輪廻のモモ姫

園田健人(MIFUMI24)

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第一章 神生みの時代

西の聖地へ

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「ヨミとなにを話していたのだ?」

モモは中庭から王宮の外へ出ると、そこには腕を組んで不満そうな表情を浮かべているスサノオが待っていた。
「たいしたことじゃないよ」
「……嘘を言え。おまえにしては珍しく、ヨミを前にして動揺していたではないか。いや、恐怖していた感じもあったぞ」
「あんた……気が付かなかったの?」
「なにがだ?」
「もういいよ、早くこの場から逃げないとね」
そう言うと、モモの額から一筋の汗が流れ落ちた。

(あれは古代生物だ……久しぶりに凄まじい殺気を感じたな。あの様子からすると宇佐主様よりも大きそうだ。しかも何処に隠れているのかまったく分からなかったし)

モモとスサノオが歩き出そうとしたその時、馬に乗ったチキが目の前に現れた。
「あれ……チキちゃん?」
「ああ良かった。二人とも無事だったんですね」
「こんなところでなにをしてるのさ?」
「なにって……二人が心配で助けに来たんですよ」
「うははは!おまえが助けるだと?冗談にもほどがあるわい」
スサノオは笑い声を上げながらチキをからかった。チキは憮然とした様子で頬を膨らませる。
「まあまあ、二人とも喧嘩しないの。チキちゃんも心配して来てくれたんだから、少しは感謝しなさいよ」
「ふん、別に助けてもらってないからな。感謝する筋合いもないわ」
「あんたね~、そんなことじゃ人の上に立つ男になれないよ」
モモは呆れた表情を浮かべた。
「……これからお二人はどうするんです?もう王族に仕えるのは無理そうな気もしますけど」
「私は故郷に帰るつもりだよ。もう目的は果たした感じだしね」
「待て待て待て、勝手なことをするでない。おまえは俺の部下なんだから、引き続き仕えてもらうぞ」
スサノオが慌てた様子でモモを説得する。
「ええ……だってあんた、王族から追放されそうじゃない。このまま私と一緒に逃げたらお尋ね者になるよ」
「そんなことは関係ない。さっきも言ったが、俺はナギに代わってこの国を治めるつもりだからな。いずれ、この王宮は俺のものになるからまったく問題ないぞ」
モモとチキは顔を向かい合わせた後、二人同時に「無理」とスサノオに言った。
「う、うるさいぞ!無理かどうかはやってみないと分からんではないか。手始めに西にある聖地へ向かうぞ」
「聖地?」
「そうだ。そこにいる仙人が『王』よりも位が高い称号を与えてくれる聞いた。その称号を授かれば人も自然と集まり、俺の軍はさらに強くなるからな」
「そんな称号を授かったくらいで偉くなれんの?」
「もともと性格も最悪ですしね」
チキも悪態を吐く。
「おまえら、さらっと俺の悪口を言うでない。とにかく付き合ってもらうからな、二人とも逃げるんじゃないぞ!」
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