境界線の知識者

篠崎流

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呼び戻す魂

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エルフの森から更に南に5日
また別の地方に辿り着いた

その地方は小さな国に分かれた自然の多い土地、川、山、森、草原と兎角大きく自然が多く、平地と山岳のメリハリがあり農業、畜産も均等にバランスよく行える、一応世界では真東に中る場所だ

王政の国自体少なく殆どが自治区であるが、唯一あるその王政の一国が地方全体への決まりごとを最低限決めて共闘するという連合に近い体制の地域

従属の類では無く、其々自由にやらせて制限も無く他所に口出しする事も殆ど無い、この一帯が「共和国」という感じの政治体制である

「情報が余り無いのだが、どういう所なのか‥」
「好き勝手やるものが多いな、ただ争いは無い、それと王国と言っても軍備はあまりしていない、治安維持程度の戦力だろう」
「ティアは詳しいのか?」
「一応エルフ集落から近いので何度か来た事があるというだけだ、それと、ここから南西地は実質封鎖されている」
「封鎖?」
「間に巨大な湖があるからな、流れ入る川もかなり大きい、船が必要だろう。南東に向かって海まで繋がっているとも聞くが実際は分らん」
「地図を見る限り、南に抜ける道はあるようじゃが」
「うむ、確か街道で無い、道も狭いがある、ただ、その先、南東方面はまた荒地だ」
「そうか」
「とりあえず王国があるならそこへ行こうかの?」
「中央にある、入るのに制限は無いハズだ」

そうして商隊は中央にある国「ロベルタ」という国へ向かった、辿り着いて皆驚く

「デカイな‥」
「これで争いが無いというのは素晴らしいな」
「全国でも余り例がないだろうな、孤立地、に近いというのもあるし、ココから北の国まで、距離がありすぎるし、共和国一帯の周りも壁の様に山脈がある」
「間に何もないしのう」

そして馬車隊ごと城下に入れる、特に移動制限の類も無く、入り口からかなり広い、城下の入り口門から直ぐ横の広場に馬車を止めて其々行動と成った

商隊の一行はそのままそこで商売、露店を開き、その他、ティア、フォレスらは街の宿に入った

「ふーむ、かなり金もあるしなぁ‥新しくコッチの装備でも整えるか」
「どういう意味だ?」
「エンチャント武具でも作るさ」

一瞬ティアも「え?!」と云いそうに成ったが、彼の事情を考えれば出来て当然だな、と思い、普通に流した

「私も詳しい訳ではないしな、街で情報収集でもしてこよう」

ティアが云った為、エミリアもターニャも付いてった
夜の食事には全員戻って集まり、宿の一階でそれぞれ話した

「現在の王は女王だな、代替わりして一年くらいか、単純に一族からの継承だ」
「ほう‥」
「一応、由緒ある血筋の一族ではあるからな」
「それは?」
「天魔戦争の頃、神の側に付いて守護を受けた勇者の一族だ、とは云え、実際はその力がある訳ではないが」
「ま、そりゃそうだな、もう何年前の話だよ、てくらい前だし」
「街はティアと回った限りではかなり安定して豊か、みたいだね、支配体制というか政治がずっと方針転換が無いのも大きい」
「強引な王では無いみたいだからな、周りの状況を見ると」
「そうだなぁ、が、宜しく無い話もある」
「うん?」
「上での権力争いだな」
「しかし、それは無謀だな、一族、以外が国を治めても納得はすまい、象徴に等しいし」
「いや、その周りの者だな」
「と、いう事は側近なり権力者同士での担ぎ出し合戦か、それでくぐつとして使い、その下での実権を握る」
「まあ、噂だけどね、確認はできないけど」

「女王はどういう人物なんだ?」
「んー、20代前半らしいけど、よく分らないなぁ‥奥からあまり出ないらしい」
「ふむ、ま、それはいいか、会う事もないだろうし」
「だな」
「軍の方は数は多くない全軍でも三千程度だ、が強軍らしい、軍長と、女王御付の近衛隊の長が、かなりの人物だそうだ」
「なるほど」

「ところで、ターニャはどうだった?」
「ご本読んでる方がたのしい」
「ほう‥、なら明日は図書館でも行くか?あれば、だが」
「うん」

そして翌日には、午前中からフォレス自身の買い物のついでにターニャを肩車して街を歩いた、人伝いに資料館や図書館があれば、という事だが、どちらもあるらしい

ただ、資料館は国の情報などを保存して置く場に近く一般人は入れない、その為必然的に図書館に向かう、住居者なら貸し出しもしているようだが、残念ながらフォレスらはよそ者である、とりあえず施設内にターニャを放って自由に読ませた

「本、か‥だが、実際買い集めるのは無理だな‥旅の荷物が増えるしかさばる‥」

旅人の問題はそこにもある、本はそう沢山持って歩けないし、案外重い、それは他の荷物もそうだろう、不必要な物は無いほうがいいという事になる

「それにしてもオレの手持ち本だけでも結構難しいのにターニャは読みきってしまったな‥案外学も伸びるのか?‥」

ふとそう思った、エミリアに至っては戦術や歴史の事例本だけなのにまだ半分も読んでない、そこでフォレスは自身が本を読む必要があまりなく暇だったので対座に座るターニャを、ついでに調べる事にした

最初に魔眼の一件で調べたのと同じ事、道具とサーチでの探索である、具体的にどんな力があるのか、資質はどうなのか?だ、そして一時間掛けてそれを詳しく調査した

「驚いたな‥全体的な資質が平均して高い‥。魔術の適正もバランスいい、所謂「何をやらせても」というやつだ‥」
「そして元から持ってる能力もかなり多い‥特に治癒の力が強いな‥女神系の血を引いてるのか‥」
「が、人魔、という程の半々ではない、クォーターだな」

そこでフォレスも別の感情が芽生えた、苛立ちと呆れだ

「これほどの能力がある者を「人間以外の血」という理由で、処分しようとするとはな‥人間のなんたる愚かさか‥」「いや、思考ある者全てか‥神も魔も賢明である者が多いという訳ではない、か」

天を仰ぎ見て、といった感じのポーズで怪訝な顔して思考していた、いつの間にかそうなっていたらしい

そこで対座していたターニャが不思議そうな顔を見せて「どしたの?」と聞かれて

「なんでもない、考え事だ」そう返して整えた

テーブルに置きっぱなしだった魔法石を発見してそちらに興味が移った

「これなあに?」
「魔石だよ、レンズに近い、それを通して色んな物をみてごらん」

云われてターニャも石を取って目の前に持って、通して回りを見てみる

「おー!綺麗」
「存在、停滞するマナを調べる、サーチ術の拡大鏡と言った感じのものだ」
「へー」と返したがターニャにはまだ判らないだろうと思った

そして不審に思われて見られていたのはターニャだけに、では無かったようだ、二人を遠くから見ていた一団が寄ってきて声を掛けた

「失礼ですが‥」

相手は二人 若い男性の同じ服で帯刀、この国の軍人だろう、フォレスは平静を装って答えた

「なにか?」
「そのお子さんは、その、どういう関係で?」

どうやら不審人物に見られたらしい、まあ、見た目から人さらいに見られてもしょうがないのもあるが

「そうだなぁ、娘みたいなもんだ」
「え?!、そ、そうなのかい?お嬢ちゃん」

ターニャも魔石で遊びながらキャキャしながら返した

「うん!パパ、パパ」

当人が嬉しそうにそう返したので納得したようだ

「し、失礼しました!、あまりに不釣合い、いえ、失礼を」
「いや、似てないのも当然だ、血縁という訳じゃない」
「それは?」
「この子は孤児だ、俺が引き取って養っている」
「そうでしたか‥」

そうして軍人さんも理解して離れた「お邪魔して申し訳ない」と

夕方宿に戻って食事した後、部屋でターニャがフォレスの身に付けている様々の石にも興味を持った

「パパ、これなあに?」
「これは肩代りの石だな」
「これも綺麗!」

とやり取りしている横でエミリアがジト目を向けてきた

「おい」
「なんだ?」
「外に出ている間何を余計な事を教え込んだ」
「はあ?」
「何故お前をパパと呼んでいるんだ」
「ああ、そっちか」

そこで昼間、図書館での出来事を話した

「ふむ、つまり、自分でそう判断して呼んだのか」
「オレとしては有り難いがな、身内にしとた方が説明が楽だ、どうもオレは犯罪者に見えるらしいし」
「そりゃそうだろ‥もう少し服装くらいどうにかしたらどうだ?」
「同じ様なモノしかないんだが?」
「買って来いよ‥」

そして翌日朝からまた図書館に向かった

其の前にローラの店に行って服を買う、その方が向こうも喜ぶだろうという一応の配慮だ ついでにターニャのも

「子供服は無いぞよ‥」
「だよなぁ」
「あ、いやあるな」とローラは馬車に入って荷物を出した
「私の服なら入るかもしれん」

と自身の何時も着ているヒラヒラドレスを「ドーン」と出したがターニャが試着して気に入らなかったのと、拒否された

「ヘン!うごきにくい!」だった

地味に云われたローラはショックを受けた、ただ、サイズはあんまり変わらずだったのだが、やむなく街へ出て二人とも自分で選んで買った

一応店員は「お似合いですよ!」とお世辞を言ったがホントかどうだか判らない

そもそもフォレスは何時から着てるのかわからんようなボロ服だし、ターニャも最初に出会った時から着てるものだ、第三者からみて怪しさ爆発なのは当然だろう

その後、湯浴み、要するに現代で言う天然銭湯も街の裏にあるそうなのでこれも料金払って入り洗う

とりあえずこれで「一応まとも」な冒険者風、と「綺麗な」お嬢ちゃんぽくなったので、それでよしとしたが、ターニャは元々の素材あって身だしなみを綺麗にすると大分おっとり系の美人さんだ、眩しく輝くロングの金髪白肌だし、目鼻立ちも大き目で優しめに整っているし

そしてまた図書館に朝から晩まで居る事になるが、ターニャは相変わらず本、フォレスは同じテーブルで魔法具の製作を、ついでに行った、あまり大きな作業にならない程度の物、指輪の様な小物だ

そして、昨日と同じく「また」声を掛けられる

「失礼ですが」

と、今日は同じく軍服の女性、だが軍服のデザイン自体が昨日の二人とかなり違う、落ち着いたショートボブの黒髪の人だったが、事情は少々違う

「魔術士の方ですか?」
「そうだが‥」
「座っても?」
「どうぞ」

と彼女は右隣の椅子に座って続けた

「私はシンシアという者です、王国の近衛隊、クルセイダーの一人です」
「近衛隊?そんな人が何の用だ」
「最近この辺りで起きている奇妙な事件はご存知か?」
「いや、オレらはここに来てまだ2,3日だ、世情に薄い」
「実は近隣の森等に霊体の様な者が出まして‥」
「霊だと?」
「はい」
「術士なら他にもいるだろう、俺はただの冒険者だ」
「ええ、実は地元の術士や神官の類にもお願いしたのですが‥」
「やられたか?」
「ええ‥」
「なるほどな」

「貴方は高位の術者とお見受けしました、是非知恵をお貸し願えないかと」
「何故そう思う?」
「それ、エンチャント武具ですよね?、身に付けている物も、殆ど‥」
「ふ、目敏いな、たしかにエンチャンターでもある」
「やはり自作品でしたか」
「だが、知恵、というからには実行面はどうでもいいのだな?」
「ええ、そこは我等がやります」
「君は術の心得が?」
「はい、わたくしはクルセイダーです」
「ほう、中央以外にもそんな者が居るとは‥」
「この「ロベルタ」の近衛はそういう物を目指した集団です、無論実際術を使える者は、それ程いませんが」
「ふむ‥まあ、いいだろう、知恵を出せというだけなら大した手間ではない」
「有難う御座います、それでは案内します」

そうして昼過ぎ、フォレスは再びターニャを肩車してシンシアについていった、招かれたのは王城の下階、近衛隊の詰める作戦室の様な所だ

「おっきいねぇ」

とターニャは頭の上で言った、どうぞと部屋の応接セットの席を勧められて座った

そこで彼女は別部屋へ、数分して若い男と共に戻って対座に座った

「始めまして、術士様、自分は隊長を務めています、クロスと申します」
「フォレストだ」
「エターニャ」と何故かターニャも名乗った

「回りくどい腹の探り合いや駆け引きは嫌いなんで、先に必要な事だけ聞く」
「どうぞ」
「霊、という事だが、神聖騎士の類ならそれに対応出来るだろう、そして武器も洗礼の物があるハズだ効かないのか?」

本当に効率的、且つ先読みして聞いたのでクロスも驚いた、流石の知識者だな、と思った

「ええ、まず、神聖術、祓いの類は掛けました、効果なしです、当然武器もダメでした、と、云うより相手に当てる事すら適いません、相手も剣士風ですが、手持ちの武器で平然と受けます」
「物理攻撃、要するに剣術の腕自体、尋常じゃなく強いという事だな」
「左様です」
「他にも魔術士を派遣したらしいが、それもダメか?」
「はい‥光弾も効きません」
「見姿は?」

「人間に近いですね‥が、ぼんやりと発光もあります、屈強な剣闘士、という感じでしょうか」
「ふむ‥‥、時間と場所は?」
「ありません、出現時間に決まりは無い、ただ、場所は北東森近くです、目に付いた動く者を襲ってきます、逃げれば追って来ない事もあります」
「被害は?」
「初期は意味がわからずで対処法がありませんでしたので街人が5人、討伐隊を出しましたが全員切り殺されました、総計で50人です‥」
「要するに、向こうの視界、あるいは範囲に入らなければ実害は無いわけか‥」
「と、思います」

そこまで聞いてフォレスも腕を組んで何時もの姿勢で眼を閉じて考え込んだ、相手もそれが判って黙って彼を待った

「妙な、霊だな、霊かどうかも怪しい‥そもそも神聖系も効かないというのも謎だなぁ」
「そうですねぇ、正直我々ではどうしょうもないです、何か思い当たるフシはありませんか?」
「うーん‥これは実際見て調査しないと無理じゃないかな」
「しかし、発見すると襲ってきますし、我々でもアレを防ぎとめられませんが」
「そこまで強いのか‥」
「一応物理、剣での戦いでは打ち合えるので‥向こうも精神体では無い様なんですが‥」
「うーーん‥遠距離から調査、つってもあまり離れすぎると判らんしなぁ」
「調べる事は出来るので?」

「ああ、サーチ術や魔力経路は探れる、が遠距離では無理だ」
「では調べる間、我々が護衛という形でしょうか‥正直守れるか謎ですが‥」
「いや、それだと被害が拡大するだけだろう、こっちにはアテがある、一応、ソチラにも案内ともしもの時の為の加勢だけ頼みたい」
「問題ありません」
「それと準備に1日くれ」
「わかりました、ではお迎えに挙がります、時間は」
「昼間だな、の方がやりやすい、宿は入り口門最初の宿「アザミ亭」だ」

「それと、報酬ですが‥」
「うーむ‥正直金に困る事もないしなぁ‥。まあ、適当でいいさ後で考える」

そうして依頼と方針の決定が成される、帰りもシンシアに送られ宿に戻った

「では、明後日の昼に迎えにきます」
「ああ」と分かれた

そして「アテ」の対象を呼んで事情を話した

「で、私という訳か‥」

無論エミリアである

「ああ、オレはある程度の距離まで近づいて、向こうの探査をする、其の間の守りだな」
「というか剣でどうにかなるのか??」
「近衛隊の連中が言うには剣で打ち合えるらしい、ただ、かなり相手は強い、討伐隊が全滅したそうだし」
「‥そんなしょうもない事件で死ぬのは嫌だぞ私は」
「いや、正統な決闘じゃない、召喚も使え、俺も邪魔する用の触媒も集める、身代わり布もまだ使ってないだろ?」
「ふむ‥つまり負けなければなんでもいいという訳か、それならなんとか‥」
「正直武力で一番アテになるのはお前だ、頼む」
「いいだろう、やってみる」

「それと武装、特に鎧なんかもどうにかしといてくれ、被弾は避けたい」

と、フォレスは金貨10枚置いた

「判った、私の好きに、でいいんだな」
「ああ」

そして翌日には二人は其々材料集めと装備購入、素振り等して体調も整える

更に翌日、大方の準備が揃ったところで一階の酒場で食事して待った、シンシアが来たのは、丁度昼、彼女も軽く食べてから案内となった

城下門の前でクロスら5人の近衛兵と合流して出発と成ったが、何故かターニャもティアも付いて来た

「お前らのやる事は無いぞ?」
「見学くらい、いいだろう、私も剣は出来るし」
「ターニャは‥」と思ったが、まあいいかとそのまま連れて行った

午後3時には目的の森前の広い草原に出た、遠くを指してクロスが説明した

「アレです、ずっとああして立って動きません、出たり出なかったりですが」

草原の真っ只中に片手剣を持ち仁王立ちの相手、遠目だと草原の真ん中に石像が立ってるようにしか見えん

「ま、兎に角、行くか‥」

とフォレスも覚悟して全員同時にゆっくり歩いて近づく、100メートルくらいの距離まで接近した所で、突如、向こうがこちらを向いて走ってくる

「き、きた‥」
「こわい‥」

見た目は人間の形の彫刻という感じだ、ぼんやり光を放っている、剣闘士という表現はピッタリだ、その肉体は細マッチョでいかにもな姿だ

「よし!」とエミリアも前に歩いて一人で迎撃体勢、同時にフォレスも座って道具を用意した

最初の一撃は向こうの走りながらの振り下ろし、エミリアも迎撃して打ちとめた

「ぐう!」

と声を挙げて打ち返す、それを相手も受け返す、そのまま打ち合いと成った、驚いた事にエミリアと剣闘士は互角だった、3分打ち合ってお互い無被弾で凌ぎあう

「おおお‥」と神聖騎士団の連中から声が挙がる

相手は50人の討伐隊を一人で「剣」で倒した相手だ、それと互角というエミリアの武力に何より驚きだ

「凄いな‥自分より、確実に上ですね‥」
「それはわたくしもですね‥」

クロスもシンシアもそう賞賛した、そのまま8分、互角の戦いでもつれた

が、段々エミリアも劣勢になってくる、問題はエミリアが肉体があるという事、つまり疲労してくるという事だ、そして向こうは疲れなど知らない

「おい!まだか!?何時までも耐えられんぞ!?」
「ドアホ!召喚も使え!、決闘じゃないんだ負けなきゃいい」
「チィ‥だが、これはその隙も無いぞ!」

そこでティアがレイピアを抜いて飛び出した
前に走りながら加勢する

「助太刀する!召喚とやらをやれ!」と

そしてそれも驚きだ、ティアは華麗に舞ってレイピアで雷撃の様な連続攻撃を打ち込む、相手が受けきれず、下がる程だ

「よし!」と隙の出来た瞬間、ポケットに忍ばせた触媒を相手に投げつけて撒き、後ろに跳び下がりながらエンチャントブレスを構えて着地する前に叫んだ

「Προσκάλεσεμε!」と

触媒を介してスケルトンウォーリアーが10体呼び出され、後ろに着地したエミリアの足元の地中から透明発光のナイトオブボーンズが3体召喚され、其々剣闘士に前進して剣を打ち込みに行く

エミリアとフォレス以外の全員同時に言った
「な!?闇召喚!?」と

ティアもエミリアも距離を取って離れた、暫くはこいつらで抑えられるだろうと、が、時間稼ぎは出来たが、止めるに至らなかった

まず、剣闘士は物質化しているスケルトンウォーリアーを手当たり次第に切り倒して破壊する、ナイトオブボーンズも剣で斬って一人一人倒す

「おいー!?、ナイトオブボーンズは物理は効かないんじゃないのか!?」
「あー‥、多分アレ、あいつの武器聖加護だろ‥」
「んな!?」

が、ここで云いながらフォレスは道具を片付け背負い袋を背負った

「もういい、判った、逃げるぞ!」

全員それを聞いて一斉に回れ右して脱兎の如く逃げ出した

「はぁ‥信じられん、なんちゅう相手だ‥」
「無茶苦茶つえーな‥」
(そりゃお前らもだろ‥)と一同は思わなくも無い

どうにか離れた所で最初の光景と同じになった、剣闘士はまた直立で動かず、時々思い出しては不規則に歩き出すアッチコッチに

「100メートル内に入らなきゃ探知追撃してこないのか」
「救いはそこだな」
「と、とりあえず一旦戻りましょう、判明したんですよね?」
「ああ、歩きながら判った事を話す、街へ戻ろう」
「はい」

と全員呼吸を整えて歩きながら聞いた

「多分ありゃ、召喚だ」
「へ?あれが?!」
「ああ、んで主人が居ない、だから命令が無いが自己サーチで誰でも動く者なら戦うんだ」
「なるほど‥」
「距離が離れると追って来ないのもその為だ、契約した主が居れば意思を尊重して、どこまでも追撃してくるが、それが居ない、つまり命令待ち状態、て奴だ」
「しかしずっと居るのだろ?、時間制限ではないのか?」

「多分アイツの持ってる武器そのものが触媒だろ‥あの剣から魔力は供給されてる、だからぶっ壊れるか新しい主が保有するまでずっとあのままだ、魔力が尽きる事も無さそうだ‥」
「そんな事ありえるのか?」
「向こうの属性から見て、聖剣か神剣、多分神界の武具だ」
「な!?」
「だから多分ぶっ壊れるまで動き続けるだろ‥ぶっ壊す方法も無いだろうが」

「しかしどこからあんな武具が‥」
「この辺に遺跡の類はあるか?」
「え?ええ、先ほどの森の中に古代遺跡の洞窟があると聞いています、時々冒険者が」
「まあ、それだろうなぁ、誰かが掘り当てて、制御法知らずに使った、んで今に至る、と、多分掘り出した奴ももう殺されてるだろ」
「なんという事だ‥」
「まあ、とりあえず宿に戻ろう、色々資料を当らんと正確には判らん、とりあえずあそこは封鎖しろ、接近しなきゃ誰も襲われん」
「わ、わかりました」

そして一行は兵だけ城に戻し、クロスとシンシアはそのまま加わって宿の部屋で会議となった

そして何時もの様にフォレスは椅子にもたれて腕組んで寝た様な感じだった、フォレスの代わりにティアが云って一同を待たせた

「調べ物だそうだ、待っていてくれ」と

フォレスが起きて口を開いたのは意外に早く10分後だった

「成る程、あれは、ソウルオブリメンバーという召喚だ」
「魂を呼び戻す?、ですか‥」
「そうだ、ヴァルキリーの逸話は知ってるな?」
「あ‥もしや」
「そう、アレは元は地上の人間、そして選抜された強者の魂だ」
「強い訳だ‥」
「多分名前は知られて無いだろうが、「勇者」レベルの剣士だろうな、んでソウルオブリメンバーは、その魂を剣に封じて、いつでもその力を使える様にした神界の特殊武器だな」
「そんな物があるとは」

「おそらく天魔戦争の遺品だ、主に自分に武力が無い、女神系とか天使系が与えられるモンだな、攻守のバランスを取る為のモノだ」
「ふむ」
「御祓いやら、神聖、光術が効かなくて当然だ、ありゃ元々「聖」の側だ」
「それで、対処法は?」
「簡単だ、契約しなおせばいい、そこでアレなんだが、コッチで貰っていいか?」
「はぁ‥それはいいんですが‥何故です?」
「一つにアレの契約は古代言語が要るという事、もう一つは主は長生きのがいい、主が死んでまた同じ事になると大変だ」
「どこかに封印というのは?」
「あれを封印できる魔力のある奴は多分人間には居ない、術士を10~人から集めんと厳しいな」
「成る程‥」

「んで、オレ的にはアレをターニャかティアに渡したい」
「この子に?」
「ああ、あの武器はでかくないし、持たせておけば自動護衛に成る、アホみたいに強いし」
「よく意味が分りませんが」
「コチラにも事情があるので詳しくは云えないが、私はエルフだ」

自分から云ってティアは隠した耳を見せた

「な?!なんと‥」
「いや、それなら確かにかなり長命ですからねぇ」
「しかし、という事はこの子は?」
「ああ、似たような種族、と言っておこう、オフレコだぞ?」
「も、勿論です」
「ですが、それなら納得ですね、我々が持っているよりいいでしょう」
「そうですね、エルフなら悪用もしないでしょうし」
「では決定という事で、まあ、報酬もアレを貰うって事でいいだろ」
「判りました」

「んで、この再契約は簡単だ、コッチで勝手にやれるが、一応見学するか?」
「そうですね、興味本位ですが、同行させてもらいます」
「では、明日、同じ時間に」

そこで一同解散と成る
部屋に残った仲間で更に話し合いだが、ここでフォレスの意思を伝えた

「ああは云ったが実際はターニャにやらせる」
「うむ、事情を教えてくれるか?」
「この子は「人魔」だ、神格のな」
「だろうと思った‥」
「図書館行ってる間暇だったんで調べたが、女神系の血筋だな、それと補助、回復側だ、一概には言えないが かなり長生きするだろう」
「なるほどな、となればあの召喚を持ってしかるべき、か」
「すまんな話を合わせて貰って」
「何、構わんよ、それにお前の判断も妥当だ、必ずしもそうではないが、神格系なら高い知能と良識があるだろうし、長命だろう、まず持って問題は起こさんだろう」
「でだ、ターニャはお勉強だ、つっても契約の言葉は一言だが」

云われたターニャは首を捻ったが兎に角「うん」と二回頷いた

そして翌日にはまた、一同で草原に向かった。今度はフォレスがターニャの手を引いて歩いていく、英霊の剣闘士はそれを見つけ走って剣を構える、そこでフォレスは言葉を投げかける

「ぴたり」と相手はその場に止まって直立不動にもどった、「さ、ターニャ」と促されて彼女は一人前に出、右手をかざして云った

「Με την ψυχ τημνμη που θα γνει κρια」
「我が名はエターニャ」と

それで剣闘士の姿はス~とゆっくり消えていき、物質として残った剣と鞘が草むらに落ちた、フォレスはそれを納めて拾い、そのままターニャに渡した

「これでもう、この剣はターニャにしか従わん、手放すなよ、永遠の友人だ」
「う、うん」

と笑顔で返した受け取った

「呼び出す時はお前の言葉に反応する、剣を抜いて離し「英霊の魂よ」と云えばいい」
「わかった」
「でもむやみに使うなよ、自分と大事なモノを守る時だけだ」
「うん」

こうして「聖剣」はターニャの物となった

剣自体は中型と短剣の中間で刃渡りは50センチ程度、背が低い彼女でも持って歩くのはそれ程苦労しない、そして「重さ」が極端に少なく「壊す方法も無い」と言ったとおり、地上に存在しない金属である

そして何れ、彼女が成長すれば丁度良くなるだろう
帰り際にクロスとシンシアに何度も礼を言われた

「こっちは特に損はないし、ターニャの守り刀としてはかなりいいものだ十分な報酬さ」だった

「ただ、一つソッチにアドバイスだ」
「なんでしょう?」
「遺跡だ、これで終わりかどうか判らん、封鎖か埋めなおしたほうがいい」
「ああ、確かにそうですね」
「それと使い方知らずに使った奴がいるなら多分死んでるm調査もしたほうがいい」
「判りました、早速」

そして城下に戻ってクロスらは城に戻って捜索隊を組織した

ただ、後日には再びフォレスが呼ばれる事には成った、探査の方は大方終り、洞窟にも冒険者と思われる人間の死体も多数出、回収埋葬されたが

「その、訳のわからない武具の類が幾つか出まして‥」

シンシアに告げられて、結局調査隊に加わって調べる事になった。幸いにして残りの武具は単なるエンチャント武器で大事に成るような物は無かったのと、純度の高いエンチャント向きの鉱石が大量に出た為、それを掘り返して、王国に、一部をそのままフォレスが貰って報酬に充てた

エンチャンター自体が世界中探してもそんなに居ないので王国が貰ってもしかたないのだが、一応向こうにも得になる面を譲らないと立場が無いという事もあってそうなった

「あの‥所でフォレスさんは闇召喚を使う様ですが‥」
「エミリアにも最初言われたよ、心配いらん、オレは普通の人間だ」
「ナルホド、では?」
「闇召喚もただの元素召喚の一系統だ、師か教えが有り、魔法素養があれば、誰でも使える、魔族だから使えるというのは誤解だ」
「そうなんですか‥」
「試しに覚えてみるか?」
「クルセイダーが闇召喚を使うのは問題かと‥」
「だろうな」

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