さんも兄弟姉妹が多いんですか?」
「姉と、会った事はないが弟が居るらしいな」
「らしい?」
「家に残っているのが姉、菜摘で。弟は父方に引き取られたそうだ、故に弟は睦を名乗って無いし国内にすら居ない、ちなみに子は全員父親が違う」
「あー…そういう事か」
「私は会った事が無いですが名雪さんのお姉さんはどのような?」
「外見は似て無い、性格と才覚は母似だな人当たりが良く頭が良いが、武術がダメという事もなく、比較的万能だ。術も使うし新陰流等複数の剣術も修めた、ただ母上に内面が似てるだけに性格に問題がある気がする、かなりハッちゃけた人だ」
「大丈夫なのかなぁ…」
「ま、来るというのだから会えば分かるだろう」
三人は葬儀出席後直ぐに本部に蜻蛉帰り、同日当日の夜には桜子も戻り、先に伝えた通り、自身の一派から前線希望者六名を伴い、其々社宅の方で晴海の私室に来て平伏して紹介と挨拶し、既に夜であることから、とりあえずの空いている号室に入ってもらい手続き等は翌日に回し桜子とも話した
既に事前に伝えてあるので準備と手順は整っている。ある程度開発部のバイク隊の研修を受けた後、関東圏にある神宮寺から許可を取った住処を支店のような形でこれら人材を置きある程度任せれば対処の範囲も広くなる
将来的には、というか、レイナやマコトも既に移動本部で近い行動をしているので四方一定距離に置けば、それだけ広い範囲をカバー対処できる、という構想である
この桜子の件に限れば、獅童一族は全面的に賛同しており、桜子の縁者も後、来るだろうという事で、神奈川方面も任せられる可能性もある
「父も母も健在ですし、元の代表ですから統率を任せても問題無いハズです」
「それは頼もしいね」
「恐縮です」
「ただ、貰った資料で確認した所横浜にある施設というのが元が商業小ビルらしいんだけど、僕自身は現地で見て無いからどうなのかな…と」
「滞在派兵の形に使う施設なので問題ないかと、街中ですし襲撃防衛自体はそれほど考えなくて良いので、何れにしろ目視で確認します」
早速翌日午前中から桜子は配下数人を伴い現地に向かうがこれも問題無い事を確認した
三階建ての空きテナントビルのようなモノで重鉄筋コンクリート、割と広い駐車場が備えてあり、元々最低限の防火、セキュリティ、監視カメラもある為、少し手を加えればそのまま滞在施設としても十分耐えられるとの事を二時間後には電話で報告した
「少し本部から離れるけど、学校もあるし」
「いえ、私の希望でもありますのでお構いなく。父と母が来れば普段は任せて問題なく、昼間はECM本部周辺で過ごしても大丈夫だと思いますし、移動の足もありますので」
「ところで桜子さんの両親てやっぱり退魔士としても?」
「少なくとも父は私よりは強いです、一閃の業その物も習ったのは父からですから、ただ、七重の鐘が」
「あ、そっかあれって一本しかないのか、分かった製造方法もメカニズムも分かってるし高砂さんに相談しておく」
「代表継承の際、譲る形だったのでそうなります。出来ればですが、複数本製造可能なら、他の者でも使えるので…」
「了解」
早速その場で晴海は開発部に連絡、高砂も了承して此れの製造も始まるが、同じ電話口で事件から対応、進展していた事態も晴海に伝えられる
「一応、政府の方も事態を了承し予算編成が始まっています。予報警戒網を関東全域に広げる事も始まりました。これが一番安価で早いので」
「特定周波の電波を発信出来ればよい訳ですしね」
「そういう事になります、関東全域の所轄に敷設するとの事でおそらく一か月も掛からないでしょう、ただ対処人員は急拡大は出来ないので警察関係からの対応はこれまでとあまり変わりませんが」
「それは仕方ないかと、事前に分かるだけでも対処の幅は広くなると思いますし」
「それに関連した事ですが、ウチも開発部から昇格になります、やる事は変わらないのですが、関東他の県にも研究+防衛部隊の様なモノを、警察署、又は類する施設に新たに部署を置くそうです、元々各所にはテロ対策部署の様なモノもありますし、秘密部分もあるのでこの人員を使うとの事です」
「それは凄い…」
「何れの事ですが、西地域にも警戒網を敷く事も案としては出しています、了承されるかは不明ですが」
「了解です、素早い対応をして頂いて」
「いえ、私も公的対応は急いだ方がよいと考えていましたのでお気になさらずに。他にも色々進んでいますので何れ報告出来ると思います」
「ありがとうございます」
とそこで一旦相互の報告を終える
これは大々的に行わず、必ずしも当主などの出席を必要としない旨、距離的に東西の中間付近にある静岡で民間の葬儀場を抑えた、との連絡を各方面に出した
事件から一週間後には葬儀が有る為、晴海・アヤネ・名雪が各家の代表血族に近い為出るが会場は大きいが簡易なモノで、署名、香典、焼香という形だけで直ぐ終わった
急に事が起こったので認知が追い付かない部分もあったが簡易な短時間とは言え「父親の葬儀」「死因がE案件」というのを現実に突き付けられるとあまり家族という印象も感情も無くても、やはり陰鬱な感覚に襲われる
別館の方で簡単な立食場があり、アヤネに促され、そちらに移動し同じ日に参加した顔見知りと其々遭遇する
というのも、集まって一斉に式典と言う形でなく、知る人ぞ知るという人物の葬儀なので数日開けっ放しで期間内に自由に来て参加等して貰う形だからである。当日晴海らは来たが
それ以外の繋がりのある財界、政界等の人物も来るからで この形になった
別館で当日組で来ていたのは京極の善幸と睦の長、六花という女性で名雪の母、始めての事なので双方に挨拶してお悔やみを告げられた後、まずは善とアヤネ、晴海で雑談になる
「大変な事になりましたな」
「そうですね、僕もまだ認知が追っつかない面もあります、それだけに喪失感みたいのは薄いですけど…」
「残った者は現世でやる事が残る、宿題をしている間はそれもあまり無いかもしれませんな」
「ところで襲撃、という事ですけど善さんはどうお考えですか?」
「懸念する事は多い、ですが物理的に出来る事は限られておりますからな、捜査出来る訳でもなく、原因を調べる事も難しい、ワシとしては既に泰斗殿から幾つか提案を受けているので出来る事をやる、という形になります」
「それは?」
「京極の方にも紙術、特に召喚の使える退魔士を警戒に出すように言ってきておりますな」
「神宮寺の方面に?」
「また本家襲撃等と云う事になっては目も当てられませんからな、警戒防衛は増やしたい所でしょう。それに、紙術の召喚は物理的に兵を増やす効果と、事前察知に使えるからです
羅針盤での察知が早ければ事の起こり前に見つける可能性もある事、紙犬等は猟犬のように小範囲であれば妖怪察知にも使えますし、被弾しても人的犠牲が出ない」
「なるほど、急に前線の人材は増やせないので、という事ですか」
「ただまあ、晴海様はご存じでしょうが、アレは召喚主の霊力に強く依存しますからな稼働時間も数倍違う」
「アヤネが使う式神?は初期は小さい狛犬みたいな感じでしたね、そういえば」
「左様です」
「それと、事態が事態ですのでワシもおそらく復帰する事になるでしょう、西側の対処は人員的に問題が多い」
「頼もしい事だとは思いますが大丈夫なんですか??」
「まあ、年齢とか戦闘力とかに依存しない業ですからな。それにワシも暇を持て余して居る所ですし、こういってはなんですが多少楽しみな面もあります」
「それなんですが、ウチでは初歩紙術をアヤネから希望する人に指導してるのですが召喚術等は無理なんでしょうか?」
「秘術以外は、特別絶対門外不出という事ではないので、4家直系の方なら構わないと思います、霊力が一定数以上無いとそもそも使えない、役に立たない、という制限の為、京極の一族で独占に近い形に成っているだけなので。その辺りの事を弁えて頂ければ構わないです」
「そう云う事ですか」
「実際、歴史の初期や中期は神宮寺から道具や術は各家に伝授されたりしていたので、現代で有効な技術交流が出来て、尚且つその者が扱えるなら左程問題にならない。問題はどの業も《霊力という才能に依存する》部分ですから、晴海様が良いと思うなら伝えても構いません」
「それに、現代でも他の家から教えを乞う方も居られますからな、幾人か指導した事もありますので問題ないでしょう」
「了解です、有難う御座います」
「いえ、事が事ですからな。晴海様の元に居る信頼と才能に恵まれた若者が我らの手法を使うというのは全体の強化には成りますからな、ただアヤネも未熟故、指導となるとどうなのかというのはありますが」
「が、がんばります」
「ま、何れにしろ、先どうなるかは分からない、やれることはやっておいた方がよい」
「はい」
「では、ワシは先に戻ります、やる事が多いのでね」
「あ、善幸さん」
「なんでしょう?」
「モバイル端末は使いますか?」
「それなりには」
「では、こちらの組織の情報を共有して置きたいのですが」
「そうですな、では」
と、その場でアドレスを交換して、先に善は離れた、入れ替わりに続けて名雪から母を紹介される
「六花(リッカ)でございます、お初にお目にかかります晴海様」とデジャブの如く最敬礼される
「あ、初めまして。面を上げてください」
名雪と背丈は同じくらいでグラマーのパーフェクトなスタイルでモデルぽい、顔もよく似てるがどちらかと言えば中性的なクールというより、魅惑的でありながら細眼で刺すような視線でちょっと偉い人感があるが
年齢は四十前後なんだろうが、正直「母」と言われても誰も信じないだろうくらいに若い、中身は名雪と同じであまり動じない細かい事を気にしないそう
彼女も一応退魔士ではある、以前にランクの所でアヤネに聞いた通りで国内五人居ない、のCランク、ただ武闘派という程でもなく、頭脳派で術士でもある
衣装も和装で華やかな色を着ている。睦の当主なので、対外面的な役割が多く対話も如才ないが、何より当主として稀有な人物でもある
「善殿の所も要請が来たか」
「と云うと六花さんの所にも?」
「うむ…直接的な話ではないがな」
「それは?」
「ウチは元々名古屋以外の広い範囲で警戒や情報収集しておる、直下に血統一族や兵が多く、元々忍び、隠密の技術から起こっている一族でな。手広く商売や貿易をやっており、その際に各地の警戒、捜査等も同時している、これの手を広めるのは可能だが、退魔で戦えるかというと微妙な線なのでな」
「うむ、母は強いが本家から離れて直接戦闘という事も難しいし、私を除くと実質EとかDとかの相手を最低限足止め可能な人員はそういない」
「まあ、このままでは事が大きく成った場合不味い、とはあるので色々用意はしたのだが、何れにしろ、ウチには特殊な術での対抗は難しいのでね」
「差支え無ければどのような用意を?」
「ウチや先代から継承した術の指導、手法を娘らに与えたり、それより遠い者には戦闘訓練、まあ、道場のような物を作っての継承、探知機の増産、海外から指導者を招いたりと、5~6年前からやってはいるのだが…」
「驚いたな…、僕らがやってるような事を既にやってたんですね…」
「あまり他所に出したくない情報でね…結果他所の知らぬ事にはなったが」
「いえ、独自性を確保するという前提はあるので、そこは別に…門外不出の事もあるでしょうし」
「理解が早くて助かる。ま、そういう事情あって手は尽くしているが、やはり《個人の霊力的資質に依存》という所で躓く」
「ですよね…」
「そこで相談なのじゃが」
「はい??」
「ウチの長女や親族等も預かってくれんか?」
「…は?…あ、あのもしかして…聞いているんですか?僕の力の事?」
「いいや、名雪とは暫く会話しておらんし、特に報告も受けておらん想像じゃ」
「マジですか…」
「うむ、神宮寺は過去そういう力を持った当主が出ておるし、晴海様の元で急激に善殿に迫る程強く成ったのも京極筆頭に女ばかり、また集まっているのも同じく女子、多分だが《分け与え》を発現されたのでは?手法もおそらく《異性限定》という事になる」
流石に晴海もアヤネもあんぐりな読みである、勿論秘密の流出もない、ECMのメンツも口外してないので、完全に予想である
「凄いな…そこまで分かるなんて」
「どうじゃろう?構わんか?」
まあ、そこまで読まれると秘密にしておく意味もないだろう
一応の事としてコレも受け入れ、力の移譲と条件等も簡易に話す
基本的に四家の輪にある家の子限定、充填から移譲可能の期間、口外しない事も伝える
「なるほど、娘らの事は問題ない、説明自体も要らんしな
晴海様のお世話の名目でもよいし、容姿的にも問題ないハズ」
「それはまあいいんですけど…一応当人の気持ちがあるので」
「わかった、双方気に入ったらという事にしておこう」
(なんだかサバけた人だなぁ…)とはあるが、移譲自体は希望する人にはやっていく方針なので一応了承し。六花も帰る事になるが
「そうだ晴海様」
「はい?」
「今は充填されておるのか?」
「感覚的には分かり難いですが、前回から二週くらい過ぎているので多分」
「では、このまま名古屋に同道せぬか?」
「はい?」
「ウチも抱いてみないか?という事だが?」
「あのですね…」
「今は独身じゃから問題ない、熟した女に慣れて置くのも良いぞ?」
「母上、流石に其れは無理難題ではないか?」
「ふむ…そうか残念だ。ウチも霊力がもう少し欲しいし神宮寺の直系男子の子を欲しいぞ」
「あー、その…次の機会に…」
「そうか、ではその気に成ったら連絡をくれ」
として名刺渡して今度こそ場を離れた
「…冗談なのか本気なのかよく分からないんだけど…」
「多分本気だろう、母上はああ見えて裏表はない人だ。晴海様がどうしても嫌だという訳でないなら考えてみてくれ」
「色々ぶっ飛んだ人ですね…」
「まあでも、移譲は別にして…物凄く優秀な人なのは分かった、頼りにはなりそう」
「そ、そうですね…」
「それにしても名雪さんも兄弟姉妹が多いんですか?」
「姉と、会った事はないが弟が居るらしいな」
「らしい?」
「家に残っているのが姉、菜摘で。弟は父方に引き取られたそうだ、故に弟は睦を名乗って無いし国内にすら居ない、ちなみに子は全員父親が違う」
「あー…そういう事か」
「私は会った事が無いですが名雪さんのお姉さんはどのような?」
「外見は似て無い、性格と才覚は母似だな人当たりが良く頭が良いが、武術がダメという事もなく、比較的万能だ。術も使うし新陰流等複数の剣術も修めた、ただ母上に内面が似てるだけに性格に問題がある気がする、かなりハッちゃけた人だ」
「大丈夫なのかなぁ…」
「ま、来るというのだから会えば分かるだろう」
三人は葬儀出席後直ぐに本部に蜻蛉帰り、同日当日の夜には桜子も戻り、先に伝えた通り、自身の一派から前線希望者六名を伴い、其々社宅の方で晴海の私室に来て平伏して紹介と挨拶し、既に夜であることから、とりあえずの空いている号室に入ってもらい手続き等は翌日に回し桜子とも話した
既に事前に伝えてあるので準備と手順は整っている。ある程度開発部のバイク隊の研修を受けた後、関東圏にある神宮寺から許可を取った住処を支店のような形でこれら人材を置きある程度任せれば対処の範囲も広くなる
将来的には、というか、レイナやマコトも既に移動本部で近い行動をしているので四方一定距離に置けば、それだけ広い範囲をカバー対処できる、という構想である
この桜子の件に限れば、獅童一族は全面的に賛同しており、桜子の縁者も後、来るだろうという事で、神奈川方面も任せられる可能性もある
「父も母も健在ですし、元の代表ですから統率を任せても問題無いハズです」
「それは頼もしいね」
「恐縮です」
「ただ、貰った資料で確認した所横浜にある施設というのが元が商業小ビルらしいんだけど、僕自身は現地で見て無いからどうなのかな…と」
「滞在派兵の形に使う施設なので問題ないかと、街中ですし襲撃防衛自体はそれほど考えなくて良いので、何れにしろ目視で確認します」
早速翌日午前中から桜子は配下数人を伴い現地に向かうがこれも問題無い事を確認した
三階建ての空きテナントビルのようなモノで重鉄筋コンクリート、割と広い駐車場が備えてあり、元々最低限の防火、セキュリティ、監視カメラもある為、少し手を加えればそのまま滞在施設としても十分耐えられるとの事を二時間後には電話で報告した
「少し本部から離れるけど、学校もあるし」
「いえ、私の希望でもありますのでお構いなく。父と母が来れば普段は任せて問題なく、昼間はECM本部周辺で過ごしても大丈夫だと思いますし、移動の足もありますので」
「ところで桜子さんの両親てやっぱり退魔士としても?」
「少なくとも父は私よりは強いです、一閃の業その物も習ったのは父からですから、ただ、七重の鐘が」
「あ、そっかあれって一本しかないのか、分かった製造方法もメカニズムも分かってるし高砂さんに相談しておく」
「代表継承の際、譲る形だったのでそうなります。出来ればですが、複数本製造可能なら、他の者でも使えるので…」
「了解」
早速その場で晴海は開発部に連絡、高砂も了承して此れの製造も始まるが、同じ電話口で事件から対応、進展していた事態も晴海に伝えられる
「一応、政府の方も事態を了承し予算編成が始まっています。予報警戒網を関東全域に広げる事も始まりました。これが一番安価で早いので」
「特定周波の電波を発信出来ればよい訳ですしね」
「そういう事になります、関東全域の所轄に敷設するとの事でおそらく一か月も掛からないでしょう、ただ対処人員は急拡大は出来ないので警察関係からの対応はこれまでとあまり変わりませんが」
「それは仕方ないかと、事前に分かるだけでも対処の幅は広くなると思いますし」
「それに関連した事ですが、ウチも開発部から昇格になります、やる事は変わらないのですが、関東他の県にも研究+防衛部隊の様なモノを、警察署、又は類する施設に新たに部署を置くそうです、元々各所にはテロ対策部署の様なモノもありますし、秘密部分もあるのでこの人員を使うとの事です」
「それは凄い…」
「何れの事ですが、西地域にも警戒網を敷く事も案としては出しています、了承されるかは不明ですが」
「了解です、素早い対応をして頂いて」
「いえ、私も公的対応は急いだ方がよいと考えていましたのでお気になさらずに。他にも色々進んでいますので何れ報告出来ると思います」
「ありがとうございます」
とそこで一旦相互の報告を終える
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旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
忘却の艦隊
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新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
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